4:第一坑道・レンウハクへの進入
本日四話目となります。
『ティガ、此処に手をかざせばいいのか?』
『ブン。それで合っています。トビィ』
ティガが居る場所に着いた俺は、その場の壁にゴーレムの核によく似た緋色の球体が埋め込まれていることに気づく。
そこへ手をかざすと、壁が動き出し、ゴーレムが四体くらい入れそうな空間が現れる。
『では、入ってください』
『分かった』
俺は空間の中にゴーレムを進める。
すると空間の中心辺りにまでゴーレムを進めたところで、壁が動いて閉まる。
『では、チュートリアルのために第一坑道・レンウハクに向かいましょう』
やはり此処はエレベーターのような空間であるらしい。
壁……いや、扉が閉まると同時に、俺の視界に行き先を選ぶためのものであろう半透明の画面が現れる。
画面にはスペースが多々あるが、行き先として選べそうなものは一つだけ。
ティガも名前を言った、『第一坑道・レンウハク』だけだ。
なので、そこを一度タップ。
『第一坑道・レンウハク』の情報が表示される。
△△△△△
第一坑道・レンウハク
階層:3
新人ゴーレム使いのために存在している坑道。
ゴーレムを用いた探索、掘削、戦闘について一通り学ぶ事が出来る。
▽▽▽▽▽
≪『第一坑道・レンウハク』へ移動しますか?≫
『もちろん、YESっと』
どうやらちゃんとチュートリアル用の場所らしい。
俺がYESを押すと同時にエレベーターが動き出し、ゆっくりと下降していく。
『トビィ。到着まで30秒ほどかかります。なので、チュートリアル中にティガが音声で説明する事項を、予め文章にして送っておきます』
『ありがとうな。読んでおく』
『読めるのですか?』
『400文字程度なら1秒で概要は分かる。5秒あれば詳しいところまで分かる。だから、長話を聞いていると眠くなるんだろうと友人は推測してたな』
『ブン。なるほど』
俺は素早くティガが送ってきたチュートリアルを読んでいく。
画像付きで非常に分かり易いと同時に、おおよそは公式サイトの通りか。
そして、ここに書いていない部分については自分で確かめるしかなさそうだな。
≪『第一坑道・レンウハク』に到着しました≫
『着いたか』
『ブン、着きました。では、チュートリアル開始です』
エレベーターの扉が開き、岩の洞窟を木の柱で支え、ランタンのようなもので明かりが確保されている、見るからに坑道と言った様子の空間が広がる。
俺は目に見える範囲に異常がない事を確かめるとエレベーターの外に出る。
そして、ゴーレムがエレベーターの外に出て、2メートルほど離れたところでエレベーターの扉は閉じ、閉じた扉はそのまま消えて岩の壁になってしまった。
『説明通りなら、空間異常によって進むことは出来ても戻ることは出来ないようになっている。だったか』
『ブン。ですので、トビィが無事に帰還するためには、最深部に存在する脱出ポッドを目指さなければいけません』
俺は周囲の様子を確認。
俺が今居る場所は通路の行き止まりのような場所であるらしく、天井までの高さは3メートル前後。
道の幅は二体のゴーレムが並んで歩ける程度。
現実の坑道に比べれば、広々としているといえるかもしれない。
『試すか』
『ブン?』
周囲に敵影や危険物は見えない。
なので俺は腰を回し、右腕を引いて……。
『フンッ!』
その全てを逆に動かすことによって右手を坑道の壁に叩きつける。
『トビィ!?』
『ほーん、なるほどなるほど』
結果。
周囲に岩同士が激しくぶつかる音が響いたが、それに伴って何かが動く音はなかった。
叩いた右手に相当する岩にはヒビが入ったが、坑道の壁には欠け一つ生じていない。
異常が発生していることを知らせるために、俺の意識上でのみアラートが鳴り、右手には違和感が生じている。
修復に使う材料が存在しないため、右手が修復される様子は見られない。
うん、色々と分かった。
だが何よりも重要な事としてだ。
『壁の向こう側には何もない。壁を破壊するには特殊な道具が必要、と』
『!!?』
この壁、見た目は岩だが、中身は全くの別物だ。
現実、フルダイヴVR問わず、色々なものを殴ってきた俺の経験から言わせてもらうならば、中身の詰まった巨大硬質ゴムあるいはシステム的に侵入不可能と定義された空間との境界面を叩いているのに近いが、微妙に違うような感じもある。
なんにせよ、中身については本当に何もないように感じる。
よって、専用の何か以外では干渉できないだろう。
『柱になっている木も同じか』
続けて通路を支えている木も小突いてみるが、こちらの感触も同じ。
表面のテクスチャだけ変えて、中身は同じであるらしい。
『トビィ。どうしてこのような事を?』
『壁を全力で殴りつけた時の挙動は知っておいた方がいい。それはそのまま壁や床に叩きつけられた時の挙動。投げ技や吹き飛ばしの有効性に関わるから。俺の戦闘スタイル上、知っておいて損にはならない』
『戦闘のチュートリアル前から、既に戦闘スタイルが決まっているのですか』
『俺の戦闘スタイルは一貫しているからな』
とりあえず今すぐに調べたいことは分かった。
衝動も多少発散できた。
では、チュートリアル再開と行こう。
俺は坑道の奥に向かってゴーレムを進める。
『これが部屋ってやつか』
『ブン』
僅かに凹凸のある通路を進む事十数秒。
俺の視界に開けた空間が入ってくる。
そこは高さ数メートル、左右と奥にそれぞれ十数メートル程度ある開けた空間。
空間の中心には、緋色の結晶体で出来た塔とゴーレムの体を構築しているものに似た岩で出来ている塔が立っていた。
では、近づいてみよう。
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