84:ブルーリリィ
本日は二話更新になります。
こちらは二話目です。
「じゃ、やっていくか」
『ブン、お気をつけて』
残る敵はブルーリリィ3体。
俺は通路の角から飛び出すと、そのまま部屋の中に向かって素早く移動していく。
「「「リリリリリ……」」」
「来たか」
そして、部屋の中に入ると同時に、俺の事を待ち構えていたであろうブルーリリィたちが一斉射撃を開始。
認識加速が発動し、三発ワンセットの炎を纏った弾丸が幾つも俺の方へと飛んでくるのが見えた。
この弾丸の群れをまともに受けたならば、現状の俺の構成とシールドではあっという間に削り切られて、そのまま全身を撃ち抜かれてしまう事だろう。
「まずは横へ跳んで……」
俺はまず横へ跳んだ。
ブルーリリィたちの射撃の精度は高い。
が、射撃精度が高いのとブルーリリィたちの数が足りないことが合わさって、ブルーリリィたちの一斉射撃は弾幕にはなっていない。
だから横に跳ぶ事で、射撃の範囲外に出られると俺は判断し、それは正しかった。
俺の居た場所を十発以上の弾丸が通り過ぎていく。
「「「リリリリリ……」」」
「反応が早いな」
しかし、流石は射撃しかできない魔物と言うべきか。
俺が横に跳ぶと同時にブルーリリィたちは既に軌道の修正を始めている。
しかも、一体は俺の現在位置へと正確に狙いをつけているが、残りの二体は俺の進行方向の前後……加速しても減速しても誰かの攻撃が当たるように差をつけている。
見事な偏差射撃の構えと言うほかない。
「グレは?」
「「「リリリリリ……」」」
俺はグレネードをブルーリリィたちの方へと投げてみる。
一体のブルーリリィが反応し、空中のグレネードを撃ち続けて、自分たちにグレネードが届かないように離そうとし……グレネードは空中で爆発してしまった。
つまり、多少弾幕の密度を下げる程度で終わってしまった。
「仕方がない」
『トビィ?』
俺は左腕のパンプキンアームLを五本の蔓にバラけさせつつ、前方に向かって飛びだす。
そして、飛来してくる弾丸の中で俺に命中しそうなものを選び出し、選んだ弾丸の軌道上に蔓の先端にあるシャープネイルを置いて……。
「うおらぁ!」
逸らす。
『トビィ!?』
「「「リリリリリ……」」」
炎を纏った弾丸が、シャープネイルと蔓状のパンプキンアームLを道筋として、他の部位にはかすりもせずに、俺の後方へと消えていく。
「十分痛いが……行ける!」
もちろんただでは済まない。
直撃した場合に比べれば微々たるものであるが、それでもダメージは受けている。
しかし、この程度のダメージならば、シールドによってなかった事に出来る。
「さあ、距離が詰まってきたぞ」
「「「リリリリリ……」」」
そして、俺は自分に当たる弾を逸らしながら前に出る。
左右にステップを刻み、自分に向かってくる弾の数を減らし、それでもなお直撃コースにある弾は逸らして防ぐ。
そうして、後二歩で殴れる位置にまで来たところで……。
「「「リリィ!?」」」
「あ、弾切れあったのか。少し失敗したな」
『ブーン……ワンマガジン60発と言うところでしょうか。そう言うのが正しいのかは分かりませんが』
ブルーリリィから弾が発射されるのが止まった。
同時に子房の部分が鮮やかに発光。
どうやらブルーリリィの射撃には連続で打てる弾の数に限りはあり、それを超えてしまったようだ。
で、三体が同時にリロードに入ったという事はだ。
「まあいい。殴り放題だ」
『ブン。そうですね』
「「「リリィ!?」」」
短時間ではあるがこちらが一方的に攻撃できるという事だ。
という訳で、カウント2のグレネードをブルーリリィ三体の真ん中に素早く投げ込んで爆破。
その上で両腕を振り回しながら突入して殴り、地面についている方の足を軸に回転して蹴り飛ばし、引き抜き、踏み潰し、暴れまわる。
「「「リ、リリー!」」」
「あっ、流石にそこまで甘くはないか」
ただ、流石に全くの無抵抗ではないらしい。
ブルーリリィたちは花弁の中心で火を燃え上がらせると、その炎を俺に叩きつけようとしてくる。
だが悲しいかな。
ブルーリリィたちの体の構造で有効打を出すためには、俺の方を向き、茎を反らし、それから花を叩きつけるという三工程が必要。
そして、俺はそんな分かり易い動きを見逃したりはしない。
「何の問題もないがな」
「「「リリー!」」」
俺はあっさりとブルーリリィの攻撃を回避。
それどころか攻撃によって集まったブルーリリィたちの花をまとめて叩き潰す。
そうして遂にシールドがなくなり……三本に分けたパンプキンアームLの振り下ろしによって、トドメを刺した。
≪生物系マテリアル:肉・火炎を1個回収しました≫
≪設計図:リリィライフルアームRを回収しました≫
≪生物系マテリアル:草・火炎を1個回収しました≫
≪設計図:特殊弾『火炎弾』を回収しました≫
「よし、無事撃破」
『ブン。お疲れ様です。トビィ』
倒した報酬が入ってくる。
しかし……うん、こうして殴り合うと、一時強化の有無と言うのがよく分かるな。
第二坑道・ケンカラシのフロア6で戦ったブルーサハギンは電撃属性が弱点であった可能性もあるが、もっと簡単に倒せた。
だが、今戦ったブルーリリィは一方的に殴れる状態に持ち込んでもなお、多少の時間がかかった。
それぞれのシールドゲージの量、耐性、生物としての強さ、色々と差はあるだろうが……それを加味してもなお、今の戦闘では時間がかかったと思う。
そして、恐らくだが、その差こそが一時強化の差という事になるのだろう。
まあ、一時強化の認知度もあって口には出さないわけだが。
「さて次の部屋だな」
『ブン。そうですね』
俺はヒールバンテージでシールドを回復しつつ、次の部屋へと向かった。