第四〇話 「夢惑軍師」
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『♪~』
白い天井が見える。ここは……?
『♪~』
この口笛は、なんだ。聞いたことがあるような……。
『♪~』
ああ、思い出した。いつもの夢か。
いつものわけのわからぬ夢だ。
『画家ã—ãŸã€‚』
この夢の世界はとても狭い。白くて小さな部屋には、様々な数字やら線やら文字やらが表示されている金属の箱が天井まで積み上げられ、部屋の中心のわずかなスペースに、自分と彼女はいる。
『 今åルデ管理šã—ã¦æ¶€‚』
彼女があたしに優しげな声で話しかけている。顔は見えない。何を言っているかもわからない。夢の中の声は、わずかに意味がわかるだけで、ほとんどが理解できないのだ。それでもあたしは彼女の声が好きだ。だけどあたしは声も出せないし体も動かせない。物のようにじっと天井を眺めていることしかできないのがもどかしい。
『♪~――ッ!』
再び口笛を吹く彼女の腹が鳴る。その妙に間延びした可愛らしい音を聞くと少し笑ってしまう。
『……ãŸã。€ 建物反応地å„防』
彼女が恥ずかしそうな声でつぶやく。だけどあたしは彼女の赤くなっているであろう顔は見ることができず、ただ白い天井だけを見ているだけだ。
『Ÿã•ã›§ï』
彼女を呼ぶ声がする。声からしてたぶん男だ。あたしはこの男の声が好きではない。
『è¡—ãŒã集大成«åŒ¯ç‹ã„地』
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『ã¯æˆ¦統合ãã¯一括で管理¹ãã‚ŸãŒ恩恵ã€æ®ˆã£ãŸã』
彼女が楽しそうに男と話している。どうにも、面白くない。
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『〰検ç‰脳¹æœ13æ—¥』
そして彼女はあたしを置いて部屋から出ていってしまう。
部屋の明かりが消え、視界は真っ暗になる。
ねえ、行っちゃ嫌だ。おいていかないでよ。あたしを一人にしないで。
あたしを置いていかないで! XXXXX!
☆・☆・☆
「~~ッ!」
布団代わりにしていた純白の片翼を払いのけてベッドから飛び起きると、レージュは息を荒げながら周りを見渡す。自室代わりに使っているデビュ砦の狭い小部屋は暗闇に閉ざされている。
今、真っ暗なこの部屋には自分しかおらず、二つに結んであった髪は解けており、寝汗で顔に張り付いている。荒い呼吸で呆然としたように暗闇の室内を眺めていたが、一度長く息を吐いて呼吸を整えると、再びベッドに倒れ込む。木の板枠にワラを敷いて布を張っただけの簡素なベッドの上をクレースが転がる。
「……で、なんなんだ、あれは」
不思議な夢から目覚めたレージュは一人でつぶやき、右手の甲を汗で濡れた額に当てて再び目を閉じる。
クレースを使った後の眠りでこの夢を見ることがたまにある。夢はいつも同じ世界で、ここではないどこかの世界、行ったことも聞いたことも見たこともない世界の映像だ。でも、必ず同じ世界を夢に見る。場面が変わることもあるが、世界はずっと同じようだ。彼女は自分と何か関係があるのだろうか。しかし、彼女の顔は見ることができないし、声も鮮明に聞こえているわけじゃないから、たとえ知っている人間だとしても判別ができない。
それに、最後に自分が叫んだのは彼女の名前だが、自分で叫んだはずなのに、起きてしまうと名前が全く思い出せない。なんとか思いだそうとしても、いつも徒労に終わる。
どこか懐かしいような、安心するような夢だが、言い表せぬ不気味さもはらんでいる。
いったい、あの夢はなんなのだろうか。
関係がありそうなのは古代遺跡だ。かつての天使たちが築いたと言われている古代遺跡は、翼の生えている自分とは無関係ではないだろう。自分が白き翼に拾われたのも古代遺跡だったという。古代遺跡の内部ならば見知らぬ世界というのもうなずけるが、あんなところは見たことない。
「ねえ、クレース。あの夢について何かわかる?」
寝ているときも頭から外さないクレースを拾い上げて語りかけるが、クレースからは何も返ってこなかった。
「……ま、夜の夢の話だ。考えてもしょうがないってことか」
この夢は白き翼の頃から見ていて、夢のことを団員たちにも話したことはあるが、何一つわかることはなかった。
そういえば、白き翼のだんちょーが言っていたな。
『俺がお前の見た夢なんか知るかよ。夜の夢は見るだけにしておけ。どうせ何も出来ねえんだ。だけどよ、昼に語る夢は絶対に叶えろ。こっちはなんとかできるからな。――今、良いこと言ったよな。なあ、レージュ。……おい、お前ら! ちょっと聞け!
