64:アドオン
「さて、手早く確認するか」
「ブン。そうですね」
四階の個室に着いた俺は早速、特殊弾『シールド発生』を見る。
なお、ハンネは俺を招くと同時に何処かへと連絡を取り始めた。
カラオケの個室のような部屋だし、飲み物や軽食でも頼んでいるかもしれない。
△△△△△
シールド発生
種別:特殊弾
形式:魔力-魔術-境界-防御
着弾した相手にシールドゲージを与える特殊弾。
シールドが健在な限り、体が傷つくことは無いが、傷を負わないだけである。
得られるシールドの量は作成の際に使用したマテリアルによって変化する。
また、得られるシールドの量が異なる場合は、それぞれ別の枠に保存される。
シールドを既に得ている相手に対して使用すると、より強力なものが優先される。
≪作成には同一のマテリアルが8個、特定物質:緋炭石が10個必要です≫
▽▽▽▽▽
「流石に重要な特殊弾であって作成に必要なマテリアルが多いな」
「ブブ、期待外れでしたか?」
「まさか。どうせダメージを受ければマテリアルを消費するのは変わらないし、こっちなら修理できないほどに壊れるのは防げる。むしろ期待以上だ」
特殊弾『シールド発生』の使い勝手は良さそうだ。
得られるシールドの量次第ではあるが、魔物から手に入る肉や骨を使って作るのもありだろう。
そして、シールドがあれば、少なくとも一撃で破壊される事なくなるはず。
おまけにだ。
「後、対応しているパーツが既にあるのも大きい」
「ブン。気づきましたか」
この特殊弾『シールド発生』は俺の持っているデイムビーヘッドが対応してる。
つまり、今すぐ使えるわけだ。
これは大きい。
「ちなみにトビィ。他の特殊弾と違って、この特殊弾は作成の際に使用したマテリアルが違うと、インベントリで別の枠を使うようです」
「……。覚えておく」
まあ、使える特殊弾だけあって、追加の制限もあるようだが。
「さて次はアドオンだな」
「ブン。関連する情報を文章にして出しておきます」
では二つのアドオン、『斬撃強化』と『オートコレクター』を見てみよう。
△△△△△
斬撃強化
種別:アドオン
称号:斬撃の
適用したゴーレムの斬撃に属する攻撃の威力を+3%する。
≪特定物質:緋炭石が100個必要です≫
▽▽▽▽▽
△△△△△
オートコレクター
種別:アドオン
適用したゴーレムが破壊したマテリアルタワーから得られたマテリアルを、自分から近い順に自動でインベントリに収納する。
インベントリの容量が足りない場合、インベントリに空きが生じるまで機能を停止する。
≪特定物質:緋炭石が10個必要です≫
▽▽▽▽▽
「ふうん……」
アドオンとは、簡単に言えばパッシブスキルである。
ゴーレムに憑依するための装置そのものに組み込む事で効果を発揮し、一度作れば失われることは決してない。
その分だけ効果量は控えめ、坑道探索中の付け替え不可、作るのに必要な素材として緋炭石を大量要求されるという面もあるが、有用性は確かだろう。
なお、同時に発動できるアドオンの数はプレイヤーの坑道の攻略状況……第〇坑道とある坑道を幾つ踏破したかに依存するらしく、今の俺は二個まで同時にアドオンを起動できるようだ。
「とりあえずオートコレクターは作るべきだな。ようやくマテリアル拾いから解放される」
「ブン。作るべきですね。トビィは大変そうにしてましたし」
まあ、幾つアドオンを付けられるようになったとしても、オートコレクターがアドオンから外れる事は早々ないだろう。
オートコレクターは探索中のマテリアル拾いを楽にするためのアドオンではあるが、戦闘中でもマテリアルを拾えるアドオンでもあるのだし、これを付けていられないほどに戦闘特化しないといけない場面があるなら、そうならないように立ち回る方が賢明だろうからな。
「で、『斬撃強化』についている称号ってのは……これか」
「ブン。ブブ。ブーン。ただトビィですと……」
「まあ、俺に斬撃はちょっとな」
ちなみにアドオンには称号を含んでいるものもあり、称号を含むアドオンを一つ目として適用している場合には、称号に追加されるそうだ。
例としては、俺が『斬撃強化』を一つ目のアドオンとして適用していると、他のプレイヤーに表示される称号が『斬撃のヒヨッコ』になるらしい。
うん、二重三重に何とも言えない気持ちになってくるな。
「トビィ。なんかトビィが呼んだ客が居るみたいだから、迎えに行ってくるわ」
「ユーッヒョッヒョウ。行ってくるぜー」
「ん? ああ、分かった」
これで確認は終了。
気が付けば部屋の中にジュースサーバーなども設置済み。
ではハンネとの情報交換会を始めようかと思ったが、その前に俺が呼んだ客が来てしまったらしく、ハンネがそちらへと向かっていく。
「ブーン。フッセでしょうか、ネルでしょうか……」
「両方と言う可能性もあるぞ」
「それは確かにあり得ますね」
で、暫くしてドアが開き……。
「オーッホッホッホッ! 求めに応じて私様が来て差し上げましたわよ!!」
「……。濃い」
「トビィはいったいどういう繋がりでこの三人を招いたのやら……」
「その、色々と済まへんなぁ。ネルはん、ハンネはん、トビィはん」
「ん? 三人?」
金髪ドリル、真っ赤な目、派手なドレスと言う、誰なのかを一瞬で理解させる女性を先頭に、ハンネ含む四名の女性とそれぞれのサポートAIが部屋の中に入ってきた。
いやうん、フッセ、ネル、ハンネ、それに後一人は……誰だ?
俺が呼んだプレイヤーではないぞ?
03/08効果修正