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72:初回配信

本日は二話更新になります。

こちらは一話目です。

「そういうわけですので、今後も『Fluoride(フロライド) A』をよろしくお願いしますわ。おーっほっほっほっ!」

 さて、初回配信は滞りなく終わった。

 合わせて今回の交換会も終了、解散となった。


「ティガ」

「ブン。大量のメッセージ返信と配信の準備はこちらでやっておきます。現在のトビィが使用している機器でも配信そのものは問題無く出来ますので、ご安心ください」

 配信準備もスコ82が出来る機器ならば、後は配信する先さえ確保できているなら問題はないらしい。

 なので、大量のメッセージへの対応含めてティガに任せておく。


「それでトビィ。この後はどうしますか? 下の階で他プレイヤーとの交流を図りますか?」

「その気にはちょっとなれないな。少し一人で落ち着きたいというか、思いっきりかつ気兼ねなく何かを殴りたい。流石にストレスがな……」

「ブ、ブン……手が震えていますね……トビィ……」

 で、俺は店を後にし、北区の人が来ない場所に赴き……とりあえず全力で一時間ほど木を殴り続けた。


「ふぅ、すっきりした……」

「ブーン。そうですねー」

「さて、これからどうするかだな」

 では改めて『Fluoride(フロライド) A』……と言うより、フッセの父親の会社と交わした契約について。

 まあ、そんなに複雑な契約じゃないな。

 俺がスコ82をプレイしている時は特定のチャンネルでプレイしている光景を配信してくれ。

 フッセあるいは会社からの要望があった時に可能な範囲で応えてほしい。

 これぐらいだ。

 まあ、これでも契約であり、業務として配信しているので、給料は発生するらしい。

 本当に怖い話だな、うん。

 とりあえず要望通りに、無理のない範囲でフッセと会社に協力をしよう。

 好き勝手していい状況を貰えた上でお金を貰っているのだからそれぐらいはな。


「とりあえずラボには移動するぞ」

「ブン」

 俺はラボに移動。

 さて、此処から何をするかだが……。


「疲れているから第三坑道・アルメコウは明日以降でいいとしてだ。今日のところは素材坑道・デイマイリに行くべきか。一日一回なら、今日の内に一回行っておくべきだ」

「ブン。そうなりますね」

「で、素材坑道・デイマイリに行くなら、マテリアルの採取に特化した装備にするべきだが……それは次回以降でいいか。今日のところはアドオン『オートコレクター』を製造して、それをセットするぐらいで準備は十分だろう」

 まあ、整理していけば、やるべき事は割とあっさり決まったな。

 という訳で、緋炭石10個を使ってアドオン『オートコレクター』を作成し、セットする。

 これで俺が自分で壊したマテリアルタワーからは自動でマテリアルを回収できる。


「と、素材坑道・デイマイリも坑道探索には変わらないし、配信をしないとな」

「ブン。そうですね。準備の方は後はトビィ自身が入力するべき項目だけなので、お願いします」

「あいよっと」

 それから契約通りに配信も開始。

 えーと、現在の視聴者数は一人、これはフッセの家の使用人さんだろうな。

 モニターしているとか言っていたはずだ。


「ゴーレムに意識を移してっと」

『ブン。無事に移せましたね』

 俺はゴーレムに意識を移すと、軽く準備運動。

 そこで背中が軽い事に気づくと同時に、モロトフラックが壊されたままであったことに気づく。

 まあ、この後のマテリアル回収を終えたら、ゴーレムの構成含めて色々と弄る予定だし、このままでいいだろう。

 ネル曰く、素材坑道・デイマイリには魔物が出現しないそうだしな。

 ついでに言えば、坑道探索のモードがソロで固定されてもいる。


「さて、一応だが、ただの垂れ流し配信だと言っておくぞ。コメントを見ることもない。ノットフォーミーだと思ったら遠慮なく去ってくれ」

 で、視聴者数が一人から七人に増えていたので、それだけ告げてエレベーターに移動。

 素材坑道・デイマイリを選択して、エレベーターが移動を始める。



△△△△△

素材坑道・デイマイリ

階層:1


多くのゴーレム使いが、自分の操るゴーレムを構成するために求めている素材を手に入れるべく潜る坑道。

緋炭石こそないが、魔物もおらず、望み通りの素材が手に入るという優れた性質を有している。

だが、それ故に此処にだけ潜られても困るという事で、一日につき一回しか潜れないようになっている。

▽▽▽▽▽



「ふうん……」

 素材坑道・デイマイリのフレーバーテキストが流れる。

 その後、どのマテリアルを採掘するかを選ぶようにと言う指示と共に、選択画面が現れた。

 選択できるマテリアルの数は五つまでであり、同一のマテリアルを二枠分選ぶという事は不可。

 選択に空きがある場合、岩がその枠に入ってくるようだ。


「肉のような生物素材から、青銅のような普通の素材、真鍮・電撃のような属性付き素材、金のような現状ではレアであろう素材まで。条件さえ満たしていれば、本当に何でも設定できるんだな」

『ブン。だからこそ一日一回なのです』

 俺がこれまでに手に入れたマテリアルは全て選択可能になっている。

 だが、肉や粘土をわざわざ此処で、しかも今回回収する意味は流石に無いな。

 となるとだ。


「真鍮・電撃、青銅、銅、岩、金。これでいいな」

『ブブ? 岩をわざわざ回収するのですか?』

「ああ。この後も考えてな。岩もある程度はストックを持っておいた方が便利だ」

 俺は五つのマテリアルを選択。

 するとエレベーターが止まり、坑道へ繋がる扉が開いた。

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