83:鉄のマテリアルタワー
本日は二話更新になります。
こちらは一話目です。
「さて次の部屋だな」
『ブン。そうですね』
さて、第三坑道のフロア1を歩くこと暫く。
俺は次の部屋に着いた。
という訳で、先ほどと同様にドローンホーネットを使って部屋の中を確認。
緋炭石と黒い鉱石で出来たマテリアルタワーだけがあるのを確かめてから、部屋の中に入る。
「緋炭石はいつも通りとして、これは……鉄か」
『ブン。その通りです』
新しいマテリアルタワーはどうやら鉄のマテリアルタワーのようだ。
鉄か……第二坑道・ケンカラシでも時々出るそうだが、それなりに深いフロアまで行かないと出ないとも聞いている。
が、第三坑道・アルメコウではフロア1から出現するようだ。
なお、回数制限は3回で時間は20秒だった。
緋炭石も同様。
「じゃ、とりあえずは普通に壊してみるか」
『ブン。周囲を警戒していますね』
壊し方は……まあ、シンプルに真鍮・電撃で出来ているナックルダスターとシャープネイルで殴りつけるだけだ。
ただ、シャープネイルを寸鉄のように扱う、一発一発にきちんと力を込めて殴ると言った工夫は怠らないようにする。
また、デイムビーボディの針はこれからどんな状況が待っているか分からないので、今回は使わないでおく。
結果は?
≪鉱石系マテリアル:鉄・火炎を32個回収しました≫
≪特定物質:緋炭石を108個回収しました≫
「おー、大量だなぁ……後、鉄が堅い」
『ブン。この量こそが第三坑道・アルメコウに人々が挑む理由です。それと、鉄が堅いのは当然だと思います』
驚くような量が手に入った。
この部屋だけで、イグジッターと緊急脱出弾を作れるレベルの量だ。
これは俺が使っているパーツと武装の性能が上がった事もあるのだろうが、それ以上に第三坑道・アルメコウと言う場所が大量の緋炭石を入手できるようになっているからなのだろう。
つまり、この時点で脱出しても損はほぼないということであるが……もちろんまだまだ探索は続ける。
此処で退く意味は無いしな。
「まあ、鉄は真鍮の上だろうしな」
『ブン。そういう事ですね』
俺は通路に入り、次の部屋へと向かい……次はレコードボックスか。
では開封。
≪設計図:ボーラ≫
≪設計図:ハルバード≫
≪設計図:特殊弾『煙幕発生』≫
「ふむ……」
ボーラは投擲武器の一種だったな。
紐の両端に重りを付け。当たった相手にダメージを与えつつ拘束も出来る優れものだ。
ハルバードはいわゆる斧槍。
武器の時点で俺にとっては選ぶ価値無し。
特殊弾『煙幕発生』は……スモークを焚けるという事か?
対応している設計図があるかは分からないが、使えればかなり便利そうだな。
≪設計図:特殊弾『煙幕発生』を回収しました≫
「これでよし」
『使えるといいですね。トビィ』
「だな。煙幕は投擲武器と一緒で使い道が多い」
という訳で特殊弾『煙幕発生』を回収。
対応している設計図があれば、大いに役立ってくれることだろう。
ではさらに次の部屋へ。
「さて次の部屋は……」
「グルルル……」
「「「……」」」
俺はドローンホーネットを使って次の部屋の中の様子を見る。
部屋の中に動くものは一つだけ。
口から火の粉を漏らしているブルーハウンドだ。
だが、俺の身長ほどもある巨大な植物が三本、部屋の中心にまとめて植わっている。
「新しい植物型の魔物か」
俺は花の名前にはそれほど詳しくはない。
しかし、それでも分かる範囲で言える事はある。
まず、各花は一体につき一つの花をつけているが、その形状はユリの花に似ていると思う。
花弁の色は青で、花の中心からは火の粉が散っている。
気になるのは子房辺りの膨らみ。
何と言うか、花から放てるような何かを大量に抱え込んでいますと言っているような見た目だ。
「まあ、何かを撃ちこんでくるんだろうな。動き回る能力がなさそうな感じだし」
ただ、しっかりとした根を張っているように見えるので、その場から動く可能性は低いだろう。
逆に言えば、何かしらの射撃能力を有している可能性が高いともいえる。
「ティガ」
『ブン。犬はブルーハウンドです。花の方はブルーリリィですね』
「分かった」
俺はホーネットドローンを戻すと同時に、ティガに聞いて名前を確認。
さてどうするか、要するにこの先の部屋は一体の猟犬と三体の射撃手が待ち構えている部屋なわけだ。
うーん、動き回れるのがブルーハウンドだけならば、グレネードで釣りだして先に始末。
ブルーリリィも部屋の入り口から投擲によって片づけるのがよさそうか。
固定砲台はその場から動けない代わりに、火力が圧倒的であるというのが定石だしな。
「じゃ、仕掛けていくぞ」
『ブン』
「バウッ!」
「「「リリリリリ……」」」
という訳で俺は部屋の入り口から飛び出すとグレネードを投擲。
魔物たちが俺に気が付いたのを認識した上で素早く通路に戻る。
で、魔物たちも俺のそんな動きをただ見ているわけがなく、ブルーハウンドは素早くこちらに向かってくるし、ブルーリリィたちは花の中心から真っ赤に燃え盛る弾丸をこちらに向かって射出する。
「三点バースト……アサルトライフルか何かかよ……」
ブルーリリィの攻撃に反応して認識加速が発動。
どうやらブルーリリィが放っているのは炎を纏っている金属製の種子であり、三点バーストの要領で一度に三発ずつ撃てるようだ。
尤も、射撃間隔が短いし、速度もかなりのものであるから、認識加速無しでは三つの弾は一つの線にしか見えないし、機関銃のように弾をばらまいているようにしか見えないだろうが。
「ま、それはそれとしてだ」
「バウッ」
さて、そうしてブルーリリィの攻撃を観察している間に俺は通路へと完全に引っ込み、ブルーリリィの攻撃が届かない位置にまで退いた。
それはつまり曲がり角を過ぎたという事であり、俺を追いかけてきているブルーハウンドもまた通路を曲がる。
「いらっしゃーい」
「ギャウッ!?」
当然、絶好の攻撃の機会なので殴った。
そして、パンプキンアームLを紐状にして絡ませ、引き寄せ、更に殴った。
全力で殴りつけ……ブルーハウンドを始末した。
牙に火炎属性を纏っていたようだが、まあ、一対一ならこんなものだろう。
「さて、ここからが本番だな」
『ブン。そうですね』
それではブルーリリィの攻略に移るとしよう。