第44話「三周目〜更なる代償〜」
七月十六日(水)
オレの体は、まだ本調子ではなかったが、陸が消えたことは悪い夢か、自分の気のせいで、今日は学校に陸が、当たり前のように存在しているのではないかという、わずかな期待を持ち学校へ向かった。
体が重く、中々ベッドから起き上がれなかった為、オレが学校に到着した頃は、遅刻ギリギリの時間になってしまっていた。
教室に入るともう全員着席しており、朝の出欠確認が始まっていた。「八神、早く席に着け」と担任に注意される。
クラスメイトたちはクスクスと笑っていた。ただこの時、クラスの中で一人だけ笑ってない奴がいた。
オレは慌てて自分の席に着く。出席番号六番の加藤が呼ばれる。自分の出席番号は大分後なので、オレはホッと胸を撫で下ろす。次は七番の「菊池 将暉」が呼ばれる筈だった。そうなる筈だった。
***
(将暉が、居ない……呼ばれない)
オレは、後続のクラスメイトが名前を呼ばれる中、生きた心地がしなかった。
(どうして……)
席数がまた一つ減っている。昨日まで座っていた将暉の席に、別の奴が座っている。「菊池 将暉」が、呼ばれないことを誰も気にしていない。担任さえも。
壮大な嫌がらせだった方がマシだ。非常に悪質なイジメだが、その方がまだマシだと、オレは本気で思っていた。
消えるより、いい――
もし、これも陸が消えたことと同じ「原因」だったらと、オレは気が狂いそうだった。
その時、たまたま目に入った。昨日まで座っていた将暉の席を、じっと睨んでる人間を。
さっきピクリとも笑っていなかった人物、如月だ。間違いない、こいつは「菊池 将暉」のことを、「五十嵐 陸」のことを覚えてる――
***
如月が消失した時、自分以外の誰も如月のことを覚えていなかった。だか今回は、自分以外に如月にも、二人の記憶がある。これがどういうことなのか分からないが、二人の消失に、何かしら関係があるとオレは考えた。
黒猫と会えない以上、もう如月しか手がかりがない。何としても聞き出す。
ただ事を問い詰めるのに、授業間の休みでは短すぎると、オレは昼休みまで静かに待った。
如月は昼休みになると、あっという間に教室から出て行った。そういえば、昼食を教室でとっている如月を見たことがない。
オレは慌てて如月を追いかけた。
***
(図書室……)
如月は図書委員だ。委員会の仕事で来ていたとしても、何らおかしくはないが……
図書受付カウンターを覗き、各棚を歩き回ったが、誰もいない。
(おかしい……絶対図書室に入った筈……)
その時、オレは荷物運びを手伝った時、お茶のペットボトルを如月から受け取ったことを思い出した。
(図書準備室!)
オレは逸る気持ちで、図書準備室に向かった。
つづく
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