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27:パープルゴブリン

≪『デビュー』のフッセと探索している坑道が繋がりました≫

「来たか」

『ブン。来たようです』

 フロア2に入ると同時に見たことがない表示が出てきた。

 どうやら俺以外のプレイヤーが何処かに居るらしい。


『タイミングは……完全同時ですね。あちらも今、フロア2の探索を始めたところでしょう』

「ふうん。という事は、あちらも魔物を倒し、マテリアルタワーの採掘をしながら、こっちを探すという感じか」

『ブン。そうなります。奇跡的に探索場所が噛み合わなければ、そのままお互いに次のフロアに向かう事もあり得るかもしれませんが』

 これは坑道の探索モードをバーサスにしている影響で、こうして自分以外のプレイヤーと探索する坑道が重なり、戦う事が出来るようになるのだ。

 で、バーサスモードではフロアにある他のもの……魔物、マテリアルタワー、レコードボックスが取り合いになるらしい。

 なので設計図的には美味しく無く、マテリアルと緋炭石的には勝てれば総取りになるので美味しい。

 と言うモードになるようだ。

 うん、とりあえず今回の探索が終わったら、次はソロで潜っておこう。

 設計図がまだまだ足りない状態なのだし。


「それはあり得るかもしれないが、俺が選ぶことはないな。ガンガン探索していくぞ」

『ブン。デスヨネー』

 では探索していこう。

 俺は通路を移動していき、とりあえず一番近い部屋を目指す。


「「「ヂュッヂュアッ……」」」

「おおっと、こいつはヤバいな……」

 そして部屋の中を窺い、見えたものを正しく認識したところで思わず通路に戻った。

 部屋の中に居たのはパープルゴブリンが三体。

 それは俺の想定の範囲内。

 問題は奴らが持っているもので……二体は岩で出来た筒のようなものを持ち、一体は岩で出来たクロスボウを持っていたのである。

 うん、はっきり言おう。

 筒じゃなくて銃だあれ。

 イグジッターが存在している以上、魔物が使ってくるのも異常ではないのかもしれないが、まさかこんな早々に出て来るとは思わなかった。


「岩で出来ているから分かりづらいが……マスケット銃に近いか?」

『ブーン。よく分かりますね』

「「ヂュアッ!!」」

 俺は再度部屋の中を窺おうとし……そのタイミングで早速、銃持ちが俺の方に向けて発砲。

 独特の破裂音と共に礫が放たれ、認識加速があってもなお速いと言える速さで迫ってくるそれを、俺は通路に頭を戻すことで回避する。

 なお、矢も遅れて飛んできていたが、銃と一緒なら静穏性以外は下位互換である。


「んー……」

 と言うか、部屋の中で胸辺りを狙って撃たれたら、確実に喰らうな。

 で、肝心の銃の形状は……やっぱりマスケットぽいな。

 となれば単発銃の可能性が高いが……ファンタジー補正の類でもって、連発が可能になっている可能性もあり得ると思って動くか。


「これでも色々なゲームをやっているからな。さて行くか」

「「「ヂュヂュアアァッ!」」」

 俺は通路から転がり出る。

 すると案の定、通路の入り口近くに二発の礫と一本の矢が突き刺さった。


「よっと」

「「「!?」」」

 攻撃をしたパープルゴブリンたちは非常に手慣れた手つきで弾を装填している。

 それを確認した俺はモロトフラックから火炎瓶を取り出すと、起き上がりながら投擲。

 投げた火炎瓶は真っすぐにパープルゴブリンたちの中心に落ち……


「「「ヂュアアアァァァッ!?」」」

「暴発の類はなしか。やっぱり火薬じゃなくて魔力作動による銃だな。つまりはファンタジーだ」

 三体のパープルゴブリンを巻き込むように燃え上がる。


「まあいい。急いで殴らないとな」

 三体のパープルゴブリンは炎を消そうと地面を転がり回っている。

 当然こちらを狙えるような状態ではない。

 遠くから銃声のようなものも聞こえてきているし、急いで仕留めてしまうとしよう。


「ふんっ、せいっ、おらぁっ!」

「「「!?」」」

 という訳でサクッとパープルゴブリンたちの頭を殴り潰していく。

 うん、これで無事に終わったな。


≪生物系マテリアル:肉を1個回収しました≫

≪設計図:マスケットガンを回収しました≫

≪生物系マテリアル:肉を1個回収しました≫

「おっ、出たか。マスケット銃」

『ブーン、使うんですか?』

「使わないな。使わないが……」

 回収物が表示される。

 が、俺はそれを見つつも、銃声がした方へと目を向ける。


「俺が使わなくても相手が使ってくるからな。性能や癖を知るために握って、練習で使うくらいはある」

『ブン。そして最後は殴って壊すんですね』

「だな。どれぐらい殴れば破壊出来るかは俺にとっては重要な情報だ」

 そちらにあるのは一本の通路。

 銃声がしたという事は、撃ったのがプレイヤーであれ魔物であれ、誰かがあちらに居るのは間違いないだろう。


「見つけましたわ。貴方が『ヒヨッコ』のトビィですわね」

「そういうお前が『デビュー』のフッセだな」

 そして、その通路から出てくる人影が一つ。

 だが人間ではなく、蛇目だが人間に近い顔を持つ頭部、人間のものによく似た両腕、コボルトのものと思しき胴体と脚で構成されたゴーレムである。

 カラーリングは赤と黄色……いや、金か?

 花っぽい柄も施されていて、どことなく気品がある。

 で、注意するべきは……両手に一本ずつ持っているマスケット銃。

 先ほどの銃声の音源はアレだろう。


「おーっほっほっほ! さあ、私様のお相手をしてもらいますわよ!!」

「そりゃあ、こっちのセリフだ!」

 そうしてフッセはマスケット銃を構え、俺はフッセに向かって真っすぐ歩き出した。

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