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1話 学生生活の終わり




 キーン、コーン、カーン、コーン……


「あれ? もう昼休み終わりか。午後の授業は、魔法史と法学だったよな」


 このままずっと空を見上げていたいが、授業をサボると奨学金を止められてしまうので、僕は諦めて身体を起こした。






 僕の名はメグミ。


 ルールベル皇国屈指の名門校<ラヴィレンス高等学園>に通う、16歳の奨学生だ。


 ご先祖様が勇者だったらしく、普通の人より魔力量が多いため……それを買われて、貴族だらけの名門校へ入学する運びとなった。



「勇者云々言っていた父さんは死んじゃったし、母さんもいないから、本当かどうかは分からないけどね。血筋がどうあれ、今じゃ貧しい平民だもの」


 いくら魔力が多くても、幼い頃から専属の家庭教師をつけ学んできた連中に、魔法歴半年の僕が勝てるわけない!


 後ろ盾になってくれる貴族もいないため、僕は当然のようにイジメっ子から目をつけられてしまい……現在も、憂鬱な学生生活をおくっている。



「それでも……。残り2年半、はってでも学園へ通い続けるけどね。保護者がいない僕にとって、奨学生の立場は最後の砦だから」


 ラヴィレンス高等学園の奨学生は、一定以上の成績をおさめ続ける限り”衣・食・住”が保証され、毎月5万ロルの奨学金を貰える。



「それに……この学園を卒業すれば、高学歴のエリートとして、一生食いっぱぐれない就職先も……」


 金もコネもない僕がまともな人生をおくるには、3年間歯をくいしばり、ラヴィレンス高等学園を卒業するしかないのだ!






 憂鬱な気持ちを抑えて、本鈴が鳴る前に教室へ戻ると、またイジメっ子A・B・Cが絡んできた。


 授業の準備をしていた教師は、見て見ぬフリをするため、「忘れ物を取ってくる」と言い残し教室を出ていく。


 建前上は同じ学生でも……後ろ盾のない僕は、学園ヒエラルキー最下位なのだ。



「よぉメグミ〜。俺イケてる中級魔法覚えてさぁ〜、試し撃ちの相手探してるんだよね〜。お前やれよ」


「殿下、良きお考えでございます! メグミ。死んでも誰一人困らねぇ貧乏人なんだから、お国のために奉公するよな? ほら、そこに立て!」


「まぁゴキブリの親戚みたいなもんだし、得意の回復魔法で生き残るかもしれねぇけど。あぁ、違った! “回復魔法しか使えない”の間違いだわ」



 どうやらイジメっ子Aは、覚えたての攻撃魔法を人に撃ちしたくて、ウズウズしているらしい。


 太鼓持ちのイジメっ子B・Cと共に、「マトになれ」と騒いでいる。



「ほら、大人しくそこに立っとけよ〜。くらえ、貧乏人! 天下無双の新魔法、ファイヤーアローを!!」


「「流石でございます、ロミオット殿下!」」



 なぜ教室の中でぶっ放そうとするのか、理解に苦しむが……修理代を出すのは僕じゃないし、イジメっ子Aは皇族なので逆らうこともできない。


 急所さえ外せば回復魔法で治せるから、制服の交換費用は「致しかたない出費」と諦めて、首と心臓以外の場所で受けるしか……






「待ってください、殿下! 平民だろうと奨学生だろうと、同じ教室で学ぶ仲間を傷つけるべきではありません。メグミ君をマトにするのはやめてください!」


「「「サーシャ嬢!?」」」



 イジメっ子Aが火魔法を放とうと、右手に魔力をこめたとき……学園一の美女と名高いサーシャ・バークレー様が、なぜか僕をかばってくれた。


 後ろ盾となる上級貴族が多いから、表だった嫌がらせこそされていないものの……下級貴族の傍流という、弱い立場にいる彼女がなぜ?



「サーシャ嬢、君は勘違いをしている。分不相応な所に紛れ込んだ平民には、”立場の差”というものを教えねばならぬのだ!」


「そうですぞ。思い上がったコイツが、卒業後役人にでもなったら……。皇族の方々が住まう宮殿が、汚れてしまいます!」



「殿下、ホムビッツ様。メグミ君は身分こそ低いけれど、優しくて真面目な仲間です。私は学園を卒業しても、彼と同じ世界で過ごしたいですわ」


 色々な感情が浮かんできて言葉が出ないが、生徒が集まっている教室で、ヒエラルキートップの皇太子に逆らうのはマズイ!


 目をかけていた美少女に、公衆の面前で恥をかかされたと……怒り狂った奴が、イジメのターゲットを彼女へ変えたら……






「…………サーシャ・バークレー。ならば、お前が代わりにマトとなれ。”顔だけ”の半庶民が、皇太子の俺に逆らうんじゃねぇぇ!!」


 恥をかかされる形となったイジメっ子Aは、怒りのあまり僕へ放とうとしていた火魔法を、彼女に向けて撃ってしまった。



「ゃぁっ……!?」


 慣れている僕なら、急所を外す事くらいできるけど……そこまで魔法が得意じゃないうえ、驚きで硬直している彼女には避けきれない。



「くっ……」


 サーシャ様をかばおうと手を伸ばすが間に合わず、皇太子の放った<炎の矢>は、無情にも僕の前を通りすぎる。



 そのうち一本が、吸い込まれるように彼女の首へと向かっていき、もうダメだと思ったその時……


 教室全体が、まばゆいばかりの光に包まれ……気がつくと、四方を壁に囲まれた真っ白な空間に立っていた。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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