王都①
1週間ぶりに家に帰ると、お義母さんが抱き着いてきた。
「お義母さん!?」
「アテネ~。セルス~。会いたかったよ~。」
「お義母さん。キャラが崩壊してますよ。」
お義母さんが再開した嬉しさでハイテンションになってる。
「1週間も会えなかったのよ。それに、セルスの意識がないって言うし。安心するに決まってるじゃない。」
「それは…。ご迷惑をおかけしました。」
「さあさあ、入って。お食事でもいただきましょう。…あっ。アレスもどうぞ。」
「忘れられてたんですね。私が一番重症だったんですが。」
アレスが落ち込んでいる。あとで慰めとくか。
その日の昼食はめちゃくちゃ豪華だった。最高級のサーロイン?のステーキやズワイガニのようなものなども出て、王家のパーティーのような豪華さだ。意外とお義母さんって過保護?
2日後、俺たちは2週間前の魔人戦討伐のことについて、国王から呼び出しがあった。なるべく早く王宮に来るように、と書いてあった。
「お義母さん。行ってくるね。」
「大丈夫?」
「心配ないですよ。大きな街道を通りますし。」
「そうだといいのだけれど…。」
「アレスもいるんだし。何も起きないよ!」
…ん?それってフラグじゃない?アテネがフラグっぽいことを言った気がする。一応、気を付けておくか。
この国のはそこらじゅうに魔物がいる。そのため、街と街を行き来するときには国営の街道を利用する。国の騎士が魔物の駆除などを行うため、安全に利用することができる、基本。
「「おお~。」」
「お二人とも、初めての街道なのですか?」
「そうなんだよね。俺は家の周りしか行ったことないんだ。」
もともとのアストロム家もアングルス家の隣町にあったのだ。なので、街道を利用したことはない。アテネも外にはいったことがないらしい。初めて見る街道はとても広々としている。幅は20mぐらいはありそうだ。しかも、路面はレンガ造りになっていて馬が走りやすいようになっている。こんなものが王国中に張り巡らされているのか。王国の経済力ってバカにならないな。日本とそんなに変わらないんじゃないか。
「何日ぐらいで王都に着くんだ?」
「3日ぐらいじゃないですか?途中の街で観光とかもするでしょうしね。」
「それぐらいなのか。」
「観光か。おいしいもの、たくさん食べよう。」
アテネの口からよだれが垂れてる。女の子って甘いものに目がないからな。偏見か。
「食べ過ぎたら太るぞ。」
「えっ…。確かに…。最近おなか周りが…。ダイエットした方がいいかな。」
そんな泣きそうな目で見られると…甘やかしたくなる。
「まあ、良いんじゃないか、今回ぐらい。せっかくの旅行なんだし。」
「確かに。せっかくの旅行だしね。はしゃがないと。」
まあ、アテネは太っても可愛いか。
「そうだな。楽しむか。」
流石に危険なことはないだろう。
「おっ。次の街が見えてきました。」
「おお~。」
見えてきた街は城壁に囲まれている。ヨーロッパの都市のようだ。異世界に来たっていう実感がわいてきたな。もう8年ぐらいたってるけど。
すんなりと城門の検問を通り抜けて街に入ると、そこはパリのように石造りの住宅が規則正しく並んでいる。異世界あるあるのスラム街のようなものは見当たらない。領主が良い人なのかな。
「馬を休ませないといけないので6時間ぐらい時間がありますね。それまでは自由行動ということで。」
「セルス!観光、しに行こう。」
「そうだね。」
俺とアテネは街を出発するまでの時間を観光することにした。6時間もあるなら観光するには十分な時間じゃないかな。
「あれ食べよう!」
アテネが指さした先にあったのはグラタンのようなものを売っている店があった。
「美味しそうだな。2つください。」
「まいど。はいどうぞ。」
渡されたのはパンにグラタンのようなものを挟んだものだった。この街の名物らしい。
「美味しっ。」
「おお…。」
「どうしたの?」
アテネの笑顔に見とれていた。アテネの笑顔ってめっちゃ可愛いんだよな。その証拠に道を行きかう人がアテネのことをガン見している。こんな子が俺の婚約者でいいのか?もっといい人、良そうだけどな。
「セルス!今度はあっちに行こう」
「城か。いいんじゃないか。」
この街は昔、違う国だったらしい。だから、その時代の王城が残っていて、観光名所になっている。
「大きい。」
「確かに。昔の王城だしな。今の王城はもっと大きいのかもな。」
「楽しみだね。」
『ようやくだな。』
『もう一度この街に栄光を。』
『栄光を。』
「ん?」
「何かあった?」
「いや。なにか良からぬことを話している声が聞こえたんだが…。気のせいか。」
その後、俺たちはこの街の観光名所を一通り巡った。どこも観光客向けに改装されていて、遺跡とかに興味のない俺でも割と楽しめるようになっていた。
「おっ。もうこんな時間か。アテネ。馬車に戻るぞ。」
「オッケー。」
「さて、全員時間通りに集合しましたね。出発しますか。次が王都ですよ。」
「ようやくか。」
俺たちは忍び寄る黒い影も知らずに王都に到着することを楽しみにはしゃいでいた。
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