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個性豊かなクラスメイト

 私は、1時限目の授業を何とか乗り越えた。初めての授業は数学で、半年以上まともに勉強をしていない、そして大の苦手教科の数学のせいで、全く授業の内容が頭に入って来なかった。

 そして今日から学校と言う事で、昨日の夜から緊張していたため、まともに寝ることも出来なかったので、今になって眠気が来て、ウトウトしていると。


「シバかれてぇのか?」


 銅谷先生は鬼のような形相で、竹刀を持って私の目の前に立っていたので、すぐに目を覚まして、真剣に授業を聞くことにした。

 開始早々の授業で、いきなり銅谷先生に目を付けられてしまい、やっぱりヒューマンキラーよりも怖いと感じてしまった。


「……眠い」


 けど、一ヶ月近くだらけていたせいもあるのか、全く意味の分からない授業を聞き続けていると、次第に瞼が落ちてきて――


「……っ!」


 けど、私の反射神経は劣っていないようだ。咄嗟に感じた殺気に近いような空気に気が付き、私は椅子を後ろに引いて避けると。


「……受けたくなければ、寝るな」


 私の机の上には、竹刀が振り落とされ、銅谷先生は、私に避けられたことが悔しそうにしていた。


「……ちっ」


 そして舌打ちをして、黒板の方に戻っていった。本当に、どうしてあのような人が先生をしているのだろうか……?


「やっぱり、先生は怖い?」

「あいつらよりも怖く感じる――って、ひゃっ!」


 私の座っている椅子の横に、いつの間にか青空さんがしゃがみ込んでいた。


「今度は何だっ!!」

「な、何でもないですっ!」


 いきなり大声を出してしまったせいか、再び銅谷先生に目を付けられてしまった。先生が再び黒板に板書し始めた隙に、私は横でしゃがんでいる青空さんに小さな声で話しかけた。


「何やってるの?」

「美花ちゃんが、暇だろうと思って」


 まあ、孤独と言ったら孤独だ。知っている人と言えば、美夢と青空さんぐらいだ。


「ねえ。もしかして、今回は美花ちゃんからのサプライズ?」

「まあ、そうなるかな……?」

「良かったじゃん。美夢、感激していたよ」


 納得したように、青空さんは首を頷かせていた。


「勉強の事は教えられないけど、学校について分からない事は私に遠慮なく聞いてよ。学校の裏の事まで教えてあげる」

「う、うん……」


 この学校にも、裏があるようだ。あまり噂や、悪口は聞きたくはないな……。


「初回特典。まずはこの学校の美夢の立場について」


 相当授業が暇なのか、青空さんは床に座り込んで美夢について話し始めた。


「一緒に住んでいるからわかると思うけど、美夢はすごく面倒見が良くて、勉強も出来るよね? けど数年前までは――」

「お前ら、良い度胸だな」


 青空さんに耳を傾けていたせいか、警戒するのが軽薄になっていた。私の席の前には、銅谷先生が竹刀を持って立っていた。


「問題児同士、青空と気が合うようだな? そんなに話していたいなら、廊下に立ってろ」


 先生に制服の襟を持たれ、そして私と青空さんは廊下に立たされることになった。


「廊下だと先生に怒られないから、続きを話そう……って、美花ちゃん? しゃがんじゃって、お腹痛いの?」

「……最悪な始まり方だよ」


 青空さんと関わって最悪とは言わない。むしろ、青空さんとも仲良く出来るのは嬉しい事だ。けど、あの怖い銅谷先生に登校初日に目を付けられ、これからは色んな先生に目を付けられながら過ごす事になりそうな異なり、この先が不安になり、しゃがんで顔を俯かせて、授業が終わるチャイムが鳴るまで落ち込んでいた。




