7:レコードボックス
本日三話目です。
『此処は……レコードボックスって奴だったか。それに次のフロアに繋がるエレベーターがあるな』
『ブン。その通りです、トビィ』
ホワイトコボルトと戦った部屋の次は、各面に光輝く線が刻まれた箱状の物体が置かれると共に、地面をくりぬく形で設置された昇降機がある部屋だった。
読んだチュートリアル通りならば、箱状の物体がレコードボックスで、昇降機がエレベーターという事になるだろう。
『では、レコードボックスの回収から始めましょう』
『分かった。レコードボックスは手をかざすと使えるだったな』
俺はレコードボックスに近づくと手をかざす。
すると、俺の視界に半透明の画面が表示され、そこには三つの選択肢から一つを選び、選んだ設計図が入手できると書かれていた。
これがレコードボックス。
魔物を倒す以外で設計図を手に入れる事が出来る貴重な場所、だったか。
『どれどれ……』
さて、肝心の選択肢は……。
≪設計図:コボルトアームL≫
≪設計図:固定式バックラー≫
≪設計図:イーグルレッグ≫
『……』
『どうかしましたか? トビィ』
これは……さっきの戦闘内容の影響がまた色濃く出ている感じだな。
コボルトアームLは、さっき入手したコボルトアームRの左手版だろう。
固定式バックラーは恐らく手が使えない今の状態でも扱える盾だ。
イーグルレッグは踏みつけた相手を捕らえるのに適した脚ではないだろうか。
上二つはまだしも、最後の一つは一般プレイヤーに向いているとは思いづらいし、そういう事なのだろう。
『いや、何でもない。これならコボルトアームLでいいな』
≪設計図:コボルトアームLを回収しました≫
まあ、選ぶのは俺の戦い方に合っている可能性が高いコボルトアームLだ。
左右のバランスが極端に崩れていると、体を動かす際に不具合を生じる可能性があるし、それを消す選択肢を得るためにも持っておくべきだろう。
と言う訳で、コボルトアームLを選択。
10秒ほどかけてレコードボックスからデータをダウンロード。
コボルトアームLの設計図を手に入れた。
『ブン。ではこれで第一階層は終わりです。エレベーターに乗って、第二階層へと向かいましょう』
『分かった。ただ、第二階層の前に現地ラボとやらだよな。ティガ』
『ブン、その通りです。トビィ』
さて、当然だが設計図は設計図でしかない。
設計図に基づいてゴーレムの体を構築するためには相応の設備が必要になる。
つまり、ラボでなければ、ゴーレムの装備を変えることは出来ない。
だが、最初に居たラボに繋がるエレベーターは既に消えている。
だったら、坑道の最深部にある脱出ポッドに乗れるまで、新しい設計図はお預けか?
チュートリアルとしてもらった文章によれば、そんな事はないらしい。
『周囲の安全を確認。では、移動を開始します』
『分かった』
俺がエレベーターの中心に立つと、ティガの合図でエレベーターをその周囲を隔てるように金網が伸び、エレベーターはまるで鳥かごのような姿に変貌。
その状態のまま降下を始める。
『現地ラボに到着しました』
『あっさりだな』
そして降下すること数秒。
最初のラボよりも狭く、アバターも寝ていないが、他はそっくりな空間にエレベーターは到着。
ここが現地ラボと称される空間であるらしい。
で、床に完全に接触した時点でエレベーターも、このラボに降下するための穴も消えて、代わりにラボの壁の一部が扉のように開く。
どうやら次の階層に移動したいなら、あの中に入ればいいようだ。
が、今はそれよりも先にやる事がある。
『さて、ティガ。早速だが、ゴーレムの構成を弄るぞ』
『ブン。分かりました。トビィ。構成変更用の画面』
現地ラボでは、ゴーレムの構成を弄る以外にも色々と出来る事があるらしい。
だが、その辺については今は置いておく。
今は最初のラボ……正式ラボとの差は、使えるマテリアルが俺のインベントリに入っている分だけである事、操作対象の変更不可、次に移動する場所、程度だそうで、ゴーレムの構成を弄る分には正式ラボとほぼ変わらない事が出来るから、安心して弄ればいいらしい。
『こちらが今のトビィのゴーレムです』
ではまずは今の俺のゴーレムについて。
△△△△△
トビィ
燃料:89/100
頭部:ビギナーヘッド(岩)
胴体:ビギナーボディ(岩)
右腕:ビギナーアーム(岩)
左腕:ビギナーアーム(岩)
脚部:ビギナーレッグ(岩)
▽▽▽▽▽
『実にシンプルな画面だな』
『ゴーレムは核が壊れるか、修理に使うマテリアルが尽きるか、燃料である緋炭石がなくならない限りは、特に問題が起きませんので』
『じゃあ、問題はないな』
異常点はなし。
括弧内は何のマテリアルを使っているかだろう。
折角だから、今の体を構成しているパーツのフレーバーテキストぐらいは読んでおくか。
△△△△△
ビギナーヘッド
種別:パーツ
部位:頭部
球体に人の顔を思わせるようなくぼみやでっぱりを足しただけのもの。
これでゴーレムの頭として機能し、視覚、聴覚を有するようになるのだから、ゴーレムとは不思議なものである。
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△△△△△
ビギナーボディ
種別:パーツ
部位:胴体
核を収めるための空間と最低限のインベントリ機能を持たせた物体に、他の部位に繋げるための接続点を加えて、胴体に仕立て上げた。
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△△△△△
ビギナーアーム
種別:パーツ
部位:右腕、左腕
複数の物体を繋ぎ合わせて腕っぽい形にしただけのもの。
左右どちらの腕としても使えるのが利点と言えば利点だが、何かを掴むことは出来ない。
▽▽▽▽▽
△△△△△
ビギナーレッグ
種別:パーツ
部位:脚部
複数の物体を繋ぎ合わせて脚っぽい形にしたもの。
特別な機能は一切持ち合わせておらず、歩く以上の行為をさせるべきではない。
▽▽▽▽▽
『まあ、初心者用のパーツなら、フレーバーもこの程度か』
とりあえず変えられるなら早々に変えた方がいい。
それだけは俺でもよく分かったと言っておこう。
01/27誤字訂正