実は裏では…
「セルス。手、つなごっか?」
「あ、私も。アテネに抜け駆けはさせないよ。」
「お、おう。」
アテネは俺の右の手を、ヘレネは左手を握ってきた。この状態で学校に行くのか。…視線で殺されないだろうか。
教室に入ると、マーズが驚いたように
「お前ら…。そうか、ついに…。アテネちゃん、ヘレネちゃん。おめでとう。俺たちが協力したかいがあったな。」
「えっ?」
「マーズくん。ありがとね。」
えっと、どうなってるんだ?俺が困惑してると、ラクスが手招きしている。
「どういうことだ?」
俺はラクスに問う。
「実はね…。」
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~1週間ほど前~
その日、セルスは森にレベル上げに行っていた。そのすきを突き、アテネはクラスメイトに相談した。
「私、セルスともっと深い関係になりたいの。」
その言葉に皆、唖然とする。
恐る恐る声を上げたのはマーズだった。
「アテネちゃん、それはいったいどういう?すでに大分深い気が…。」
「ううん。私とセルスはただの婚約者なの。ただの婚約者ってことは、まだカップルじゃないってこと。要するに、私はセルスと付き合いたい!」
「「ああ~。」」
「でも、アテネちゃんから告ったら、即OKだと思うけどな。誰が見てもラブラブだし。」
マーズがそう意見する。しかしアテネは首を振る。
「私はセルスから告白してほしいんだ。実はね、私とセルスが婚約したときは私から好きって言っちゃったの。だから今度はセルスから言い出してほしい。だからお願い!みんな協力してください!」
アテネは頭を下げて懇願する。クラスメイト達は顔を見合わせ、笑いあう。
「「もちろん!」」
クラスメイトは今までセルスやアテネに何度も世話になってきた。ならば今度はその恩を報いるべき。その考えにより、クラスメイトの士気は大幅にアップした。その日は夜遅くまで会議をしていたそうだ。
~始業式の日~
高等部の始業式、変人がこのクラスに入ってきた。
「おお~。上玉ぞろいではないか。さすが連合国一の学院だ。」
一言でいえばキモイ。ガイアはさらに衝撃的な発言をする。
「君たち。後で私の部屋に恋。楽しませてやろう。」
そう、アテネとヘレネに言い放ったのだ。クラスメイトは驚きのあまり声も出なかった。この学園にいるものとして、彼女らがセルスの婚約者であるということは常識だからだ。
もちろん、アテネとヘレネは断る。ヘレネは丁寧に言ったのに対して、ヘレネは相手を煽る。その後、なんやかんやあってヘレネとガイアが決闘することになった。それを聞いてアテネはあることを思いつく。
(セルスと決闘して、私が勝ったら一緒にデートしてもらう。マーズくんたちにいろいろ吹き込んでもらったら、きっと…。)
アテネはクラスメイトに相談する。彼らからは快い返事をもらえた。後はセルスに勝つだけだ。アテネはここ最近、ずっと特訓していた。死ぬ気で頑張ればきっと勝てるだろう。そう思ってたが、
結果、決闘には負けてしまった。落ち込んで寝てしまった?アテネの様子を見て、クラスメイト達は何とかしてセルスにデートさせよう。そう決心する。
その熱意が通じたのか、セルスとアテネはデートすることになった。マーズがセルスにまだ告れるチャンスがあることを伝えると、セルスはまんざらでもなさそうだった。クラスメイト達は、デートの結果を楽しみにしていた…。
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「…というわけだ。」
「なるほどね。いろいろとありがとよ。」
裏でいろいろと動いてくれてたのか。彼らのおかげで2人と付き合えることになったなら、感謝しないとな。今度、特訓に付き合ってやろうかな。
「今度、特訓に付き合ってあげよっか?」
「えっ?そ、それは…。遠慮させてもらいたいかな?」
そ、そうか。俺の特訓なら1日で10倍ぐらい強くすることができるのにな。なんでそんなに遠慮されるんだろう?
「何はともあれ、ありがとう。みんなのおかげで2人と付き合えたよ。」
「どういたしまして。あんまり見せつけないでくれよ。独り身にとってはきついからね。」
「ははっ。気を付けとくよ。」
俺がラクスから事情を聴き終えると、アテネとヘレネが俺のことを待っていてくれた。
「そういうことなんだ、セルス。」
「はぁ~。アテネってそういうところで無駄に頑張るよね。」
「まあまあ。そのおかげでヘレネもセルスと付き合えたでしょ。」
「それはそうなんだけど…。」
「気にしない気にしない。」
「ありがとな、アテネ。俺の背中を押してくれて。」
本当に感謝しかない。
「フフッ。未来の夫の背中を押すのは未来の妻の役目だよ。」
そう言ってアテネは俺の頬にキスした。か、かわいい。天使みたいだ。
「あっ!アテネがまた抜け駆けしてる。私も!」
今度はヘレネがキスをしてくれた。
「俺は幸せだな。」
「おい、お前ら。セルスが幸せなのはよーく分かった。だからそういうのは外でしろ。」
俺たちはいまさらクラスメイトの前だったことを思い出し、赤面するのだった。
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