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38:フロア3

「さて、地道に探索をしていく……部屋スタートか」

『ブン。そういう事もあります』

 第二坑道・ケンカラシのフロア3に着いた俺は周囲を見る。

 何気に初めての部屋スタートである。

 と言っても、部屋の中には緋炭石と岩のマテリアルタワーが立っているだけだったので、危険は何もなかった。


「これ、魔物が居る場所スタートだった場合は隠れる暇も有利になるように仕込む時間も無しか?」

『ブン。そうなりますね。なので、隠密行動に特化しているゴーレムにとっては最も危険であり、トビィのように戦闘に慣れていても厄介でしょう』

「なるほどな。高難易度になったら仕切り直し手段は必要そうだ」

≪特定物質:緋炭石を32個回収しました≫

≪鉱石系マテリアル:岩を22個回収しました≫

 ただ、今後のために手段が手に入ったら備えておく必要はありそうだ。

 流石に新しいフロアに来た直後に四方八方から無数の魔物たちによって銃で撃たれたりしたら、ひとたまりもない。

 現状でそうなったら……少しでも被弾を抑えるように認識加速とローリングで通路まで逃げ込むくらいだろうか。


「じゃ、ガンガン行くぞー」

『ブン』

 さて、予測によれば、フロア3にはハウンド、オーク、未知の魔物が居るらしい。

 それを踏まえた上で俺は別の部屋に移動し始める。

 二つ目の部屋には粘土のマテリアルタワーがあったので、これを回収。

 三つ目の部屋には……レコードボックスがあった。


≪設計図:サーディンアームL≫

≪設計図:ブレストプレート≫

≪設計図:特殊弾『吹き飛ばし』≫


「……。サーディンアームLは直訳するならイワシの左腕か? ブレストプレートは……あー、たぶんだが胸に付ける装甲版と言うところか。特殊弾はそのままだな」

『ブン。トビィの言うとおり、サーディンはsardineでイワシ、ブレストはbreastで胸と言う意味がありますね。同音異義語が存在しなければですが』

 これはどれを選ぶべきだろうな?

 まずサーディンアームLは……イワシの左腕と言う時点でネタ臭いので、今回はスルーしておこう。

 左腕がヒレみたいになるのは面白そうではあるが、殴るのには向かないだろうしな。

 次にブレストプレート。

 これはたぶん追加装甲になるようなもので、胸を守る事で正面からの攻撃を防ぎやすくなるだろう。

 最後に特殊弾『吹き飛ばし』は……たぶん、名前通りでいいはず。

 強烈なノックバックを与えるとか、壁まで吹き飛ばすとか、なんだかんだで使い道が多くなる奴だろう。


「今回はブレストプレートを選んでおくか」

『ブブ? 何故それを?』

「保険、潰し、実用性の観点から、と言うところだな」

≪設計図:ブレストプレートを回収しました≫

 俺はブレストプレートの回収を決めた。

 で、俺の考えが間違っていないことを確かめるために口でティガに説明しておく。


「今の俺の目標はシールド確保の特殊弾を手に入れる事。けれど、それが上手くいく保証はない。となれば、核を守る手段ぐらいは他に用意しておきたいからな。ブレストプレートならそれが出来るはずだ」

『ブン。トビィの想像通りの品なら上手くいきそうですね』

「で、これについては後で確認してみないと分からないが、ブレストプレートにはナックルダスターと同じように作成に必要なマテリアルの量が少なくて済む能力があるかもしれない。体積的には胴体パーツを作るよりは安く済むはずだからな」

『ブン。なるほどなるほど』

「後は軽量級のゴーレムを作る時に使えそうというのもあるな。中までぎっしりより表面だけの方が軽くはなるだろう」

『ブン、ブン。トビィは色々考えていますね』

 とまあ、こんな感じで使い道は幾らでもある事だろう。

 それこそ、俺の想像通りの性能をしているのなら、次のエレベーターを降りて現地ラボに入った際に、ナックルダスターと一緒に銅製にして装備してみてもいいかもしれない。


『ブーン。ところでトビィ。装備を沢山つける事のデメリットは分かっていますか?』

「一応は分かってる。全体の重量が増えると、動きの滑らかさは変わらないが、燃料の消費が激しくなるんだよな。で、装備は作成して持つこと自体は幾らでも出来るから、注意を払う必要がある、だったか」

『ブン。その通りです』

 では、雑談をしたまま次の部屋へ。

 次の部屋にはパープルハウンドが四体ほど居た。

 が、ヴァイオレットは居なかったので、サクッと倒してしまった。

 そして、銅のマテリアルタワーを発見したので回収。

 さらに次の部屋へと向かう。


「さて次の部屋はオークか新種か……正直、オークはかなり強かったし、新種の方がマシかもだが……」

「「「メエエエェェェ」」」

「ブヒブーヒ」

『どうやら新種のようですね』

「みたいだな」

 次の部屋には見慣れない三体の魔物と一体のオークが居た。

 俺は魔物がこちらに気づかない距離から、相手の詳細を確認する。


「……。なんと言うか、羊飼いと羊と言う感じだな」

『ブン。そうかもしれませんね。あ、羊はパープルシープとヴァイオレットシープです』

「で、オークはヴァイオレットの上に武器は銅のメイス? 鞭? とりあえず打撃武器か」

 相手は……ヴァイオレットオークが1、こいつは毛織の防具を身に着け、銅で出来た鉄鞭……いや、硬鞭とでも言うのだろうか? 指揮棒のようにも見える物体を持っている。

 羊はパープルシープが2でヴァイオレットシープが1、それぞれのランクの色の毛を纏い、渦巻き状の角を生やしている。

 とりあえず別格で危険なのはオークの武器であり、打ちどころによっては即死もあり得るので、オークは早々に仕留めた方がよさそうだ。

 シープは……能力次第か。


「じゃ、挑みますか……ねっ!」

「ブヒッ!?」

 では挑もう。

 俺は先制攻撃として火炎瓶をオークに向かって投げつけた。

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