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10話 Cランク冒険者vs恵のダンジョン


〜冒険者side〜




 俺の名前はロンバード。


 ヴィッチネント王国所属の冒険者であり、Cランクパーティー<紅蓮の炎>を率いるリーダーだ。



 今はパーティーメンバーの二人とともに、武術大会に参加するため、モートランド皇国へ向かっている。


 30歳を過ぎてもCランク止まりの俺たちじゃ、Bランク昇格の望みは薄いし、大した貯金もできないからな。



 冒険者を引退したあとの士官先に困らぬよう、武術大会で実績を残し、点数稼ぎをしておきたいのだ。


 去年は良いところまで勝ち上がったものの……規格外の猛者と当たって負けちまったから、今年こそは予選を突破したい。



「あれ? おぃロンバード、あそこを見てくれ。砂漠の真ん中に穴があいているぞ」


「本当だ。アリ地獄じゃないみたいだし、何があるのか気になるな。急ぐ旅でもないんだ。ちょっと寄り道していくか」


「「おぅ!」」



 砂漠を渡るときにルートを逸れるのは、道に迷う原因となる危険な行為だが……俺たちはオアシスで育った地元の冒険者。


 装備も万全な状態だし、多少の寄り道なら大丈夫だろう。



「地下へと続く階段……。こんな場所にあるって事は、金持ちの別邸……なわけないよなぁ?」


「生まれたてのダンジョンかもしれないぜ! そうだとすりゃあ大手柄だ。俺たち、報奨金でガッポリ稼げるぞ!」


「ルッチの言うとおりだ。ロンバード、ちょっと危険だけど行ってみないか? もしダンジョンを破壊できたら、武術大会以上の功績になるぜ!」



 ルッチとシュートが言うように、未踏破のダンジョンを攻略すれば大手柄だし、ギルドへ報告するだけでも多額の報奨金が手に入る。


 ダンジョンは冒険者の資金源であると同時に、人類を脅かす敵だからな。


 せっかく巡ってきた美味しいチャンスを、逃すわけにはいかない!



「分かった! ひとまず踏破を目指し、ヤバくなったら撤退しよう。報告だけでもいい稼ぎになるんだから、生き残ることが最優先だ!」


「「あぁ!」」


 もしここが、本当に未発見のダンジョンなら……宝石や魔道具がドッサリ入った、宝箱を全取りできるかもしれない。






 意気揚々とダンジョンへ足を踏み入れた俺たちだったが……待ち受けていたのは、予想外の地獄だった。


「あ、暑ぃ……。夜がこない砂漠とか、狂ってんだろ!? ここ創った魔王は、常識ってものを知らないのか……?」



 ダンジョンと言ったら、深い階層へ潜るにしたがって強いモンスターが出現し、最奥に魔王がいるのが常識。


 それなのに、このダンジョンには一体もモンスターがおらず……地上と変わらぬ砂漠や、クイズ付きの迷路が待ち構えていたのだ。



『問題です。ミハエルは2.4km離れた友人宅へ行くのに、途中まで分速80mで歩き、途中から分速120mで走りました。到着までにかかった時間が29分だったとき、走ったのは何mですか? 正解の数字に対応する石版を、解答欄にはめ込みなさい』



「知らねぇよ! 結構早い感じがするから、500mだろ!」


「おぃルッチ、そんな雑に答えるな! ソレっぽい数字を当てはめて計算すれば、そのうち答えが出る……うわぁ!?」



 クイズに間違えると天井から砂が降ってきたり、”アリ地獄のような落とし穴”に落とされ、体力を消耗させられる。


 たとえ正解できても、扉を抜けたすぐ先には別のクイズが……。



 命に関わるトラップこそないものの、延々と続くクイズ付き迷路と、夜がくることのないクソ暑い砂漠。


 トラップと格闘しながら得た宝箱にも、「ハズレ」と書かれた紙切れしか入っておらず……


 モンスターと戦えないから、換金できる素材や、成長に必要な経験値も貯まらない。



「ハァ……。もう嫌だ、帰りたい……」


 俺もそれなりに長い間、冒険者としてやってきたが……ここまで人のやる気を削ぎ、攻略する旨みのないダンジョンは初めてだ。



「なぁお前ら、もう戻ろうぜ? 下層階まで潜ったら違うのかもしれねぇが、こんなダンジョン耐えられねぇよ!」


「そうだな。国へ帰って、発見報告だけしよう」






 俺たちはダンジョンの攻略を諦め、元きた道を戻り始めたが……それはそれで地獄だった。


 足を取られる砂地と、刻一刻と減る水のストックは、行き道で弱った俺らの心をさらに痛めつける。


 外に出た後も……近くの街へ到着するまで、似たような砂漠が続くと思うとウンザリだ。



「ロンバード、水の残りは? 帰還まで持ち堪えられるか?」


「ギリギリ足りるが、余裕はない。武闘大会の出場を諦め、ヴィッチネント王国の最寄り街へ向かうとしても……今日からは一日一杯だ」


「「マジかよ……」」



 結局俺たちは、何も得ることが出来ないまま外へ出た。


 水の枯渇で、モートランド皇国行きも諦めるしかなくなっちまったし、本当に最悪だ!



「チクショー。こんなダンジョン、二度と来るか!!」


 早く祖国へ帰って……発見報告の報奨金で、腹が膨れるまで水を飲んでやる!

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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