37:パープルホーネット
本日は二話更新です。
こちらは二話目です。
「さ、来いよ」
「「「ブウウゥゥン!!」」」
パープルホーネットは五体。
これまでの魔物との一番の違いは地面に足についておらず、空を飛んでいる事と、ゴブリンやハウンドたちよりも一度に出てくる数が多い事だろう。
あちらの攻撃手段として考えられるのは、マジカルな方法を考えないのであれば、見るからに強靭そうな顎による噛みつきと、鋭く尖った尾の針による刺突攻撃。
後者については蜂らしく毒を含んでいることも考えておくべきだろう。
後、サイズが体長30センチほどと、現実の蜂と比べると大きいが、魔物としては小さく、通路でも問題なく動けると判断する。
なので、このまま部屋の中で戦うとしよう。
「ブ……」
「ジャブからの……」
考察完了。
ホーネットの一体が真正面から突っ込んできつつ、残りの四体は左右二体ずつに分かれて俺の側面へと飛んでくる。
なので、俺は突っ込んできた一体の行動の出始めを潰すように左手で顔面を素早く殴りつけ……。
「ストレート!」
「ブギョ!?」
「「「!?」」」
怯んだ一瞬を狙うように右ストレートを、ナックルダスターがきちんとホーネットの頭と胴の間に食い込み、切り離すようにぶち込む。
「ようし、即死。ちゃんと脆いところに入ったな」
『正確に撃ち込みましたね。流石です。トビィ』
「「「ブブブッ!」」」
これでまずは一体。
と同時に残るホーネットたちが俺へと襲い掛かってくる。
「おうら……」
「「「!?」」」
なのでまずは腰を回転させることで上半身を振り回し、ホーネットたちを牽制。
俺の狙い通りにホーネットたちは近寄る事を一瞬躊躇った上に動きを止めた。
「よっと!」
「ブギョッ!?」
で、動きが止まったならチャンスであるという事で、先ほどと同じやり方でもって二体目を始末。
「「「ブブブー!」」」
と、下半身が動いていないことに気づいたのだろう。
ホーネットたちは低空飛行でこちらに、三方向から接近してくる。
「ふんっ!」
「ブギイィ!?」
なので片脚を振り上げて、下ろし、踏みつけて、一体始末。
その間に残るホーネットは俺の体に取り付く事に成功。
場所は胴体と上げなかった方の脚の脛。
「「ブブブウウゥゥ!!」」
「……」
胴体のホーネットは俺に噛みついた。
僅かにだが、体が欠ける感覚はあった。
脛のホーネットは俺に針を刺した。
こちらも僅かにだが、体が欠ける感覚があった。
そして、脛の方には何かしらの液体が吹きかけられる感触もあった。
「分かってはいたが……効かねえな!」
「「ビギィ!?」」
が、それだけだった。
という訳で、俺は二体のホーネットの体を掴むと、先ほどまでと同じやり方で始末していった。
≪生物系マテリアル:甲殻を1個回収しました≫
≪設計図:ホーネットボディを回収しました≫
≪生物系マテリアル:甲殻を1個回収しました≫
≪生物系マテリアル:甲殻を1個回収しました≫
≪設計図:ドローンネスト-ホーネットを回収しました≫
『ブン。圧勝でしたね』
「まあな。考えてみれば、虫が始末しづらいのはその速さと小ささ故にだ。体長30センチと言う絶妙に殴りやすいサイズなら、攻撃を当てるのはそこまで難しくはねえよ」
入手したものを知らせるアナウンスが流れていく。
甲殻は……たぶん、昆虫や節足動物のような外骨格生物由来のマテリアルという事になるんだろうな。
きっと、岩ほど硬くはなくても、それなりの堅さと十分な軽さを併せ持っているに違いない。
ホーネットボディとドローンネストは……名前だけだと分からないから、後で詳しく見ておいた方がよさそうだ。
特に後者。
なんか、使いこなした場合がヤバそうな臭いがしている気がする。
『ブブ。トビィの腕もそうですが、相性も良かったと思います。と言うより……知ってましたね?』
「まあな。リアルでの情報収集の結果として知る事になった。の方が言い方としては正しいが」
さて、先ほどの戦闘。
俺は確かにホーネットに刺された。
蜂の針と言えば、現実でもゲームでも毒針であることが大抵であり、しかも蜂の毒と言えば現実なら毒のカクテルと呼ばれ、ゲームなら作品次第だがとりあえず厄介なことはほぼ確定しているような代物だ。
が、俺には何の影響も及ぼさなかった。
何故だろうか?
まあ、そんな深い理屈ではないというか、はっきり言えば当たり前の話だ。
「全身が岩で出来たゴーレムに対生物用の毒が効くはずがない。考えてみれば当たり前の話なんだよな」
『ブン。その通りです。岩の体に生物原理のものは効果が薄いか、効かないことが大半です』
そう、単純に岩のゴーレムに生物毒が効かない、ただそれだけの話。
ハンネ曰く、どうやらスコ82の状態異常システムは原理などがきちんと設定されているらしく、原理や効き方次第では、効果内容に触れる前に弾かれてしまう事があるそうだ。
なので、今回は俺に毒は効かなかった。
これで俺のゴーレムが肉で出来ていればホーネットの毒は通っただろうし、ホーネットが放つのが毒ではなく酸だったならば継続ダメージを与える効果は出ていた事だろう。
「このシステム。俺たちの側が状態異常と言うか、特殊弾を使う場合にも同様でいいんだよな?」
『ブン。もちろんです』
うん、よく覚えておこう。
相手の動きを止めるための特殊弾が、原理などが噛み合わなかったために効果を発揮しなかった、などと言うのは、大惨事にしかならないからな。
「おっと、エレベーターだな」
『では、フロア3に向かいましょう』
「だな」
俺はエレベーターに乗ると、フロア3に向かう。
さて、ここから魔物の中にヴァイオレットのランクが混ざってくる。
そして、ヴァイオレットの魔物ならば、自分にシールドゲージを与える特殊弾の設計図を落とす可能性があるのは、ハンネからの情報で分かっている。
上手く手に入ってくれればいいんだが……どうなるだろうな?
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