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81:パイプライン坑道

「ふむふむ。なるほどな」

『何か分かりましたか?』

「まあ、多少はな」

 第三坑道・アルメコウのフロア1は普通の坑道の壁面、天井、通路に大量のパイプを引くと共に、そのパイプの一部から火が吹き上がっていると言う空間だった。

 属性付きと言う異常はあれど、フロア1という事もあってか斜面や段差の類は見られず、足元の細いパイプに足を引っかけない限りは移動には支障ないだろう。

 ただ、懸念事項もある。

 吹き上がっている火はきちんと熱を有しており、生身で触れれば勿論のこと、ゴーレムでも長時間焙られれば、相応のダメージを負う事になるだろう。

 また、パイプを軽く叩いた感じ、内部には可燃性ガスあるいは可燃性の油……恐らくは石油がきちんと流れており、しかもマテリアルタワーや魔物と同じで壊れる物体の感じもあった。

 となると……俺自身あるいは魔物の攻撃によってパイプが破壊され、そこから火が噴き出すくらいは予想しておくべきだろう。


「しかし、北でも南でも季節によってはエネルギー不足による死人が出ているこのご時世にこれだけの火を無駄に焚くか……現実だったら総スカンを食らいそうな光景だな」

『ブブ? 北でも南でも? ああ、局地的な意味ですか?』

「少しずれてるな。ま、詳しく言う気はない」

 さて、そろそろ探索を始めよう。

 俺は特殊弾『シールド発生』を一発使って、自分にシールドを発生。

 燃料の表記の下に新たなゲージが出現する。

 それから、俺は足元のパイプに足を引っかけたり、踏み潰したりしないように注意を払いつつ通路を移動していく。

 で、移動していくとやがて一つの部屋が見えた。


「ティガ」

『ブン』

 さて、未だにクリア報告者が居ない坑道で、こちらはソロで、けれど手元にはドローンホーネットと言う便利な武装がある。

 であれば、きちんと活用しながら先に進むとしよう。


『では行ってきます』

「ああ」

 俺は通路の角に身を隠し、ティガの操るドローンホーネットが部屋の中へと単騎で飛び込む。

 そして、ドローンホーネットの視界を介して俺は部屋の中を確認するわけだが……。


「なんだあれ……」

『ブブ。なんだと言われても……ブルーパンプキンと言う魔物としか答えられませんね。トビィの求めている答えはそういう事ではないのでしょうけど』

「パンプキーン」

 部屋の中には皮が真っ青のカボチャを頭とした魔物が居た。

 それの名前はティガ曰くブルーパンプキン。

 顔は先述の通りカボチャだが、ハロウィンのカボチャのように目と口が掘られており、フロアの属性に合わせてか目と口からは真っ赤な炎が漏れている。

 体は複数本の蔓を束ねることで出来ていて、胴体と両腕がある。

 で、脚は幽霊のように、あるいは風になびく包帯のようになっていて、宙に浮いている。

 身長は……俺と同じくらいだが、宙に浮いているので、2メートルくらいあるようにも見えるな。


「パパパ、パパパ、パンプキインキーン」

「ああ、俺が聞きたいのはそういう事じゃない」

 まあ、此処までは問題ない。

 カボチャを基にした魔物がカボチャを顔にするのは良くあることだし、植物系の魔物の中には空を飛べるものが居る事もゲームならばそう珍しくもない。

 俺が使っているパンプキンアームLを見れば、蔓を体にしていることも想像の範疇内だ。

 では何が問題かと言えばだ。


「なんで踊ってんだ。あのカボチャ」

『ブブ。分かりません』

「パープウゥ、パンプキーン、パッパパンプキーン」

 何故かブルーパンプキンが部屋の中で一人踊っているのだ。

 謎の鳴き声に伴うリズムに合わせて、両腕を動かし、頭を揺らし、体全体を弾ませ、明らかに踊っているのだ。

 そう、踊っているのである。


「とりあえずドローンは戻してだ」

『ブン。そうですね』

 俺はホーネットドローンを戻す。

 で、今見たものを思い返すわけだが……。


「なんで踊ってたんだ?」

『さあ?』

「『……』」

 うん、何故踊っていたかは考えても仕方がなさそうだ。

 仮に意味があったとしても、今の俺とティガでは知識が足りない。

 話を切り替えよう。


「さて、相手はブルーパンプキン一体。という事は、相応の警戒をするべきだな」

『ブーン? 何故ですか?』

「これまでの経験上、ゴブリンやホーネットのような一体当たりの戦闘能力が低い魔物は、普通の魔物よりも多く出現することによって戦闘能力を補っていた節がある。となれば、その逆もまた然り。キーパーは別枠としても、単体出現する魔物が弱いとは考えづらいだろう」

 さて、今俺が考えるべきはどうやってブルーパンプキンを倒すかだ。

 相手が火炎属性持ちである事、パンプキンアームLのフレーバーテキストから得られる情報、こちらの手札、俺自身の趣味嗜好。

 これらを併せて考えるなら……うん、そういう方向で行くか。


「ま、サーディンのように百を優に超える数で同時に出て来るよりはマシだな。一対一の方が雑魚複数よりも正直対応が楽だ」

『ブン。そうですね』

 俺は部屋の入口にゆっくりと近づき……部屋の中に踏み込む。


「パンプ!?」

「まずは一発!」

 そして直ぐにブルーパンプキンの位置を把握。

 グレネードホルダーから3カウントで爆発するようにしたグレネードを取り出す。


「そぉい!」

 構えて投げて1カウント。

 ブルーパンプキンに向かっていく過程で2カウント。

 正確に飛んで行ったグレネードはブルーパンプキンの眼前へと飛んでいき、払いのけようとしたブルーパンプキンの手がグレネードに触れる一瞬前にグレネードのゲージは無くなった。

 で、ゲージがなくなったことでグレネードはその機能を発揮。


「パプーン!?」

 ブルーパンプキンの頭部は爆炎に包まれた。

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