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死ぬということ Ⅸ


 ふと気づくと、私は川辺に立っていた。


「あれ?」


 ここは――ああ、そうだ、いつもアレンと、会っていた場所。


「クラウナ」


 背後からの声に、私は振り向く。

 どうしたんだろう。

 何故こんなに、胸が高鳴るのだろう。

 何故こんなに、愛おしい気持ちが湧いてくるのだろう。

 何故こんなに、身を焦がしそうな寂しさで、一杯になるのだろう。


「ああ、アレン」

「ごめん、待たせたね」

「別に、待ってなんか居ないわ、ええ、待ってなんか」


 嘘だ、ずっと待っていた。

 あなたに会いたかった。


「……ねえ、アレン」

「何だい、クラウナ」


 私は、アレンに、手を差し出した。


「あなたを愛しているわ、ずっと、例え殺されたって、愛してる」

「俺もだよ、クラウナ。君を愛してる。たとえ死んだって、君を」


 その言葉だけで、ああ、きっと私は。

 地獄の底に行くとしても、救われる。


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