76:告知とチェック
「ログインっと」
サービス開始三日目。
今日も俺はスコ82にログインした。
「ブン。来ましたね、トビィ。通達事項がありますよ」
「通達事項か。なんだ?」
さて、今日は何か通達事項があるようだ。
俺は準備運動をしながらティガの話を聞くことにする。
「開発から、第一回イベントの告知がありました」
「……」
第一回イベントの告知。
それはまあいいのだが、出元が運営ではなく開発……スコ82の大本である『Scarlet Coal』と言うゲームを生み出した何者かからか。
きな臭い気配しかしないな。
「行われるのは今から一週間後。期間は24時間。内容は防衛戦であり、イベント中にログインしたプレイヤーは全員強制参加となります」
「それはまた……」
本当にきな臭いな。
と言うか強制参加って……おいおい。
「トビィ。本イベントの詳細は文章で送っておきます。ですが、これだけは今、口頭でお伝えしておきます。本イベントで防衛に失敗した場合、『Scarlet Coal-Meterra082』と言うゲームは一時あるいは永遠にサービス停止となります」
「もはや、ヤバさを隠そうともしないな」
いや、強制参加は当然のイベントだったか。
防衛失敗でサービス停止に陥るとは、いったい何が起こるんだという話だ。
しかも恐らくだが、ゲーム内で何かが起こったからサービス停止になるのではなく、リアルで何かが起きてそれどころじゃなくなるからサービス停止になるとか、そういう話だろう。
これまでの圧倒的なきな臭さから考えて。
「さて、どうされますか? トビィ」
「参加はする。が、今日やる事に変わりはないな」
「ブン、分かりました。あ、他にも細かいアップデートなどがありますので、そこは詳細を見てください」
「分かった」
まあ、俺がやる事に変わりはない。
「では配信を開始しますか?」
「その前に設計図の確認をする。流石に設計図の詳細まで配信で流したくはないからな。配信はその後、ゴーレムの構成を弄るところからだ」
「ブン。分かりました」
俺は手持ちの設計図一覧を見る。
流石に全部は見ていられないので、見る設計図は絞るが……そうだな、パンプキンアームL、グレネードホルダー、ドローンホーネットについては見ておくか。
△△△△△
パンプキンアームL
種別:パーツ
部位:左腕
対応:侵食-物理-内部-拘束
パンプキンの左腕を模して造られたゴーレムの左腕。
蔓で出来た腕と手を再現するために100を超える数の短小なユニットを一つの物体としてまとめている。
十全に扱う事が出来れば変幻自在の姿を見せるが、難易度は極めて高い。
≪作成には同一のマテリアルが10個必要です≫
▽▽▽▽▽
「ふうん……」
どうやらパンプキンアームLの扱いはかなり難しいらしい。
プレビューでは複数本の蔓を束ねて腕と手を作っているように見えるが、よく見てみると指一本ぐらい小さなパーツを幾つも繋ぎ合わせて作っているようだ。
で、その繋ぐのがゴーレムの他のパーツと同じように自由関節のようになっているので……なるほど、扱えれば、色々と出来そうではある。
△△△△△
グレネードホルダー
種別:パーツ
部位:武装
対応:侵食-化学-外部-遮蔽
手榴弾を内部で自動生成する袋。
手榴弾は袋から取り出す際にカウント(最大30カウント)を決め、カウントがゼロになると爆発。
周囲へ熱と破片による攻撃を行う。
破損するほど強い衝撃を袋が受けると、袋は即座に爆発する。
≪作成には同一のマテリアルが10個必要です≫
▽▽▽▽▽
「こっちはシンプルにグレネードだな」
「ブン。ただ、モロトフラックとは色々と違う投擲武器です」
「だな」
グレネードホルダーは腰に提げられる握り拳サイズの袋だ。
取り出す際に自分で爆発までのカウントを決められるのがいいな。
色々と使い道がある。
ちなみにモロトフフラックが総ダメージや制圧能力に優れているとするならば、グレネードホルダーは瞬間火力、範囲、即応性などに優れていると言える。
どちらが良いではなく、使い分ける代物だ。
△△△△△
ドローンホーネット
種別:パーツ
部位:武装
対応:電撃-化学-外部-DoT
蜂の姿を模したドローン。
自由自在に空を飛び、毒を含んだ尾の針による攻撃を行う事が可能。
操作形式はマニュアル、サポート、オートが存在する。
消費した燃料の補充には、対応するパーツ『ドローンネスト-ホーネット』が必要。
≪作成には同一のマテリアルが10個必要です≫
▽▽▽▽▽
「マニュアルにサポートにオート?」
「ブン。説明しますね」
ドローンホーネットの説明は概ね思っていた通り。
が、操作形式が幾つかあるようだ。
と言う訳でティガに説明を聞いた。
で、ティガによればだ。
・俺が直接操作をするのがマニュアル。
・ティガが操作するのがサポート。
・ドローンに事前設定した通りに動いてもらうのがオート。
であるらしい。
ちなみにドローンホーネットのサイズは体長10センチくらいである。
「マニュアルは俺の体を同時に動かすとなれば……どっちもマトモに動かせなくなるのがオチか」
「ブン。そうなるでしょう」
「サポートは……ティガに何をしてもらいたいかをきちんと伝える事か」
「ブン。正確で明瞭な指示をお願いします。ちなみに推奨設定です」
「オートは複数機のドローンを扱うならか?」
「ブン。そうなりますね。ティガも同時に一機しか動かせませんので」
まあ、操作形式はサポートにして、ティガに操作をしてもらうのが色々と都合がいいだろう。
俺自身がドローンを操作するのは無理があるし、ドローンが一機しかない今はオートにする意味もないからな。
ちなみにドローンホーネット入手に付随した説明書によれば、ドローンとの感覚共有はどの操作形式でも出来るらしいので、活用方法は幾らでもあるだろう。
「さて、それじゃあ配信を始めるか」
「ブン。分かりました」
では、配信を始め、第三坑道・アルメコウに挑むためのゴーレムを組み上げて行こう。