「反省したか?」


 チャイムが鳴り終わり、そして銅谷先生が教室から出てきた。私たちの前に立った銅谷先生は、私たちが反省しているかを確認してきた。


「……ごめんなさい」


 私はすぐに頭を下げたけど。


「先生は短気なんだよ。何度も言うけど、先生の授業が暇だから、美花ちゃんと話をしに――」

「余計な事は言わないで、すぐに謝って……!」


 全く反省していない青空さん。先生に火に油を注ぐような発言をしていたので、私は強引に青空さんの頭を下げて、何度も頭を下げて、反省の意を表した。

 私と青空さんは先生にしばらく廊下で怒られた。あまり怒られ慣れていないので、私は心が折れそうになったが、青空さんは怒られ慣れているのか、説教されている時でも、ケロッとしていた。


「美花ちゃん。美夢と過ごしているせいか、何だか美夢みたいだよ?」

「青空さんが、先生に火に油を注ぐような事を言うからだよ……」


 先生の説教が終わると、私と青空さんは教室に入った。

 初日からこんな事になって、今後の学校生活が心配だ。こうなる運命なら、真希さんの鼻メガネやタスキを持って、みんなの前に立てばよかった。


「失礼します」


 今後の事が心配でため息をついた後、私の前には見覚えのある生徒が話しかけてきた。


「やっぱり、この学校に興味があったのですね~」


 美夢のお弁当を届けに行ったときに出会った、あの長い髪の髪型のとてもスタイルが良くて、美人な生徒だった。


「あの時、華原様に名前を聞いておいて、自分は名乗りませんでした事を、心からお詫び申し上げます」


 問題児に成り下がった私でも、彼女は私に頭を下げてから、微笑んだ顔をしていた。


「華原美花様。わたくしは、この学級の級長、黄森きもり風香ふうかと申します。今後とも、末永くよろしくお願いします」

「こちらこそ……お願いします……」


 こんなに改まって挨拶されたので、私も少し緊張して、返事をしてしまう。クラスでも、こんなにおっとりしているようだ。こんなにおっとりして、休み時間に紅茶を飲んでいる人が、クラスの級長をしているのが凄く意外だった。



 4時間目が終わり、そして昼食となった。

 未だに美夢と挨拶出来ていない状態だ。度重なる休み時間ずっと、周りにいきなり告白してくる何名かの男子生徒。そして私の体の事について色々と聞いてくる女子生徒。

 引っ込み思案の美夢は、多くの生徒が集まる生徒の中に割って入ることが出来ず、ずっと自分の席で予習をしたり、話しかけてくる青空さんと話をしていた。

 私だって、早く美夢と話がしたい。いきなり学校にやって来た私をどう思ったのか。色々と美夢に話を聞きたい。

 他の生徒が、私の周りに集まってくる前に、私は自分の席から離れ、美夢の席の方を見たが、美夢の姿は無かった。


「あれ? 美夢を知らない?」


 4時間目はずっと自分の席で、熟睡していた青空さん。青空さんも、美夢とご飯を食べようと思ったのか、私と同じく美夢の席にやって来たようだ。


「気付いた時には、もういなかったよ? もしかしてトイレでも行ったのかな――」

「……マズイ事になった」


 青空さんは急に目の色を変えて、私の手首を掴んでいきなり廊下を走らされた。


「青空さん! 美夢を探すなら、二手に分かれた方が……」

「あっ、そっか」


 広い学校の中で、たった一人の美夢を探すなら、2人で協力して探した方が、効率が良いだろう。

 そう思って、私は青空さんに提案すると、青空さんは、急に手を離して立ち止まったので、私は走っている勢いのまま、体の正面から廊下に転んだ。


「……ピンク。意外と可愛い趣味をしているんだ」

「……私の下着で感心しないで」


 しゃがんで、私のパンツを吟味している青空さん。

 転んだ拍子に私のスカートが捲れ、そして現在私の下着が丸見えのようだ。すぐに起き上がって服装を正すと、青空さんはくるりと私に背を向けた。


「私は、とりあえず学校を走り回って、美夢を探す。美花ちゃんは、分かる範囲で探して」


 そう言い残して、青空さんはどこかに走り去って行った。

 まだ学校の中が全く分からないから、青空さんはそう言ったのだろう。けど、出来る範囲と言ったら、教室の周辺になってしまう。周辺だけ探しても、美夢は見つからないだろう。


「私が、美夢を探し出す」


 行方不明になった美夢を探すため、私は青空さんとは正反対の方向を探す事にした。



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