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92:拳銃ゴブリンたち

「ブッ」

 グレネードが爆発した。

 が、ブルーオークは盾に体を隠すことで、ブルーゴブリンたちもオークの陰に避難することで、グレネードの爆発から身を隠しており、ダメージは一切入っていない。

 しかしそれでいい。

 俺はゴブリンたちに撃たれる事なく部屋の中へ入り、敵に接近する事が出来た。


「「「ヂュヂュアッ!」」」

『トビィ! 来ます!』

「分かってる!」

 そして、支障なく接近できるのもここまで。

 オークの陰から飛び出したゴブリンたちが、それぞれの拳銃の銃口を俺に向け、引き金を引く。


「「「ヂュ……」」」

「こいつは……」

 さて、実は一口に拳銃と言っても、その実態は様々だ。

 原始的な拳銃ならフリントロックのような単発式の拳銃。

 少し進めば、リボルバーのように連射が出来るもの。

 さらに進めばオートマチックのようにさらに連射性能が上がったもの。

 もっと進めば、マシンピストルと呼ばれるような、もはや拳銃サイズの機関銃と言えるようなものだってある。

 そして、拳銃と言う武器の強化項目には連射性能以外もある。

 この事実を踏まえて、ゴブリンたちの攻撃に合わせて認識加速が始まった俺の視界に映っているものを見てみよう。


「ヂュ……」

『ブーン、どうやら持っている拳銃がそれぞれ大きく異なるようです』

 まず、俺の正面に近い位置に居たゴブリンの拳銃はマシンピストルであり、豆粒のような大きさの銃弾ではあるが、既に10発以上の銃弾が放たれ、扇状にばら撒かれている。

 一発一発の威力は低いだろうが、侵食属性を持つ事によってダメージの最低保証のようなものが発生していた場合、被弾時のダメージは洒落にならないだろう。


 次に左手、こちらのゴブリンの拳銃はマグナムと呼ばれるような大口径のものであり、他の銃弾よりも大型の銃弾がこちらに迫っている。

 威力については語るまでもないだろう。


 最後に右手、こちらのゴブリンの拳銃は、本体は普通のオートマチックのようだが、サプレッサーと思しきものが銃口に付いており、その効果によってか、放たれた弾丸は既に俺のすぐ近くにまで迫ってきている。

 恐らくだが、サプレッサー着用による隠密性の向上を、認識加速発動の遅れと言う形で表現したのだろう。


「厄介だな!」

 そこまで理解したところで、俺は右に跳躍。

 同時に左腕を五本の紐にばらけさせる。

 そうすることによって、マグナムは回避、マシンピストルは紐状の腕を操る事によって可能な限り弾き、サプレッサーのはナックルダスターで殴って弾く。


「ブゴオッ!」

 当然ながら、これだけの動きをすれば隙も出来る。

 故に着地の瞬間を狙うようにオークがハルバードを突き出してくる。

 タイミングは完璧と言ってよく、俺に避ける手段はない。

 だがしかしだ。


「ブゴッ!?」

「作っておいて良かった特殊弾『睡眠』ってな」

 そのオークの側頭部を、俺のハードバトンが叩き、発動した特殊弾『睡眠』の効果によって意識を奪い取る。

 なお、ハードバトンについては、紐状にした左腕の一本で掴み、相手の視界の外から回り込むように動かすことで、オークに気づかれる事なく一撃を見舞っている。


「でだ。デカブツが眠ったなら……」

「「「ヂュッ!?」」」

 そうしてオークが眠り、崩れ落ち、倒れていく最中、俺はさらに横へと飛び、転がり、ゴブリンたちが放つ弾を避け続ける。

 すると、ゴブリンたちの拳銃は弾切れを起こしたらしく、ゴブリンたちの動きが一斉に止まる。


「引き寄せて……」

「ヂュッ!?」

 俺は左腕を伸ばし、マシンピストルを持つゴブリンの体を絡め取り、俺の近くにまで一気に引き寄せる。

 そして、宙を舞っている間に拘束を解除し、左腕を腕の形に戻すと同時にドリル回転を開始。


「殴って……」

「ヂュゴッ!?」

 宙に居るまま俺の目の前にまで来たゴブリンの腹を右アッパーで叩き、滞空時間を延長。


「貫く!」

「ーーー!?」

 トドメに左腕を槍のように突き出し、ゴブリンの頭を突き、シールドを破壊し、そのまま頭をぶち抜いた。

 これでまずは一体。


「「ヂュアアッ!」」

 残りの二体のゴブリンがリロードを終え、再び俺へと発砲してくる。

 だが残念だったな。

 既にお前らの拳銃がどのようなものか分かっているし、オークと言う優秀な前衛も居ない。

 であればだ。


「単発に近い拳銃なら手元を見てれば避けれるんだよ」

「「ヂュアッ!?」」

 俺は普通に拳銃の弾丸を避け、ゴブリンを普通に殴り、始末をつけていく。

 サプレッサーが付いていて認識加速が入らなかろうが、ゴブリンが引き金を引く動作までは隠せないのだから、それを見れば問題ない。

 マグナムの破壊力は脅威かもしれないが、反動が大きい分だけ発射間隔の空きが長く、避けるのは容易であるので問題ない。

 そういう事だ。


「さて、これで残すはオークだけだな」

『ブン。そうですね』

「ZZZ……ZZZ……」

 そうして三体のゴブリンを倒せば、残りオーク一体。

 ブルーオークはうつぶせに近い形で眠っているが、防具や筋肉の都合なのか、尻を突き出すような姿勢にもなっている。

 んー……何時ブルーレイヴンが来てもおかしくは無いし、急ぐか。


『トビィ? その、どうして左腕をドリルのように……』

 という訳で、俺は左腕をドリルのように回転させ始める。

 周囲に他の敵が居なくて、ある程度の安全が確保されていることもあり、普段よりも回転数は増しているし、それに伴って音も甲高くなっている。


「どうしてってそりゃあ……」

 そして俺は狙いを澄まして……。


「こうするためだ!」

 オークの尻にドリルを突き刺す。


「ーーーーーーーーー!?」

 目覚めたオークがよく分からない声を上げるが、それは別にどうでもいい。

 重要なのは内臓をドリルによって乱雑にかき乱されるという、異常極まりない攻撃によって、オークのシールドゲージが恐ろしい勢いで減っていっている事だ。

 俺はゲージの減りを見ながら右の拳を握る。


「すぅ……ふんっ!」

「!”#$%&’()=~|!?」

 そしてゲージが十分に減ったところでオークの体内にあるシャープネイルの向きと位置を変えることによってオークの内臓を掴む。

 右の拳でオークの尻を全力で殴り飛ばしつつ、左腕も全力で引く。

 結果、オークは情けない声を上げ、肛門から内臓を溢れさせつつ吹き飛び、数度の痙攣をした後に消滅した。


「よし、一撃で倒せたな」

『ブ、ブン。二度目ですが、やはりこの攻撃はどうかと思いますよ。トビィ……』

≪設計図:マシンピストルを回収しました≫

≪生物系マテリアル:肉・侵食を1個回収しました≫

≪生物系マテリアル:骨・侵食を1個回収しました≫

≪生物系マテリアル:骨・侵食を1個回収しました≫

 無事に倒せたのだから問題はないだろう。

 俺はそう思いつつ、部屋の中を見回す。

 そして、次のフロアに繋がるエレベーターを見つけた。

04/22誤字訂正

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