前へ次へ
88/100

第88話「心乃香の過去」

「斗哉、あの女何なんだよ⁉︎」


 将暉は、開口一番にこう叫んだ。


 昨夜、将暉から凄い量のメッセージがあったが、斗哉は全部未読スルーしていた。内容は読まなくても分かっていたからだ。


 と言うか、今自分は、将暉の文句を聞いている暇はない。


「いきなりグーで殴ってくるって、どーゆーことなんだ⁉︎」


「でも、あれは将暉が悪いじゃん。おれ冷や冷やしたよ。その思ったことすぐ口にしちゃう所、マジ何とかした方がいいって……」


 隣で聞いていた陸が口を挟んだ。


「俺が悪い⁉︎ どー考えだって、あの暴力女が悪いだろ⁉︎」


 心乃香への憤りが凄くて、将暉は興奮状態だった。


「……言っておくけど、今回の件で如月に報復しようとか考えたら、お前でも承知しないからな」


 そう静かに斗哉が凄むので、将暉はううっと縮こまる。


「……分かってるよ。もうあんな女、関わりたくないし!」


「将暉は女に殴られたことが、情けなくてショックで、わめき散らしてるだけだから」


「情けないって、言うな‼︎」


 と陸がフォローを挟んだ。そして更に続ける。


「おれ、思い出したんだけど、如月と小学校の頃、クラス一緒だったことあってさ……確か小三か小四の頃……」


「それが何だよ!」


 将暉は、話の内容が見えてこない、陸の話にイライラしていた。


「うちのクラスに、体のデカイいじめっ子男子がいて、あー、ジャイアンみたいなの。こいつがタチ悪くて、体の小さい奴とか、弱そうな奴とか、大人しそうな奴を日常的にいじめててさ、誰も逆らえなかったんだよね」


「それが、何?」


 将暉のイライラは更に増す。如月絡みのことを、一ミリも聞きたくないと言った感じだ。


「まあ聞けよ。ある日、大人しくて小さな女子が標的にあって……」


「それが、如月だったのか?」


 斗哉も口を挟んだ。一見彼女は大人しく見える。そう言った標的に、なりやすいかもしれない。


「いや。で、休み時間だったから先生もいなかった。みんな見て見ぬふり。おれもそう。ジャイアンに逆らったらどうなるか怖かったし、遂にはその女子、泣き出しちゃって……そん時、ジャイアンに椅子ぶん投げた奴がいたんだ」


 まさか――


「それが如月。……もうそっからはジャイアンと如月の大乱闘だよ。教室中大騒ぎ。流石にみんなで止めようとしたけどさ、もう凄くて。クラスの誰かが先生呼んで来て、やっと収まったんだ」


 流石の斗哉も血の気が引いた。ただ、如月ならやりかねないと思った。隣で聞いていた将暉も、唖然としている。


「別に如月も、体が大きかった訳じゃない。寧ろ小さい方。でもジャイアンに立ち向かってた。後で二人の親、呼び出されてたよ。お互い怪我らしい怪我はなかったんだけど、痛み分けってことで、お互い謝って仲直りしようって先生に言われてさ、ジャイアンも渋々謝ってた……だけど」


 そこまで語って、陸はクククと笑い出した。


「如月はさ……絶対謝らないの。相手の親もいるのに。『私は悪くない』って言ってさ……凄くない? 何で忘れてたんだろ、おれ」


 斗哉は昨日将暉を殴ったことに対して、如月が「謝らない」と言い切ったことを思い出した。そんな子供の頃から強情なのかと、呆れて可笑しくなった。そう言えば、自分に関節技を掛けてきた時もそうだった。


 これは……親御さんの苦労も頷ける。


 将暉は、その陸の話に絶句していた。


「怖っ! ……てか、俺、如月ってもっと無害で大人しいイメージだったわ……斗哉、これで目が覚めただろ?」


「いや、知ってるよ」


「は⁉︎」


「オレも如月に、関節技決められたことあるし」


「おまっ……なんで! 知ってて、如月が良いのか⁉︎ どうかしてるぞ⁉︎」


 斗哉は、将暉のその言いように流石にイラっときた。


「大体な、オレが如月を好きになったのは、半分はお前らのせいなんだからな!」


『は?』


 陸と将暉は、心外と顔を見合わせた。「え? どう言うこと?」と本当に意味が分からないと、陸が質問してきた。


「一年前、如月に告白ドッキリ仕掛けようとしたの、覚えてるか?」



つづく

「面白かった!」「続きが気になる、読みたい!」「今後どうなるの⁉︎」

と思ったら、下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。

面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちで、もちろんかまいません。

ブックマークもいただけると本当に嬉しいです。

何卒よろしくお願いいたします。

前へ次へ目次