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2話 いきなり告げられる魔王転生




「ここは、どこだ……? なぜ僕らは、こんな所にいる?」


 教室よりやや広い程度の空間には、扉や窓が一つもなく、現実世界とは思えない雰囲気が漂っていた。


 見たところ……イジメっ子3人組と、それに追随した連中含め、クラスメイト全員がこの空間におり、意味不明な展開に戸惑っているようだ。



「サーシャ様は? 良かった。気を失っているだけで、火魔法を受けた痕跡はない!」


 念のため"回復"と"癒し"の魔法を飛ばしたから、そのうち目覚めるはずだ。






『ふむ、此度の転生者は30人とも子供か。ちと心許ないが、減っても足せばいいだけ。続行するとしよう』


 サーシャ様の無事を確認したことで、少しだけ頭がまわるようになり、現在の状況について考えていると……


 どこからともなく、落ち着きはらった男の声が聞こえてきた。



『新しき眷属共よ。一度しか言わぬゆえ、生き残りたければ心して聞け。魔王の生き残りが減ったため、第78期として其方たちを加える事が決まった』


 はぁ!?


 いきなりこんな空間に呼び出して、一方的に「魔王転生させる」って……どういう事だよ!?



『この説明が終わり次第、其方たちにはダンジョンを作ってもらう。最奥にあるコアを壊されたら終わりゆえ、死にたくなければ知恵を絞って考えるのだな』


 声の主から衝撃的な話を告げられ、クラスメイトが騒ぎ出すが……この空間にそれらしき人物はいないので、相手の居場所を特定することすらできない。



『魔王は転生時に、一人一つ固有ギフトを選ぶことができる。選択肢は元の性格やスキルによって変わるため、相性の良いものを選ぶとよい』


 思い通りにならない状況に、泣いたり壁を叩く女子が現れても、声の主は淡々と説明を続ける。


 その声は無機質で、喜怒哀楽の感情がないみたいだ。



『以上が大まかな概要である。後のことは、其方たちが魔王として自分で学ぶとよい』


 そして彼が話し終えると、再びまばゆい光が僕たちを包み……気がつくと、先程より小さな空間に一人で立っていた。






「さっきと似たような場所……いや違うな。浮世離れした感覚はまだ残っているけど、さっきよりも圧迫感が薄い。それに……うわぁっ!?」


 突如として目の前に現れた、宙に浮かぶ半透明の画面。


「MP10687、保有スキル<回復魔法B>。これ……僕のステータスだよね? という事は、この画面は”鑑定ギフト持ち”が見ているようなもの?」



メグミ(16)

種族:魔人族(魔王?)

職業:ダンジョンマスター(仮)

HP:298/305

MP:10687/10687

スキル:回復魔法B・物理耐性C・精神耐性D

ギフト:_

その他:称号 (サンドバッグ)



ダンジョン名:_

順位:30/30(311/311)

保有ポイント:187462



「ふむ……。保有ポイントを、ダンジョンの設備や自分のギフトと交換するのか。それで今のポイントは……僕の貯金額と同じ。嫌がらせにも程があるだろ!」


 順位番号も、あの場にいた人数と一致する。



 たぶんポイント順……要するに元の貯金額順に並べられており、一番貧乏だった僕が最下位になっていると。


「フ〜〜、フ〜〜。落ち着け! とにかく落ち着け! 不愉快に思うだけじゃ、何の解決にもなっていない。とりあえず、今の状況を整理しよう」



 まず……僕らは午後の授業が始まる前、過激なイジメが行われていたところを、突然真っ白な空間へ飛ばされた。


 そして謎の人物から、魔王の仕事とダンジョンについて語られたあと、ここに飛ばされた今にいたる。



「普通の人がある日突然、人類の敵である魔王となりダンジョンが生まれる……っていうのは、ダンジョン学の授業で習った。それが今、僕の身に……」


 僕も一般的な魔王のように、”悪しき者”として、力尽くで殺されてしまうのだろうか?



 だけど致し方ない理由で、学生生活から逃げられるなら……。


 思うことは山ほどあるけど、動揺していても事態は変わらないし、画面右上にある数字がタイマーを表わしているなら、そろそろ動かなきゃマズイ。



「気絶していて、説明を聞けないまま魔王転生してしまった、サーシャ様は気の毒だけど……。物理的に隔てられたんじゃ、助けようがないもんなぁ」


 彼女もココと同じような空間にいるなら、目覚める前にクズ共からイジメられる心配はないし、上手く乗り切ってくれると信じよう!



「まずは、保有ポイント最下位の自分を何とかするべきだ」


 “貯金額がポイントに引き継がれる”という、胸糞仕様を考えると……



 普通にダンジョンを創ったら、とんでもなくショボいものが出来上がり、冒険者や敵対した魔王に蹂躙されるのは確実。


 最善策をとれるかは分からないけど、立地条件を選ぶところから、何かしらの工夫が必要となる。



「真っ正面から戦って勝ち目がないなら……マップの中から、滅多に人が来ないような安全地帯を探せばいい」


 そこで衣・食・住が賄えそうなら、ダンジョンマスターとしての地盤を確立させ、少しずつ勢力を拡大していこう。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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