53:フロア5.5でのチェンジ
「さて次はリザードスキンだな」
『ブン。そうですね』
俺はリザードスキンを見てみる。
性能は期待していないが、スキン……肌や皮膚、あるいは外装と訳されるようなパーツは初めてだからな。
しっかりと見ておいた方がいい。
△△△△△
リザードスキン
種別:パーツ
部位:武装
対応:火炎-生物-内部-弱体
機能の一部再現にも成功しており、十分な可動性と高い防御性を併せ持っている。
製作後、貼り付けたい部位を指定することで使用可能。
≪作成には同一のマテリアルが1個必要です≫
▽▽▽▽▽
「……。スキンと言う名のメッキでは?」
『ブーン。否定はできませんね』
まあ、用途は分かる。
プレビューを見る限り、鱗と鱗の間にはきちんと中間物質とでも言うべきものがあるようで、液体相手でも問題なく効果は発揮するだろう。
となれば、銅や真鍮で出来た腕に金で作ったスキンを被せれば、基本性能はそのままに耐酸性や耐腐食性を高める事が出来るだろう。
また、肉や粘土で出来た腕に銅で作ったスキンを被せれば、柔軟さはそのままに耐久性の低さを補うような事が出来るかもしれない。
逆に硬い素材の上に柔らかい素材でスキンを被せれば、こちらの構成素材を誤認させる事も可能かもしれない。
つまり、使い道は色々とあるのだが……スキンと言うよりメッキと捉えた方が本質を捉えている気がする。
まあ、この話についてはこれくらいにしておくか。
では次。
△△△△△
デイムビーヘッド
種別:パーツ
部位:頭部
対応:魔力-魔術-境界-防御
人間の目と耳だけでなく、蜂の複眼と触角も備えている。
人のそれとは微妙に異なる感覚に適応できるなら、優れた性能を示すだろう。
≪作成には同一のマテリアルが10個必要です≫
▽▽▽▽▽
「ふうん。ハウンドヘッドよりも良さそうだな。後で作っておこう」
『ブン。分かりました』
デイムビーヘッドは良い感じだ。
見た目としては、蜂を模した兜をかぶった人間の女性と言う感じ。
顔が少々可愛い方向で、厳つさや切れ味は足りないが、ハウンドヘッドよりも全体的な性能は高そうだし、乗り換えてもいいだろう。
それでは最後だ。
△△△△△
デイムビーボディ
種別:パーツ
部位:胴体
対応:電撃-生物-外部-DoT
人間の胸部と腹部に加えて、臀部から蜂の腹部が生えている。
蜂の腹部の針は毒針として用いることも可能だが、毒液の生成には燃料が必要になる他、使用後は再使用可能になるまでの一定時間、全ステータスが低下してしまう。
なお、背中にあるはずの翅は何処かに消えてしまったようだ。
≪作成には同一のマテリアルが12個必要です≫
▽▽▽▽▽
「む……12個……蜂の腹部の分だけ体のサイズが大きいからか」
『ブン。そうなりますね。そして、針の使用には多大なリスクを伴うようです』
「みたいだな。まったく、ミツバチかなにかか。デイムビーのイメージ元は。まあ、性能は良さそうだから、作るが」
デイムビーボディもかなり良い。
見た目としては少しスマートよりの女性が蜂を模した鎧を身に着けており、臀部からフレーバー通りに蜂の腹部が生えており、その先端からは鋭い針が覗いている。
ホーネットボディとの一番の差は人間の腹部があるか否かであり、デイムビーボディならば特異なボディに慣れる必要性は少なめだろう。
針については……まあ、トドメか、後ろから襲い掛かられた時のカウンター用だな。
『ではトビィ』
「ああ、作っていくとしよう」
では、フロア6で戦うために新しい構成のゴーレムを組んでいこう。
まず、頭部と胴体は、岩で作ったデイムビーのものに交換。
続けて左腕のコボルトアームLに銅・電撃のリザードスキンを張る。
右腕で握るナックルダスターは真鍮・電撃で作ったものに交換。
胸に付けるブレストプレートは修復も考えて、普通の銅と銅・電撃を混ぜ合わせたもので作成。
ケットシーテイルはとりあえず用途がないという事で、粘土で作成。
で、最後に、余った岩と緋炭石で、ハードバトン一本と特殊弾『睡眠』を6発、嫌々に近いが作成した。
△△△△△
トビィ
称号:『ヒヨッコ』
燃料:97/100
頭部:デイムビーヘッド(岩)
└魔力-魔術-境界-防御
胴体:デイムビーボディ(岩)
└電撃-生物-外部-DoT
右腕:ラミアアームR(岩)
└物理-生物-内部-DoT
左腕:コボルトアームL(岩)
脚部:オークレッグ(岩)
└拒絶-魔術-境界-防御
武装:モロトフラック(岩)
└火炎-物理-外部-強化
武装:ナックルダスター(真鍮・電撃)
└電撃-化学-外部-強化
武装:ブレストプレート(銅)
└拒絶-魔術-内部-防御
武装:リザードスキン-左腕(銅・電撃)
└火炎-生物-内部-弱体
武装:ケットシーテイル(粘土)
└氷結-生物-内部-強化
武装:ハードバトン(岩)
└魔力-魔術-外部-拘束(特殊弾『睡眠』6)
▽▽▽▽▽
「んー。脚の膨れ上がり方が凄いな。まあ、腿部分が大きく膨らんだズボンもないわけじゃないし、問題はないか」
『ブン。見た目としてはそこまでおかしくないと思います』
という訳で完成。
全体の見た目としては、蜂を模した鎧兜を身に着けた女が背負子を背負っている、と言う感じか。
モロトフラックが蜂の腹部に乗るようになっているのは……安定している感じだから、問題ないか。
ちなみにカラーリングは弄っていないのだが、虎と蜂を併せたような感じになっていて、上手く調和がとれている。
「で、これで特殊弾が使えるんだよな」
『ブン。使えます』
なお、ハードバトンはモロトフラックに提げておき、特殊弾『睡眠』も装填済み。
これで必要な時に敵に投げつけて、特殊弾を発動できるそうだ。
「ようし、それじゃあフロア6に向かうとするか」
『ブン。分かりました』
構成を整え終わった俺は、調子を確かめるように軽く“跳ね”ながら、エレベーターに乗ってフロア6へと移動する。
うん、この構成ならば、たとえ相手がブルーのランクだけであっても、戦う事が可能になるはずだ。
案外動くデイムビーヘッドの顔で微笑みながら、俺は降下していった。
03/25誤字訂正