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竜人族の里

俺たちは竜人族の街に向かった。


「おっ。お越しになられました。」

「英雄様のお帰りじゃ。」

「英雄様~。」


竜人族の街に到着すると、俺たちは竜人に囲まれた。


「英雄様って誰のことだ?」


俺は竜人族の娘に聞いた。


「あなたに決まっているでしょう。」

「えっ?」

「あの量のワイバーンをあっという間に倒されて。あなたがいらっしゃらねば私たちはどうなっていたことやら。」


俺が英雄?ワイバーンってそんなに強くなかったし。そんなことを言われる筋合いは…ない、よな?


「セルス!英雄だって!すごいじゃない。」

「そ、そうかな?俺、ただワイバーンを倒しただけなんだけどな。」

「ワイバーンを倒したって普通は自慢することなのですよ。」

「そうなのか?」

「ええ。伝説級の魔物ですからね。」


へえ。あれで伝説級なのか。魔王とか異次元の生物なのかな。


「すいません。この街の長にお会いできますか。」


とりあえず長に会って、今後の対策を考えないとな。


「はい!もちろん!」


俺たちは竜人族の娘についていった。


「こちらです。」


俺たちはここらで一番おおきな家にたどり着いた。平屋の日本家屋で、前世でも見たことがないような家だ。


「ディホンさ~ん。英雄様をお連れしました。」


竜人族の娘がそう呼ぶと、家からいわゆる陽気なおじさんが出てきた。


「おお~。これはこれは。ようこそお越しくださいました。さあさあ中へ。どうぞどうぞ。」

「え、ええ。」


俺たちはディホンと呼ばれたおじさんに連れられ、豪邸の中に入った。中もうん、完璧な日本家屋だな。和食とか出ちゃうのかな。ああ、コメ食いたい。


「さあどうぞ。」


俺らは和室に案内された。


「ようこそお越しくださいました。私がこの街オリホスの町長、ディホンです。先ほどはありがとうございました。われらの恩人であります。感謝してもしきれません。」


そういいディホンは頭を下げた。


「頭を上げてください。俺はそんなに大したことをしていませんよ。」

「いいえ。あなた様がいなければ私たちは滅んでいたでしょう。そこであなた様方にお願いがございます。私たちを魔王セクメトからお救いください。」

「「ま、魔王!?」」


魔王、か。とうとうその時が来たか。武者震いっていうか、緊張してきたな。


「魔王セクメトとはいったいどういうことでしょうか?」


1人冷静なアレスが問う。


「はい、先ほどこのような手紙が届きました。」


ディホンはそういい1通の手紙を見せた。


『ゴミ竜どもよ。俺は魔王セクメトだ。さっきはよくも俺の部下どもを殺ってくれたな。本来ならばお前らの里など滅ぼしてしまってもいいところだ。だが俺は寛容だ。お前らにチャンスをやろう。お前らの里からきれいな娘10人連れてこい。俺は北の洞窟で待っている。期限は15時までだ。それができなければお前らの里は滅ぶことになるだろう。よく考えることだな。』


そう書いてあった。こいつ、ゴミだな。権力を振りかざして女を侍らす。典型的なクズだな。


「魔王セクメト、ですか。」

「ええ。」

「それで、どうなさるのですか?」


アレスが問う。


「我らとしては魔王のいうことには従うしかあるまい、そう思っておりました。ですが、そんな時にあなた様方に出会ったのです。あなた様ならばきっとどうにかしてくださるでしょう。なのでこの後、魔王のところに一緒に行ってくださいませんか?」

「セルスさん、アテネさん、どうなさいますか?」


アレスが俺たちに問うてくる。俺はチラリとアテネの顔を見た。アテネの目を見て、俺とアテネの考えが同じだと悟った。


「俺たちは魔神討伐を目標にしています。その配下である魔王を討伐できるチャンスがあるのならぜひ、向かいたいです。それに、困っている方がいたら助けるのが道理でしょう。」


俺は笑顔でそういうと、ディホンは俺の目を見て、


「なんとありがたいことか。英雄様はお強いだけでなく、お優しいのですね。感激です。」

と涙を流している。「感激です」ってこの里で流行ってるのか?竜人族の娘も言ってたよな。

「そんなことはありませんよ。人として当たり前のことです。」


俺はつい調子に乗ってかっこつけてみた。すると、ディホンはおそらく感激のあまり、卒倒してしまった。


「だ、大丈夫ですか!?」


混乱のまま、竜人族の里の長との面会が終わった。今はおよそ12時だ。あと3時間で魔王とのバトルが始まるのか。これから戦うと決まっていると考えると緊張するな。突然戦いになった時よりも、精神的な負担が大きい。俺は緊張で震えているが、その一方でアテネはうん、テーマパークに行く前日の幼稚園生みたいな感じだ。楽しみっていう気持ちがあふれ出してきてる。すげーな。魔王と戦うことをそんなに楽しみにできるなんて。


「ほんと、ずげーよな。」

「ん?なんか言った?」

「いや。なんでもない。」


俺たちはディホンの豪邸で体をゆっくり休んで体力を回復した。


「さて、行こうか。」

「ええ。」

「そうですね。」


俺たちは北の洞窟に向かった。

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