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43:真鍮のマテリアルタワー

「通路が微妙に傾いているな。普通に歩く分には問題ないが、戦闘するとなったら少し考えた方が良さそうだ」

『ブン。そうですね。ここで戦闘をすれば、動きに影響は出る事でしょう』

 俺が入った通路は僅かに下り坂になっていた。

 歩く分には問題はないが、戦闘をするとなれば両脚とも地面から離れないようにしたり、転がる際に転がる距離がおかしくなったりしないように、ちょっとした注意が必要になるだろう。


「で、こうして傾きがある通路が生じたのも空間の異常とやらの仕業でいいんだよな?」

『ブン。トビィの言う通りです。これも空間の異常故にです』

「つまり、この先はフロア移動以外に上り下りが生じるし、場合によっては……崖上りと崖下りまで想定しておくべきか」

『ブーン。それほどに落差がある通路は流石にまだ生じないと思いますが……』

 しかし、もっと怖いのは落下死が発生する環境が生じる可能性が出てきた事だろう。

 通路の噛み合い方次第では崖にしか見えない斜面や、高さの違う通路から通路へと落ちれるようになってしまっていたりとか、そういう通路が生成される可能性がある。

 ティガはまだ生じないとか言っているが……それは逆に言えば、今後何処かで発生するかもしれない、という事でもあるしな。

 うん、どの程度の高さまでなら落ちても大丈夫なのかは分からないが……ゴーレムの体が完全に地面から離れると各種誤魔化しが機能しなくなり、凄まじい勢いと重さで落ち始める事を考えると、とりあえず、自分の身長以上の高さから無対策で落ちるのは止めた方がいいだろうな。


「さて二つ目の部屋は……マテリアルタワーか」

『ブン。緋炭石と……真鍮ですね』

「真鍮……銅と何かの合金だったか」

『ブン。銅と亜鉛ですね』

 そうして注意を払いつつ歩くこと暫く。

 俺は次の部屋に移動。

 その部屋には前の部屋と同じように家電型の電撃罠が置かれていると共に、緋炭石のマテリアルタワーと銅とは少し違う色合いの、金にも少し似た金属のマテリアルタワーが立っていた。

 ティガ曰く真鍮のマテリアルタワーであるらしい。

 えーと、真鍮と言うと……水場でよく使われているイメージがあるな。

 それと、色々な面から見て便利な金属だったか。


「じゃ、回収するか」

『ブン。回収しましょう』

≪特定物質:緋炭石を32個回収しました≫

 とりあえず緋炭石を回収。

 続けて俺は真鍮のマテリアルタワーにも殴り掛かる。

 殴りかかったが……。


≪鉱石系マテリアル:真鍮・電撃を9個回収しました≫

「こりゃあ。岩の拳で壊すのはもう無理だな」

『ブブ。無理でしょうね』

 銅のナックルダスターでなら壊すことは出来たが、岩の拳では殴ったこっちの方の手が駄目になってしまうほどだった。

 銅のマテリアルタワーの時点で岩の拳では厳しいと思っていたが、これはもう岩の拳ではどうしようもなさそうだ。

 となると、真鍮以上の強度を持っていそうな上に存在することがほぼ確実な鉄についても、岩では駄目で、銅や真鍮で出来た道具を持ってきた方がいいだろう。

 と言うか、採掘用の道具を作れと言われているようなものだろ、これは。


「で、ティガ。手に入ったのが真鍮は真鍮でも、真鍮・電撃と言うものだったんだが、これはどういう事なんだ?」

『ブン。これについてはチュートリアルがありますので、文章の形で出しますね』

 では続けて真鍮・電撃について。

 えーと、ティガが出した文章によればだ。


「ふうん。属性付きマテリアルと言うのか」

『ブン。利用価値は高いですね』

 今回手に入れた真鍮・電撃は、属性付きマテリアルと呼ばれるもので、真鍮に電撃属性が付与されたものであるらしい。

 で、使い方だが……属性付きマテリアルだけでパーツや特殊弾を作る事で、属性付きのパーツや特殊弾を作る事が出来るらしい。

 そうして出来た属性付きパーツや特殊弾は、攻撃面では属性に応じた追加ダメージを与えられるようになり、防御面では同じ属性からのダメージを大幅に減らす事が出来るらしい。

 なお、元のパーツや特殊弾の性能はそのままであるため、属性が生かされない場合もそのままの効果が発揮される。

 なので、基本的にはこちらにとって有利に働くようだ。


『ただ、例外が全くないわけではないので気を付けてください。パイコーンに火炎属性で攻撃すれば激しく燃え上がりますし、それがデメリットにならないとは言えませんから』

「ま、そうだよな」

 まあ、火炎属性を受けたら爆発とか、電撃属性を受けたら発狂とか、そういう魔物もいるようなので、注意は必要だが。


『それとトビィ。属性付きマテリアルだけで作ると、修理が難しくなりますから、そこは注意が必要です』

「ああ、それは分かってる」

 それと、属性付きパーツの修理には、属性まで一致したマテリアルが必要になってしまうらしい。

 なので、これはデメリットと言えるかもしれない。

 ちなみに、他の属性のマテリアルと混ぜれば、出来上がるパーツや特殊弾は属性無しとなるそうだ。

 また、属性無しのパーツを修理するのに、属性付きマテリアルを使うのも問題ないらしい。


「しかしこうなると、モロトフラックの優秀さがまた上がるな。属性付きマテリアル、特殊弾も無しで属性攻撃が行える事になる」

『ブン。その通りですね』

 余談だが、モロトフラックのように素で属性攻撃を行えるパーツを属性付きにすると、常時無条件で二重属性攻撃を行えるようになり、火力を跳ね上げられるそうだ。

 本当に優秀だな、モロトフラック。

 元々手放す気などなかったが、これはもう、いよいよもって手放せないかもしれない。


「それと……インベントリの制限がついに生きてくることになるな」

『気づきましたか。トビィ』

「気づくさ。ティガ」

 さて、こうして属性付きマテリアルが出現した事で俺は気づいた。

 無節操に属性付きマテリアルを集めて保管していたら、インベントリの枠が足りなくなってしまう事に。

02/20誤字訂正

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