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99:集図坑道・ログボナス

本日は10話更新です。

こちらは6話目です。

「なるほど。こういう構造か」

『ブン。こういう構造です』

 集図坑道・ログボナスに突入した俺が最初に着いたのは、煉瓦が敷き詰められた床がギリギリ見える程度に薄暗い通路だった。

 真正面には眩しいほどに光が射してきている空間があり、そちらにグリーンデイムビーが居る事は間違いないだろう。

 それにしても、この構造……まるでコロシアムか何かのようだな。

 まあ、集図坑道の役割を考えれば、コロシアムのようになっているのは不思議でも何でもないが。


「行くぞ、ティガ」

『ブン。分かりました。トビィ』

 特殊弾『シールド発生』を使用した俺は両足の踵に一本ずつ付けているケットシーテイルを伸ばすと、全力で走り始める。

 両足で地面を蹴り、両足を地面から離し、踵に付けたケットシーテイルだけが地面に触れている状態で、走るのに理想的なフォームで通路を駆けていく。

 そんな通常のゴーレムでは決して出来ない動きは……はっきり言って爽快だ。

 こんな事ならば、もっと早くに二本目のケットシーテイルを作ればよかった。

 武装の数の増加に伴う燃料消費の増加を警戒しての事だったが、失敗だったな。

 まあ、それはそれとしてだ。


「突入して……」

「「「ブブブブブ……」」」

 俺は通路から飛び出す。

 視界に広がるのは乾いた地面と煉瓦で出来た壁を持つ円形の闘技場であり、出入り口は金属製の柵に塞がれたものが一つに、俺が入ってきたものが一つ……いや、背後で何かが動く音がしたから、たぶんそちらも今、柵で塞がれたな。

