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決闘

今回も長めになってしまいました。

1話~5話を大幅に改稿しました。ぜひもう一度、読んでみてください。

ペンネームも替えさせていただきました。新しいペンネームはシトロン石見です。これからもよろしくお願いします。


「というわけでヘレネ、特訓するぞ。」

「オッケーだよ。何するの?」

「うーん。何にしようか。普通に戦えば勝てるんだけど。やっぱり絡め手対策だよな。」

「うん。あんなやつのことだから卑怯なことをしてくるに決まってるよね。」

「というわけで、今から俺と1対1の決闘をしてもらいます。俺は全力で勝ちにいくから。どんな卑怯な手でも容赦なくつかうけど、ヘレネは正々堂々戦ってね。」


 ヘレネがポカンとしている。


「セルス君?それ、死んじゃうよ?」

「もちろん、その辺も考えてあるよ。なんと、俺は亜空間を作ることに成功したんだ。そこの空間に行けば、絶対に死ぬことはないし、時間の進みも遅いから特訓時間もたくさん取ることができる。いいこと尽くしだよね。まあ、魔力消費が異常なほど多いんだけど。」

「うん。なんかヤバそうな雰囲気しかないけどやるしかないよね。」

「じゃあ行こうか。」


 俺は亜空間を作り出す。亜空間には何もなく、ただ一面白い世界が広がっている。


「早速行くよ。先に降参した方が負けね。」

「え?もう?」


 ヘレネが戸惑っている間に、俺はヘレネを攻撃する。俺の剣はヘレネに致命傷を与える。だが次の瞬間、何事もなかったかのようにヘレネの傷は癒えていた。


「ね?すごいでしょ。」

「刺された…。死んだ…。」


 この魔法に関しては自信作である。なにせ命を気にせず特訓できるのだから。ヘレネにも同意を求めたが、ヘレネは刺されて死んだ恐怖によって使い物にならなくなっている。仕方ないことではあるが。そのうち死ぬ恐怖もなくなるだろ。明日の朝まで10000回は確実に死ぬからな。


「じゃあ次行くぞ。」

「えっ!?」


 ヘレネ曰く、この日の俺は死神にしか見えなかったそうだ。




「おっ、セルスじゃん。ヘレネちゃんとの特訓はどうだった?」


 翌日、学院に登校すると、マーズが話しかけてきた。


「もちろん上出来だぞ。アテネの2分の1ぐらいの強さにはなったんじゃないか?」

「すげえじゃん。いままで10分の1だったのに。5倍にもなったのか。どうやったんだ?俺にも教えてくれよ。」

「めっちゃ簡単だぞ。俺と決闘をする。それを永遠と続ける。以上だ。」

「それだけ?なら今度俺もやってもらおうかな。」


 そこに、ヘレネが近づいてきて、


「やめた方がいいよ。私なんか、20000回は軽く殺されたから。」


 ヘレネのその言葉に、教室中がシーンとなった。


「えっと、それってどういうことなのかな?ヘレネさんの言っていることは本当なのかな?」


 ラクスがヘレネの言葉の信を問うて来る。


「もちろん、本当だぞ。俺が発明した魔法の空間内だと、人は死なないんだ。それに時間の進みが遅いから、こっちの時間だと2日ぐらいか?それぐらいやってたよな?」

「体感、1週間ぐらいだったけどね。」


 ヘレネがやれやれという感じで言ってくる。この特訓において、ヘレネが最も成長した部分は精神力だ。魔法使いに精神力は必須だ。魔法使いの仕事に一つに、状況の分析というものがある。ヘレネはこれでも王族育ちだ。精神力ならそこら辺にいる平民の方がある。だから鍛えたのだ。精神力だけを見れば、俺やアテネよりも高くなったのではないか?もちろん、ほかの箇所も成長した。人族最強クラスには。

 すると、何も知らない変態…ガイアが教室に入ってきた。皆、かわいそうな目でガイアを見ている。何をやってもヘレネに勝つことは不可能だしね。


「アテネちゃん、ヘレネちゃん。私の妻になる決心はついたかな?」


 すると、ヘレネが負けじと言い返す。


「あなたこそ、奴隷になる覚悟はできてんだよね?」

「私が負けることはないのだから、そんな覚悟などするわけないだろう。」


 皆「あ~あ」って感じだ。ああいう奴が負けた時にグチグチ文句垂れるんだろうな。


「まあいいよ。早速、決闘しようか。」

「そうだな。」

「1時間目はその決闘の見学ということで。」


どこから現れたのか、このクラスの担任がそう宣言した。




 俺たちは闘技場に移動した。


「では、早速始めましょうか。この誓約書の内容に間違いはありませんね。」

「ええ。」

「もちろんだ。」


 二人が誓約書の内容に同意した。この瞬間、あの誓約書の内容は強制力を持つ。そして、違うことはできなくなる。精神から縛られるという感じだ。俺やアテネは例外だ。神からの加護の力が大きすぎて、縛れないらしい。


