前へ次へ
46/100

第46話「三周目〜合流〜」

 オレはしばらく間、如月に関節技を決められたことと、陸と将暉に対する、如月の態度が腹立たし過ぎて、湧き上がってくる怒りをどうすればいいか分からず、授業中もずっと頭にきていた。


 ただその間は、二人に対する罪悪感や悲壮感のようなものから、開放されていたことに気が付いた。


 下校の時間になる頃には、如月に対する怒りも、陸や将暉に対する極度な心配も、不思議と落ち着いていて、とにかく自分のできることをやらなければならないと、冷静になっていた。


 と言っても、自分ができることなんて、あの黒猫を探すことだけなのだ。


***


 オレは一度自宅に帰り鞄を置くと、すぐにあの神社に向かった。何か、あの猫に会うには「条件」のようなものがあるのかもしれないと考えていた。


 オレが神社に着いた時は、日が傾き掛けていて、境内は夕焼け色に染まっていた。カナカナと蝉の鳴き声が響いてる。そう言えば――


 考えながら参道を歩いていると、前方に腕を組み、本堂を睨みつけている人影が目に入った。


 オレはその見知った後ろ姿に驚いて、思わず声を掛けてしまった。


「如月!」


 声を掛けられた少女は、おもむろに振り返った。


***


「何でお前がここに居るんだよ⁉︎」

「話しかけないでって、言ったでしょ!」

「……うっ……告白のことは、本当にごめん……」

「だから、絶対許さないって言ったでしょ!」


 ふんっと如月はそっぽを向く。


「……分かってる。許されたいと思ってるわけじゃない。ただ、あの二人のことで何か知ってることがあるなら、教えて欲しいんだ」

 

「……あんた、私があの二人を消したと本気で思ってるの?」

 

「それは……そうじゃないと思いたい。でもここに居るってことは、何か知ってるんじゃないのか?」


 如月は本堂を見据えながら、静かに答えた。


「あの二人が消えた理由は知らないわ。ただ……思い出したことがある。どうして今まで忘れていたのか分からないけど。五十嵐が消えたと分かった瞬間、思い出した」


「何を?」


 オレは、すがる思いで如月の答えを待った。


「猫のことよ」


 猫と言われ、オレはあの黒猫のことだとすぐ思い当たった。如月も、あの黒猫に会ったことがあるのだ。


***


「如月も、あの黒猫に会ったことがあるのか?」

「一度だけあるわ。確か神社の裏手の道に面したところに階段があった筈なんだけど、いくら探してもないのよね。大体、元々あんな場所に階段なんてなかった気がするし」

「そこって、どこ?」

「だから、敷地裏の道の……ちょっ、ちょっと!」


 オレは如月が話終わる前に、駆け出していた。

 


つづく

「面白かった!」「続きが気になる、読みたい!」「今後どうなるの⁉︎」

と思ったら、下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。

面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちで、もちろんかまいません。

ブックマークもいただけると本当に嬉しいです。

何卒よろしくお願いいたします。

前へ次へ目次