36:再びのフロア1
本日は二話更新します。
こちらは一話目です。
「さて、フロア1とフロア2はとっとと抜けるぞ」
『ブン。分かりました』
二度目の第二坑道・ケンカラシの探索を始めた俺は、直ぐに通路を歩き始める。
フロア1とフロア2については出現する魔物が分かっていて、その魔物からでは俺が求めているものが手に入らないと分かっているからだ。
なので、積極的に戦わず、エレベーターを見つけ次第、次のフロアに移動してしまう事にする。
「お、マテリアルタワー。まあ、こっちは回収しないとな」
『ブン。それが本来の役割ですからね』
まあ、エレベーターを見つけたら移動するだけなので……。
見つけたマテリアルタワーは破壊する。
レコードボックスは開ける。
襲い掛かってくる魔物は殴り倒す。
見知らぬ魔物も殴り倒す。
と言う感じで、まったく戦わない、他の事をしない、という訳ではないが。
≪特定物質:緋炭石を31個回収しました≫
≪鉱石系マテリアル:岩を24個回収しました≫
「ナックルダスターの意味はあるみたいだな」
『ブン、そのようですね』
ナックルダスターの調子は悪くない。
明らかに素手の時よりも破壊力が伸びている。
ちなみにだが、今朝ハンネから送られてきた情報によればだ。
普通のプレイヤーが、素手で、第一坑道・レンウハクで、緋炭石のマテリアルタワーから、一度に回収出来る緋炭石の数は20個程度であるらしい。
で、武器込みでも30個がいいところとの事だそうだ。
なので、俺の武器無しで30個と言うのは、武器を持っていないのに武器を持っているのと同じくらいの火力を出していたことになるそうだ。
ただ、俺でこれという事は……まあ、上位層や自分にあった武器を見つけた連中はこれ以上になるんだろうな、たぶん。
「しかし、回収が面倒くさい。まあ、それを楽にするのがこの先にあるとは聞いているが」
『ブーン。ああ、リアルで情報を集めたのですね。確信があるようなので答えてしまいますが、その通りですよ。トビィ』
ハンネからの情報はまだある。
前回潜った時に第一坑道・レンウハクと第二坑道・ケンカラシでは第二坑道・ケンカラシの方が入手できるマテリアルが少ないと俺は感じたが、これは事実であるらしい。
ハンネ曰く、先の坑道になればなるほど、採掘周りに補正をかける何かが必要になってくるのではないかとの事だった。
それから、今はこうして飛び散ったマテリアルの回収に苦労しているが、第二坑道・ケンカラシの踏破で、この苦労から解放されるらしい。
なので、本格的なマテリアル集めや設計図集めは、第二坑道・ケンカラシを踏破してからの方がいいようだ。
「おっとエレベーター。フロア2に行くぞ。ティガ」
『ブン。分かりました』
という訳でサクッとフロア1終了。
現地ラボに入り、フロア2とフロア3の坑道予測を一応見て、それからフロア2へと降りていく。
『ところでトビィ。トビィは未だに胴体がビギナーボディのままですが、どのような胴体なら変えてもいいと思っているのですか?』
「胴体なぁ……今のビギナーボディでもインベントリにはまだ余裕はあるんだよな。となると戦闘関係を重視した胴体にしたいところなんだが……核を守る力と関節を増やして拳に伝えられる力、その両方を増やせるものが理想形ではあるな」
『ブーン。なるほど……』
フロア2に降りた俺にティガが話しかけてくる。
話題は未だに未換装の胴体についてか。
左腕共々、確かに早めに変えたいところではあるんだよな。
対応する特殊弾を持っていないから現状は変わらないかもしれないが、特殊弾に一切対応していないパーツでもあるから。
「まあ、いいのが見つかるのを気長に待つしかないと言うところだな」
だが、左腕と違って実際に換装するとなると……胴体は難しい部位だ。
何せこちらの命に直接関わってくる。
核を守る力が足りなければ、胸のど真ん中に攻撃が来た時に即死することになってしまう。
インベントリの容量があまりにも少なければ、緋炭石と修理用のマテリアルくらいしか積めなくなって、これもまた支障を来す事になる。
しかし、守りに全振りしてしまい、関節がない胴体にしてしまえば、俺の戦闘スタイルだと大きな支障を生じることになり……結果としてゴーレムはやられやすくなるだろう。
つまり、性能のバランス取りが非常に難しい部位なのだ。
なので、今は良いのが来るのを待つしかない。
「最悪、取引所で設計図を購入するのもありか。そのためのお金は現状ないけどな」
『ブン。それも手でしょうね』
おっと、銅のマテリアルタワー発見。
早速壊すとしよう。
≪鉱石系マテリアル:銅を6個回収しました≫
「これで次の現地ラボにたどり着けば、ナックルダスターくらいなら銅製に変えられるわけだな」
『ブン。そうなりますね』
ナックルダスターの作成に必要なマテリアルが少なくて済む性質は、こういう時に美味しいな。
他の武装よりも安価で強化する事が出来る。
では次の部屋に向かおう。
俺の目的はフロア3と言うか、ヴァイオレットのランクからなので、早く向かいたい。
「「「ブブブブブ……」」」
「おっと新顔か。じゃあ、戦うしかないな」
『ブン。パープルホーネットですね』
そうして俺が着いた次の部屋には、体長30センチほど、紫と黒の二色で体を彩った巨大な蜂が五体、周囲を警戒しながら、聞き慣れた独特の羽音を立てて飛んでいた。