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第23話「二周目〜異変〜」

七月七日(月)


 オレは意を決して、学校に登校した。あいつらに何と言われようが、如月に告白しない。どんな仕打ちを受けてもだ。

 

 金曜日学校を休んだので、当然あいつらから抗議のメッセージがくると思っていた。だが、あの朝の将暉のメッセージ以降、何も送られてこなかった。本当に自分の具合が悪いのかと、遠慮したのだろうか? そんな配慮が、できる奴らだと思えないが。


 そうこう考えていて、遅刻ギリギリになってしまった。昇降口で「よ、おはよう!」と声を掛けられた。その声の主は将暉だった。


 オレは如月に告白しない言い訳を、何通りか考えていて身構えたが、不思議なことに、将暉は告白ドッキリのことには触れてこなかった。急いでいたからと、その時は思っていた。


***


 慌てて教室に入ったオレは、不思議な違和感を覚えた。それが何なのか分からない。ただ、七月三日までとは何か違う――


 その違和感にはっきり気が付いたのは、朝、担任が出欠をとった時だ。


 出席番号二十二番の次は二十三番の「如月」なのだが、その如月の名前は呼ばれずに、二十四番の「工藤」が呼ばれる。


 担任が出欠を誤って飛ばすというのは、稀にあることだ。今日はたまたまそういう日なのだろうと思ったが、誰もそのことを指摘しない。担任も如月の出欠をとり直さない――


 その時オレは、教室の違和感の正体に気が付いた。


 「席」が――「席」が一つ足らないのだ。


 オレは慌てて、如月の姿を確認する。


(いない……)


 彼女が始めから、この教室にいないのが当たり前のように――


***


 オレは朝の出欠確認後、一限目が開始される前、慌てて廊下に飛び出し、教室のクラスプレートを確認しようとした。


 自分は七月四日に戻った気でいたが、更に一年前の七月四日に、時間が戻っているのかもと考えたのだ。


 一年の頃は如月と同じクラスではなかったので、彼女が同じクラスじゃなくても不思議はない。


 だがそのクラスプレートを確認し、オレは愕然とした。


――『二ー三』


 やっぱり、祭りの日から十日戻った、七月四日だ。一年前ではない。


 どういうことなんだ? オレは訳が分からなくなった。


***


 オレはからかわるれのを覚悟で、将暉たちに、如月と告白ドッキリについて確認してみた。


 二人は「?」という顔をして、告白ドッキリどころか、如月のことも知らないと言う。


 更に気が触れていると思われるのを覚悟して、クラスの連中や、担任に如月のことを確認しても、将暉たちと同じ反応だった。


 自分は盛大なドッキリを噛まされているのかと不信感が募り、ついには如月の所属していた文芸部、図書委員会にも確認しに行った。


 答えは皆、「如月」なんて知らない――


 そう答えるのだ。オレは狐にでもつままれた心持ちだった。


 ついにオレは、如月の家まで確認しに行く暴挙に出そうになったが、家の場所など分からない。当然生徒名簿に彼女の情報はないし、知っているのは「駅向こう」という情報だけ。

 一緒に帰ったあの雨の日、彼女は途中でバスに乗ってしまった。


 分からない……彼女が、どこに住んでいたのかも。


 それでも気になって、地区の電話帳を調べた。最近は個人情報ということで、電話番号を載せている家は少ないだろうが、病院や商店なら話は別だ。万が一如月の家が何かの「店」なら、ワンチャン情報が得られるかもしれない。


 オレは、数日取り憑かれたように如月の家を調べ、駅向こうを歩いて調べ回ったが、「如月」という家はあるものの、どこも心乃香とは関係ない家だった。



つづく

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