「では、始め!」


 その合図とともに、ガイアが飛び出してきた。ガイアの剣をヘレネが冷静に受け流す。


「えっ?」


 ガイアは何が起きたのか、いまいち理解できていないようだ。


「私から攻撃してもつまらないからね。10分間私からは攻撃しないよ。ほら。かかってきな。」


 ヘレネの煽りってなぜだかわからないがイラっと来るんだよな。やっぱりあの体型のせいか?ぜったいねーだろ!


「なんだと!何度も何度も私のことをバカにしおって。」


 俺が頭の中で一人漫才をしていると、ガイアはガチギレしていた。だが、冷静さを欠いている今の状態では、ヘレネに敵うわけもなく、ガイアが放った攻撃はすべて、軽く受け流されてしまった。やはり冷静さっているのは大事だよな。


「ひぃ、ひぃ。」


 10分間、休まず攻撃を続けていたガイアだが、さすがにもう体力は残っていないようだ。結局、搦め手をガイアが使ってくることはなかった。用意していたとしても、あの冷静さを欠いた状況では、思い出せていなかっただろうけど。


「では私から。」


 その言葉とともにヘレネが放った剣はガイアの意識をもぎ取った。


「ドサリ…」

「し、勝者、ヘレネ=レガトゥス。」


 皆、ヘレネが勝つとは思っていたが、ここまで強いとは思っていなかったようだ。かくいう俺も、こんな圧勝だとは想像していなかったが。


「セルス。君っていう奴はついに…。」


 ラクスが何かあきれたようにつぶやく。


「おい。俺がついになんだって。」

「いや。何でもないです。」


 ラクスに逃げられた。何が言いたかったんだ。


「あの3人で唯一まともだったヘレネちゃんが…。ついにセルスに染まってしまった…。」

「ルミス?お前、何言ってんだ?俺は元からまともだぞ。」


 ルミスがはぁ、とため息をつきながら


「あのね。1日でヘレネちゃんをここまで魔改造する人がまともなわけないじゃん。あのガイアとかいう奴のほうがまだ常識人だよ。」


 いくらなんでもそれはひどくないか。あの変態より俺の方が狂っていると?声に出すとまた何か言われるだろうから口には出さないが、俺は心の中で反論する。自分でも()()異常だとは思っているが、そこまでじゃないだろう。

 ガイアが目を覚ましたようだ。


「あれ?私は何を?」

「あんたはヘレネに負けたのよ。あんな手も足も出ないとはね。もしかして、あんためちゃくちゃ弱いんじゃないの?よくそんなのでこの学院に入れたわね。」


 早速、ルーシャが毒を吐いている。ガイアは軽くへこんでいたが、俺の方を向き


「お前、だましたな!お前が一番弱いんだろ!だから決闘を受けなかったんだろ!そうだろ!」


 ガイアが負け惜しみをしてるなー。俺が弱いわけないだろ。決闘なんかしたら、手加減しても腕の1本や2本は余裕で吹っ飛ぶぞ。


「何言ってんだお前?」


 マーズが代わりに答えてくれる。


「じゃあ、決闘を受けろ。これで俺が負けたら認めてやる。」

「やめた方がいいぞ。絶対後悔するから。」


 皆がやめるように進言するが、ガイアは聞く耳を持たない。どうするべきか。俺が悩んでいると、担任が声を上げる。


「じゃあ、セルスさんとアテネさんの決闘を見てもらえばいいのではないですか?」

「「それだ!」」

「ええ~。」


 勝手に話が進んでいる。アテネと戦うと疲れるんだけど。本気出さないといけないから。アテネも乗り気じゃないだろうし…。


「いいね!そうしよう!セルスもいいよね?」


 そんなことなかった…。なぜそんな乗り気なのだ、アテネよ。


「わかったよ。それでいいよ。」


 急遽、第2試合として、俺とアテネの模擬戦が開催されることとなった。

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