95:ブルーツリホッパ
本日は10話更新。
こちらは2話目です。
「バッボオオォォン!」
「攻撃をする暇はないな、こりゃあ」
ドローンホーネットが上空から敵を探し始める。
だがその間も俺に向けて矢が撃ち込まれ、砲弾の雨が降り注ぐ。
よって俺はこの部屋にいるグリーンバーナコに対する攻撃を中断して、回避に専念し始める。
「ちっ、俺が移動しているせいか攻撃もばらけ始めてる」
しかし……厳しい。
どうやって俺の位置を他の魔物に教えているのかは分からないが、俺が部屋の中を駆け回り始めると同時に撃ち込まれる矢も降り注ぐ砲弾も集弾性が一気に悪くなった。
一方向から撃ち込まれている場合ならば、集弾性の悪化は避ける側にとって有利に働くが、今のように全方位から数撃てば当たると言わんばかりに撃ち込まれている状況では、回避行動を取って移動した先にも既に攻撃が撃ち込まれていると言う厄介な状態を生み出すことになる。
「矢は諦める。絶対に避け切らないといけないのはバーナコの砲撃だ」
よって俺は割り切る。
矢はシールドと振る両腕に偶然当たって弾くに任せる。
そして砲撃だけはしっかりと砲弾を観測して避けていく。
矢は一発でシールドを破壊できず、燃料消費は激しいし補い切れるほどではないがヒールバンテージの効果で時間稼ぎができるし、真鍮製の矢も青銅製の矢も当たれば特に抵抗なく弾けるからだ。
だが砲撃は拙い。
直撃すればシールドは一撃で消し飛ぶだろうし、爆風でも被害は十分だし、着弾点には暫くダメージゾーンが残るようだし、砲弾の破片は触れた相手にしばらく継続ダメージを与えてくるという、殺意の塊のようなものだからだ。
なので、俺は両腕を振り回して矢を弾きつつ、前後左右にステップを踏み、転がり、冷静に砲弾を避けていく。
『ブン! 見つけました! ブルーツリホッパです!』
「よくやった!」
と、ここでドローンホーネットを操るティガが草むらに隠れていた青い甲殻の魔物を見つけ出した。
体長は30センチほど、魚の骨とパラボラアンテナを組み合わせたような頭をしており、草むらの中でじっとしていた。
名前はブルーツリホッパ。
だが、その見た目で思い浮かぶ生物の名前は……ツノゼミと言う不思議な頭部をもつ昆虫だ。
うん、間違いなく、こいつこそが俺の位置を他の魔物に教えている個体だろう。
『投下します!』
ティガがグレネードを投下。
そして爆発。
グレネードはブルーツリホッパに直撃し、そのシールドを消し飛ばした。
だが、徹底して隠密と言うか、俺の位置を教えることに専念しているためか、ブルーツリホッパは鳴き声一つ上げない。
「ティガ! 直接攻撃で……っ!?」
『ブ……ブーン!』
と、ここで遂にシールドが破られ、その直後に数本の矢が俺の体に突き刺さる。
俺は直ぐに新たなシールドを展開するが、シールドがない間に突き刺さった矢はそのままだ。
なので俺は地面を転がって矢をへし折り、攻撃を避けながら、抜ける範囲で矢を抜いていく。
しかし、矢を抜くという動作のために矢の迎撃をする手数が減り、先ほどよりもシールドの減る速度が速まってしまう。
特殊弾『煙幕発生』も使ってみたが、ブルーツリホッパが視覚以外でこちらを認識しているためか、まるで効果がない。
特殊弾『シールド発生』の数は残り一だし、本格的に拙くなってきたな。
『やって……やりますっ!』
「ツッ、ホッパアアァァ!」
しかし、その間に急降下したドローンホーネットがブルーツリホッパに襲い掛かり、尾の針を刺して毒状態を与えた上で噛みつく。
けれど流石のブルーツリホッパでも直接攻撃されれば反撃を仕掛けるらしい。
アンテナのような頭を巧みに動かして、ドローンホーネットを攻撃してくる。
「ホパアァッ……」
『ビイイィィ……ドローンホーネット破損です』
結果は相打ち。
ブルーツリホッパの頭によってドローンホーネットの胴体が破壊されて機能停止し、ドローンホーネットの口がブルーツリホッパの首を半ばまで断ち切り、毒によってトドメ。
ブルーツリホッパの姿もドローンホーネットも消えてなくなる。
「よくやったティガ。これで……」
なんにせよ、これでブルーツリホッパは倒された。
となれば攻撃の雨も止むはずだが……。
「バッボオオォォン!」
「しまっ!?」
『トビィ!?』
ここで砲撃が直撃。
シールドが全損し、俺は最後の特殊弾『シールド発生』を使用してシールドを再展開。
で……。
「止まない……いや、始まるのにラグがあったように、終わるのにもラグがあるのか!?」
左腕のパンプキンアームL、背中のドローンネスト-ホーネット、腰のハードバトン、右上腕のヒールバンテージがシールドがなかった一瞬の間にズタボロにされて機能停止していることを認識しつつ飛び跳ねて、続く攻撃を避けていく。
と言うか、よく考えなくても、ラグ以前に既に飛ばされた攻撃が消えるはずがなかった。
なので俺は見えなくなる前に仕留めると言わんばかりに激しくなっている攻撃をギリギリで避けていく。
「ぜぇぜぇ……ギリギリにもほどがある……」
『トビィ。シールドはもうありません。気を付けてください』
「バアアッ……」
結果、俺の最後のシールドは吹き飛んだ。
あまりにも矢が多すぎたのだ。
しかし、それだけで済んだとも言える。
こちらへと他の島や沼から向かっていた魔物たちは俺の姿を見失ったかのように動きを止め、元居た島へと戻っていったし、攻撃も無事に止んだ。
これで残すは元からこの島に居たグリーンバーナコ一体だ。
「とりあえずお前はぶっ飛ばす」
「バコン!?」
俺はグリーンバーナコを殴る。
グリーンバーナコは反撃の砲撃を行うが、グリーンバーナコ一体の攻撃ならば避けるのは容易であり、俺は一方的に殴り続ける。
グリーンバーナコの岩のような体を殴り続け、シールドを削り、破り、岩のような体を打ち砕いていく。
「これで……トドメだ!」
「バゴォ……」
そして俺の右拳がグリーンバーナコの体に深く突き刺さり、トドメとなった。
≪生物系マテリアル:甲殻を1個回収しました≫
≪設計図:アドオン『広域攻撃耐性』を回収しました≫
「はぁっ……これ以上の探索は無理だな」
『ブン。ティガもそう思います』
報酬が手に入る。
ブルーツリホッパの報酬は残念だが、グリーンバーナコの報酬はアドオンで美味しいな。
で、これ以上の探索は無理だな。
もしもまたツリホッパに発見されたら、今度は絶対に助からない。
俺はインベントリからイグジッターを取り出すと、銃口を自分に向ける。
「脱出だ」
『ブン』
そして特殊弾『緊急脱出弾』を発動。
俺は第三坑道・アルメコウから脱出した。
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