 そんな闘技場の中心近くの空中には、俺の指定した通りに三体のグリーンデイムビーが居る。

 武装は真鍮製の狙撃銃持ちが二体に、自身の体よりも大きな鉄製の突撃槍を持ったのが一体。


「「「ブン!」」」

 三体のグリーンデイムビーは部屋に進入した俺に気づくと、素早く武器を構える。

 狙撃銃持ちは俺へと銃口を向け、突撃槍持ちは体の大半を槍の陰に隠しながら穂先を俺へと向けている。

 ちなみに、集図坑道・ログボナスで出現する魔物の数や武装だが、数は魔物一体の強さに応じて、武装はランダムであるらしい。

 なので、三体出現ならデイムビーは魔物の種類としての強さは平均的であると判断できるし、銃持ち二体に近接持ち一体ならバランスが良くて厄介と言えるだろう。


「まずは近づかないとな!」

 そんな事を考えつつ、俺はグリーンデイムビーに攻撃するべく、闘技場の地面を蹴って、距離を詰めていく。


「ブーン!」

「ブッ!」

「ブウゥゥ……」

『トビィ』

「分かってる」

 対するグリーンデイムビーたちも戦闘行動を開始。

 突撃槍持ちは空中を蹴るような動作と共に急加速して俺へと迫ってくる。

 狙撃銃持ちの片方は発砲。

 それに対して俺の認識加速が発動。

 だが、弾丸は既に行程の半分を終えている。

 相変わらずの速さだ。

 で、もう一体の狙撃銃持ちはまだ発射しておらず、銃口をしっかりと俺の方へと向けている。


「横に跳んで……」

「「「ブ」」」

 俺は横に跳ぶ事で狙撃銃の弾丸の軌道から逃れ始める。

 しかし、俺の動きを見て突撃槍持ちは進路を変え始め、もう一体の狙撃銃持ちは着地する場所を狙うように発砲している。

 うーん、見事な着地狩りだ。

 だが、これならばまだ避けられる。


「更に跳ぶ」

「「ブ!?」」

「ブ……」

 俺はケットシーテイルを動かし、両方を地面から離す事で即時着地。

 そして、直ぐさま地面を蹴って急加速。

 二発目の弾丸の軌道上からも逃れる。

 だが、突撃槍持ちはそんな俺の動きにすら追随し、まだ俺へと迫ってきている。

 しかしだ。


「ブン!」

「近接攻撃だけならどうとでもなる」

 俺は着地と同時に最低限の動作によって、紙一重で突撃槍を躱し、その上で足首を回転させることで素早く突撃槍持ちの背後に回り込む。


「うおらあっ!?」

「ブギュルッ!?」

 そして、左腕を紐状にし、シャープネイルをスパイクとして突撃槍持ちに絡ませた上で、右のナックルダスターで殴打。

 炎と闇が飛び散るエフェクトと共に突撃槍持ちのシールドゲージを削り取る。


「ブン! ブッ!?」

「もう一発!」

 突撃槍持ちは俺への反撃として素早く横薙ぎを仕掛けてくる。

 俺は突撃槍自体はしゃがむ事で、紐を払われるのは素早く左腕の繋がりを組むことによって相手の攻撃を回避。

 その上で更に攻撃。

 ダメージを重ねると同時に、突撃槍持ちを怯ませる。


「そろそろ……だろっ!」

「ブギャウッ!?」

「「ブン!?」」

 で、このタイミングで俺の位置と突撃槍持ちの位置を交換。

 そこへ狙撃銃持ちの弾丸の片方が到達し、俺の攻撃よりも多くのシールドゲージを削り取る。

 もう一体の狙撃銃持ちの攻撃は俺に直撃したが、こちらが鉄で相手が真鍮だからだろう。

 かつてのように体が砕け散ることは勿論なく、シールドが明確に削れる程度で済んだ。


「どっせい!」

「ブギュウゥ……」

 突撃槍持ちの頭に俺の拳が入ってシールドゲージがなくなり、直後に体に食い込ませたシャープネイルによって突撃槍持ちの体が引き裂かれ、それがトドメとなった。


「ようし、まずは一体。これなら十分行けるな」

「「ブブブ……」」

『トビィ、油断は禁物ですよ。デイムビーには一発逆転の切り札もあるのですから』

 突撃槍持ちの死体が消えると同時に俺は狙撃銃持ちに向かって駆け出す。

 狙撃銃持ちは既に二手に分かれて行動を開始しており、どちらかが攻撃されたタイミングでもう片方が死角から狙撃できる体制を作っているようだ。

 だがそうと分かっているならば、対応のしようは幾らでもある。


「言われなくても分かってる!」

「「ブン!!」」

 俺は左右に素早くステップを刻みながら狙撃銃持ちに接近。

 相手の弾丸を避けながら距離を詰め、左腕で動きを制限し、右で殴るという先ほどと同じ動きをする。


「で、お前らは見えない場所にいる相手を撃てるか?」

「「!?」」

 違うのは特殊弾『煙幕発生』の使用によって、攻撃していない方からの射線を切った事。

 これによって誤射を恐れたグリーンデイムビーは攻撃を行えなくなり、切り札の針もやってくると分かっていれば、針の位置に注意を払う事で容易に避けられた。

 こうなれば先ほどよりも楽な一対一を二度繰り返すのみ。

 という訳でだ。


「ブ……ブウゥン……」

「うし、倒せたな」

『お見事です。トビィ』

 無事にグリーンデイムビー三体を撃破する事に成功した。


≪設計図:デイムビーレッグを回収しました≫

≪生物系マテリアル:甲殻を1個回収しました≫

≪生物系マテリアル:甲殻を1個回収しました≫

『ちなみにですが、一度の挑戦で手に入る設計図は一枚までになってます』

「まあ、でないとサーディンとか手に入る設計図の数がヤバそうだしな。いや、生物系マテリアル回収の為なら悪用できる仕様でもあるか?」

 手に入った設計図はデイムビーレッグ。

 脚か……ここまで揃ったなら、一度全身をデイムビーにしてみるのもありかもしれないな。


≪集図坑道・ログボナスからの脱出に成功しました≫

≪インベントリのアイテムをラボの倉庫に移送します≫

 その後、俺は入ってきたのとは別の通路に移動。

 その先の脱出ポッドに乗って、俺は集図坑道・ログボナスから脱出。


「じゃ、今日の配信は此処までだ」

『ブン。分かりました』

 そして配信も終了し、ログアウトした。

 意外と多くの視聴者に見られていたようだが……まあ、今後も気にせず垂れ流しでいこう。

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