いいか、お前ら。夜に見る夢は眺めるだけにしろ。昼に語る夢は必ず叶えろ。夢の世界じゃ俺たちは何もできねえが、現実の世界ならなんとでもなる。夢を叶えたいなら自分にできることを全力でやれ。それが、カッコいい生き様ってもんだ。ガハハ! お前ら、ちゃんと聞いただろうな! ガッハハハハ!』
……なーにがガハハだ、あのオヤジは。
彼の笑う顔を思いだし、レージュは小さく暖かいため息をもらす。
自分にできることを全力でやる。その言葉は白き翼のモットーであり、団長が好んで使う言葉だ。団員たちも倣ってよく使う。レージュもその言葉には共感しており、白詰草の原でヴァンと語り合ったときもその言葉を使った。そして、その信念に基づいて、今ここにこうしているのだ。
ふと、レージュは団長の大きな手を思い出す。あのゴツくて大きな手で乱暴に撫でられるのが、彼女は好きだった。普段はガサツで乱暴だが、自分の純白の翼を綺麗にしてくれる時だけは、優しく拭いてくれるのがとても好きだった。
白き翼のことを思い出すと、ついパルファンに手が伸びる。ポケットから一本取り出し、クレースで火を付けると、暗闇の部屋に小さな明かりが灯った。煙の立ち上るパルファンをくわえ、ゆっくりと煙を吐き出す。
そして、ベッドの横の小さな机の上に置いてある赤いリボンに目をやる。
「常に冷静に、常に冷酷に……。どれほど熱くなっても、頭の中だけは冷やしておく……。だよね、クレース」
今では習慣になっているこのパルファンだが、きっかけは決して軽いものではなかった。白き翼以外ではローワ王しか知らないが、このパルファンは自身への戒めの意味を含んでいるのだ。ビブリオなどには適当に理由を並べ立てて言い逃れるのだが、本当の理由は他にある。自分が過去に犯した過ちを忘れないようにするために、このパルファンを吸い続けているのだ。
もう二度と、あのような惨劇を起こさないためにも。
白き翼の安否は気にしたことはなかった。なぜなら、彼らは必ず生きているからだ。自分とともに成長してきた白き翼が、そう易々とやられるわけがない。
それに、このデビュ砦を奪還した際に彼らが生きている証拠が見つかった。詳しい状況はわからないが、オルテンシアに一人、白き翼の団員がいるようだ。これで、オルテンシアの奪還が格段に楽になる。久しぶりの家族に早く会いたいが、今は目の前の相手に集中しなければならない時だ。
そういえば、ヴァンの手も大きかった。大きい手は、好きだ。なんだか安心する。頼って良いと言ってたから、頼めば、だんちょーのように撫でてくれるだろうか。
心に吹いた郷愁の風をしまい込み、吸い終わったパルファンを、机の上に置いてある大理石の皿に捨てる。そしてベッドから飛び降りると、頭の上のクレースと右目にある十字架の眼帯の位置を直し、自分の隻眼と同じ色の夜天に浮かぶ細い月を眺めた。
戦いの時は刻々と迫ってきている。オルテンシアからは自分たちを討ち滅ぼさんとする大勢の兵隊が、馬に乗って剣を振りかざし、この首を狙いにやってくるのだ。
でも、迎え撃つのは自分一人じゃない。ヴァンがいる。リオンが、オネットが、オンブルが、ビブリオが、スーリがいる。祖国を取り戻すために剣を持って立ち上がる兵士たちがいる。ならば、恐れることは何もない。彼らの力を信じ、懸命に取り組めば、多少の数の差は関係なくなる。
自分にできることを全力でやる。
もう、負けない。こんなところで負けるわけにはいかない。
決意を新たにしたレージュは純白の片翼を勢いよく展開し、一度だけ大きく羽ばたく。抜け落ちた羽が床に落ちると光の粒をなって消え去る。
「さて、ヴァンはまだ起きているのかな」
リオンとの調練の後に自分をここまで運んでくれたのはおそらくヴァンだろう。リオンはそんなことしないし、オネットが運んだならば顎に甲冑の跡が残っているからだ。
運んでくれたお礼がてら顔を見に行ってみよう。それになんだが喉が乾いてきた。調理場に行って何か果物でももらってくるか。それを差し入れてやろう。
ベッドの側の机においてある細長い赤いリボン二本を手に取り、一本を口にくわえてもう一本で髪の半分を結び、くわえていた一本でもう一束結ぶ。しかし、汗で濡れた髪では上手くまとまらず、不格好に広がってしまう。
「……面倒だけど、ちょっと洗おうっと」
レージュは一度リボンを外して革の胴着のポケットにしまうと、あくびをしながら部屋を出ていく。
すでにあの不可解な夢のことは忘れていた。
本文中にある文字化けは演出です。
文章を意図して化けさせており、また、適当に羅列しているだけなので解読してもまともな文章にはなっていません。ご了承ください。
16/09/29 サブタイトル変更「旧:»Šä¸¡ãŒèデ夢」
16/12/27 文章微修正(大筋に変更なし)
17/03/29 文章微修正(大筋に変更なし)
17/07/12 煙草削除(大筋に変更なし)