第78話「三周目〜彼女のいない世界〜」
神社の銀杏の葉っぱが黄色に染まり、それがいつの間にか散っていき、寒い季節がやって来た。
正月は快晴で気持ちが良かったが、すぐその一週間後、寒さをどこに溜めていたのか、成人の日には近年稀に見る大雪だったのを忘れない。
今年は暖冬になると、自信満々に言っていた天気予報士の得意げな顔を覚えてる。どこが暖冬だ。二月はとんでもない寒さだった。
その為今年の桜の開花は、例年より一週間も遅く、始業式の時まだ桜が残っていた。
斗哉は三年生になっていた。
クラス替えがあり、陸や将暉とはクラスが離れてしまったが、今でも相変わらず連んでいる。
受験の年ということもあり、親や先生たちの目が厳しくなった。何につけても「受験、受験」と嫌になる。
今年のゴールデンウィークも、休んだ気がまったくしない。いつの間にか過ごしやすい季節が過ぎて、じめっとした雨の季節がやって来た。
梅雨は大嫌いだ。早くあけろと斗哉は思っていた。
***
「斗哉、お前テニス部の高岡 渚ふったってマジかよ⁉︎」
急に話を振られ、斗哉は飲んでいたコーラを吹き出した。
「え? その話本当なの⁉︎ ……お前、なに様なの⁉︎」
「何で知ってんだよ、そんなこと!」
「……何で、こんなんがモテるんだよ! 世の中、間違ってる!」
「サッカー部復帰して、株上がったんじゃない? でも受験だし、引退するんだろ? ……てかさ、足、大丈夫なのか?」
陸が心配そうに聞いて来た。がなっていた将暉も、うっと大人しくなる。
「うん。そんな無理してないし。……それに、体動かしてた方が、余計なこと考えなくて済むから……」
その斗哉の態度に、陸と将暉は顔を見合わせた。将暉がいぶかしげに聞いて来る。
「……なんか、あった?」
「いや別に」
そう答えると、斗哉は涼しげにコーラを煽った。
「いや! 何かあったろ? でなきゃ、いつものお前なら、高岡ふらないだろ。……こー言っちゃ何だけど、お前来る者拒まずだったじゃん?」
斗哉はコーラを飲み干すと、そのペットボトルを見つめながら呟いた。
「……オレ、好きな奴いるから」
つづく
「面白かった!」「続きが気になる、読みたい!」「今後どうなるの⁉︎」
と思ったら、下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちで、もちろんかまいません。
ブックマークもいただけると本当に嬉しいです。
何卒よろしくお願いいたします。