17話 彼女と連絡を取るためには
魔王転生の初期設定を行ったとき、ダンジョンの名称は自由に決められたはず。
僕の場合、父さんが言っていた「皆に恵みを」という名前の由来から、”恵のダンジョン”にしたし……
ダンジョンの立地・コンセプトを盛り込んだものから……”皇帝”や”最強”のように、欲望むき出しでスベっているものまで色々ある。
なのに、なぜサーシャ様は”未設定”?
「もしかして、初期設定の間ずっと気絶していたのか? 何もイジらないまま制限時間をすぎた場合、”未設定”で転生させられる?」
あるいは……最初の説明を聞いていなかったため、目覚めたあと事態を把握できずに時間がすぎ、初期設定なしで転生させられた可能性も……
「どちらにしても、彼女が不利益を被ったのに変わりはない」
僕をかばったせいで、大変な目に遭わせてしまい申し訳ないな。
「見習い期間も終えたし、彼女と連絡を取れる方法はないのか? ポイントを増やすコツとか、僕なりに伝えられればいいんだけど……」
もしかしたら解放された新機能の中に、そういう類のモノがあるかもしれない。
ランキングの確認は終わったし、他の機能も調べてみよう!
集中しすぎて乾いた喉を、レモンティーで潤した僕は、ランキング以外の機能もチェック!
“ミッション機能”は、魔王に対して指令が出され……それをクリアすると、アイテムやレアモンスターが貰える仕組みだった。
〜デイリーミッション〜
キルポイント獲得:10ポイント/日
1万ポイント消費:10ポイント/日
掲示板に1回以上コメント:10ポイント/日
〜不定期ミッション〜
スタンピードを起こして街を滅ぼそう:成果に応じて報酬アリ
魔王と模擬戦をしよう:勝者にレアモンスタープレゼント
ルーキーの居場所を突き止めよう:正解者にはアイテムプレゼント
「デイリーミッションはともかく、不定期ミッションは内容がエグすぎるから、挑戦したくないけどな」
現在進行形で、僕ら<ルーキー魔王>の居場所を探っている先輩が、何人もいると思うとゾッとするよ。
というか……こういうミッションで動く魔王がいるから、世界各地でスタンピードが起き、滅亡を恐れた人類に敵認定されるのだ。
スタンピードを引き起こすダンジョンは、特に危険視され……討伐隊が派遣されやすくなるから、自らの首を締める自殺行為なのに……。
「報酬のアイテムやレアモンスターは欲しいけど、強いモンスターほど維持費も高いから、無理に挑戦する必要はない」
自然な流れで達成できそうなミッションがあったら、拾う感じで貰っておく……くらいの方が、生き残りやすいだろう。
「“同盟機能”は名前のとおり、他の魔王と協力関係を築けるシステムか。一人5つしか枠がない代わりに、効果は絶大」
同盟相手には、”チャット機能”でメッセージを送れるだけでなく……物資支援や、アイテム・モンスターの売買も可能なんだって。
アイテムの交換レートは、ダンジョンの立地条件に左右されるから……違う属性の魔王と同盟を結べれば、それだけでポイントの節約につながる。
異なるタイプのモンスターも置きやすくなるため、ダンジョンの防衛力も上がるだろう。
「まぁだけど、実際の使いかたは違うんじゃないかな? 同盟相手の弱い魔王を脅して、支援名目で搾取できればボロ儲け」
スッカラカンになるまで絞り尽くした後は、遺恨を残さぬよう滅ぼすか、再び搾取できるようになるまで放置すればいいだけだ。
「対等な相手との同盟関係は、互いを成長させるが……信じられる相手を選ばないと、地獄を見るシステム」
僕らを”眷属”と呼んだ声の主が、「魔王は減っても足せばいい」と言っていたから、「バカは滅びろ」という方針なのだろう。
「さてと……僕はどうする? 面識のない先輩魔王に、保有ポイント最下位が同盟を願い出るのは、論外として……」
チャット機能を使うために、サーシャ様へ同盟を打診するか?
「もし彼女が申請を受けてくれたら、転生時に聞いた説明や、僕なりのコツを伝えられる。大きな金額は無理だけど、初期投資が必要なら支援も可能だ」
彼女のダンジョンは風属性だから、モンスターの交換でもメリットがあるだろう。
「だけど、断られたら? ”貧乏人のくせにキモイ”とか思われたら悲しいな」
彼女に好意を寄せる元クラスメイトは多かったから、同盟申請も複数届いているだろうし……。
「いや、ここで動かないでどうする! 弱気になるんじゃない!」
他に連絡を取る手段がない以上、僕の方からアプローチすべきなんだ!
同盟を打診して断られた場合、ペナルティーとして、断られた日から1ヶ月は新たな申請ができなくなる。
だけど、”ボッチ&最下位”の僕が申請したいと思う相手など、彼女以外いないため……心の傷さえ気にしなければ、実質ノーダメージ。
「よし、僕は動く! 嫌なら断ってくれて構わない。僕は、自分の意思を伝えるだけだ!」
大声をあげて自分を奮い立たせ、深く息を吐いた僕は……ランキングの端にある申請欄から、サーシャ様へ同盟を打診した。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)