35:ソロでのケンカラシ攻略
「ログインしましたよ、っと」
翌日。
リアルでの雑事を済ませ、
「ブン。来ましたね。トビィ」
「ティガか。何か通達事項の類は?」
「ブン。『無名』のネルからフレンド申請を受理したというメッセージが来ています」
「分かった。すぐ見る」
とりあえずはメッセージ確認。
ネルが俺からのフレンド申請を受け入れてくれたようだ。
なお、申請を受け入れに伴う返信には、マルチにしろ、決闘にしろ、戦いたいならメッセージを送ってほしい、そうでなくとも坑道で会った時は全力で戦おうとの旨が記されていた。
なのでこちらもまた了解。
その時が来たら全力で殴りに行こう。
「次は……新しいゴーレムの作成か」
「ブン。なお、ゴーレムのパーツに使うマテリアルのうち、頭部、胴体、右腕、左腕、脚部に使う分の岩は運営から補充されますが、他は自前で用意する必要がありますので、注意してください」
「分かってる分かってる」
続けて、昨日ネルに破壊されて失ったままであるゴーレムを再作成する。
ただ、破壊されたゴーレムをそのまま作り直すのではなく、交換できるパーツについては予め交換しておく。
という訳で、俺のゴーレムはこんな感じになった。
△△△△△
トビィ
称号:『ヒヨッコ』
燃料:100/100
頭部:ハウンドヘッド(岩)
└物理-生物-外部-ダメージ
胴体:ビギナーボディ(岩)
右腕:ラミアアームR(岩)
└物理-生物-内部-DoT
左腕:コボルトアームL(岩)
脚部:オークレッグ(岩)
└拒絶-魔術-境界-防御
武装:モロトフラック(岩)
└火炎-物理-外部-強化
武装:ナックルダスター(岩)
└電撃-化学-外部-強化
▽▽▽▽▽
「うーん、下半身に対して上半身が貧弱すぎる」
「ブン。オークレッグの太さに対して、両腕……特に左腕が細いですからね」
見た目としては、丸太のような両脚の上に体の各部が乗っているわけだが……上下のバランスが悪いな。
特にコボルトアームの細さとオークレッグの太さの対比が凄まじい事になってる。
「で、ナックルダスターが二つ作れないのは仕様でいいんだよな」
「ブン。仕様です。一つの設計図から作れるパーツは一つだけ。同じパーツが複数欲しいなら、設計図のコピーを取る必要があります」
さて、本音を言えばナックルダスターを二つ作って、両手に填めたかった。
が、スコ82の仕様では一つの設計図から作れるパーツは一つだけ。
その設計図から作られたパーツがある限り、新たにパーツを作る事が出来ないようになっている。
なので、昨日会ったフッセのようにマスケットガンの二刀流をしたいのなら、マスケットガンの設計図が二つ必要になるのである。
「コピーは……はいはい、無し無し。こんなところに使える金はまだねぇわ」
「ブン。そうですよね」
設計図のコピーは街坑道・ヒイズルガや取引所で生成できるらしい。
しかし、コピーには若干の手数料が必要になるので、今使うような機能ではなさそうだ。
ちなみに、設計図のコピーは、コピー一枚につき二度まで他のプレイヤーあるいは取引所に売却できるらしい。
なので、上手くやれば設計図の仲買で一儲けすることも可能なようだ。
具体的には、特殊弾に対応する設計図と、その設計図に対応する特殊弾をセットにして売る、と言った行為だったり、様々な設計図を集めた上で客の要望を聞き、全体のコーディネートをする、と言うのもあり得るだろうか。
まあ、俺には客として関わる以外には縁のないプレイスタイルだ。
殴れないしな。
「ちなみに極めて人気な設計図は取引所で一般販売されるようになりますよ。トビィ」
「へー」
余談だが、全プレイヤーに行き渡るようなレベルでコピーされた設計図は、本当に誰でも手を出せるようになってしまうようだ。
とは言え、此処でいうコピーされた設計図と言うのはパーツなら対応する特殊弾、特殊弾ならその形式が完全に一致している設計図らしいので……便利で扱いやすい特殊弾であっても、出てくるのはしばらく先の事になるだろう。
「さて、そろそろ向かうか」
「ブン。分かりました」
俺はゴーレムに手をかざし、憑依する。
そうして操作対象がゴーレムに変化し、ティガの姿と声は俺だけが認識できる状態に変化する。
『トビィ。今回の坑道探索のモードはどうしますか?』
「今回はソロモードにして、サクサクといく予定だ。ハンネの奴が集めてきた情報通りなら、第二坑道・ケンカラシでのパーツ集めは最低限にしておいた方がよさそうだったからな」
『ブーン。まあそうですね。トビィには解放されていないコンテンツなので詳しくは話せませんが、確かにそうだとは思います』
ゴーレムの調子を確認。
全身各部滞りなく動く。
オークレッグの太さについても、腿の内側同士でする事はないようなので、問題なし。
「ただ、ヴァイオレット以上の魔物は積極的に狩るけどな」
『ブーン。今後のためですか?』
「ああ、今後のためだ。俺のプレイスタイル上、早めに獲得しておきたいし、多少無理やりにでも対応するパーツが欲しい程度には、手に入れておきたい特殊弾がある。まあ、俺の運だと何時手に入るかは分からないから、無理までする気はないけどな」
エレベーターに搭乗。
選ぶのは第二坑道・ケンカラシ。
坑道探索モードは前言通りのソロ……敵も味方も居ない孤立無援状態。
そうして俺は二度目の第二坑道・ケンカラシ攻略を始めた。