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25:銅の武器

「銅か。一発で粉砕なんてレベルではないだろうが、岩と違って相打ちとはならないだろうな」

『ブン。岩よりも強力であるのは確かです』

 三体のパープルコボルトの内、盾持ちの槍と片刃の曲剣は岩ではなく、茶色に輝く金属で出来ている。

 色のイメージから見て、銅製と考えていいだろう。

 で、銅の扱いと言うと……ゲームだと、それ単体で武器として使える金属の中では最弱のイメージがあると言えばある。

 ついでに言えば、だいたいワンランク上に青銅、その上に鉄、鋼、そしてファンタジー特有の強化が施された銀を始めとする貴金属、宝石、幻想金属とでも称するべき金属が入っているイメージがある。

 細かいところはともかく、凡そはこれで合っているはずだ。

 そして、俺のイメージが合っているか否かに関わらず、岩よりも格上であることは確か。

 弓と言う遠距離持ち共々警戒はするべきだろう。


「「「グルアアァッ!」」」

「来るか」

 パープルコボルトたちが動き出す。

 岩の盾と銅の槍を持った個体は真っすぐにこちらへと盾を構えながら突っ込んでくる。

 銅の曲剣を持った個体はその斜め後ろで、前に続く形で突っ込んでくる。

 弓持ちはその場から動かず、岩の矢じりが付いた矢を弓につがえ、こちらを狙ってきている。

 対する俺は部屋に一歩踏み込んだところで構えているわけだが……。


「これでどう動く?」

「「ッ!?」」

 俺は二歩退いて、通路へ完全に入る。

 通路の幅はパープルコボルトが二体並んで歩くことは出来るが、戦えるほどではない広さなので、これで俺を追ってくるのなら一体ずつ前に出てくるか、つっかえる事を覚悟しなければいけない。

 弓持ちにしても、誤射の危険性が一気に増すことになるだろう。


「グルアッ!」

「おっと……そして、ホワイトと違ってパープルはやっぱり考えて来るな。あまりにも不利過ぎる環境には自ら飛び込んではこないか」

 後ろのパープルコボルトから矢が放たれる。

 が、発射の瞬間を見ていることで認識加速が入り、俺は難なく避けることに成功。

 で、前衛となるパープルコボルトたちは通路には入らず、盾持ちは通路の出口でしっかりと足を開いて盾を構えているし、剣持ちは盾持ちから少し離れて最高速に達した所で剣を振れるように構えている。

 弓持ちも既に次の矢をつがえているし……。

 頭いいなこいつら。

 下手なゲームだと全員遠慮なく突っ込んできて入れ食い状態になるのに、数と地形の利をよく分かっていやがる。


「ま、それならそれ。やっぱりモロトフラックは作っておいて正解だったと言うだけだ」

「ギャイン!?」

「「バウバウッ!」」

 俺は盾持ちに向けて火炎瓶を投げつける。

 火炎瓶本体は難なく盾で防がれたが、何も問題はない。

 ぶつかった場所を起点として燃え上がるので、盾持ちを巻き込むように炎上。

 盾持ちは叫び声を上げながら地面を転がり、火を消そうと必死になっている。

 その間、他のパープルコボルトたちは俺のことを非難するように吠えるが、俺はそれを無視。


「行くぞおらぁ!」

「「バウッ!?」」

 俺は岩と言うマテリアルの耐火性を信じて、火炎瓶で燃え上がっている範囲へ進入。

 無事に炎の海を踏み越えて突破。

 剣持ちに向かって真っすぐに歩いていく。


「「バウアッ!」」

 対する剣持ちは逃げるのではなく迎撃を選択。

 弓持ちも剣持ちを支援するように、こちらに向かって矢を放つ。

 はっきり言おう、この時点で俺の勝ちはほぼ決まった。


「甘いな」

「「!?」」

 弓持ちが矢を放つ瞬間を捉えていたおかげで、俺の認識が加速される。

 認識加速は矢だけではなく、他の全てに対して有効なものであるため、剣持ちが振るう剣もまた、飛んでくる矢と同じように減速して見える。

 なので俺は剣持ちの剣をボクシングのスウェーのように上体を少しだけ反らすことで、紙一重の回避。

 また、矢の軌道も既に確定……こちらの頭に向かってきているの、矢の軌道上に片腕を置くことで防御。

 その上でもう片方の腕を引き絞り……。


「うおらあっ!!」

「バギュ!?」

 曲剣を振り切って隙だらけの姿を晒している剣持ちの顔面へと全力のストレートを叩き込む。

 うん、感触からして首の骨が逝ったようなので、トドメは不要だな。


「前衛の居ない弓持ちなんざ怖くねえよなぁ!!」

「ギャイン!?」

 素早く接近して、続けて弓持ちも始末。


「で、残るはお前一体。じっくり焙ってやってもいいが……」

「グルルル……」

 さて、この間に流石に鎮火したらしく、盾持ちが復帰。

 だが、全身に火傷を負っているし、仲間もいない状態なので、脅威度は低い。

 なら、俺好みの方法で倒せばいい。


「おらぁ! カルシウムが足りてねえんだよ! お前らは!!」

「ギゴッ!?」

 と言う訳で、敢えて盾の上から体重を乗せるように殴りつけ、盾を持つ腕を衝撃で折る。

 ああ、相手の守りを殴る事で無理やり突破するというのは、やはり気持ちがいいものだ。

 で、それから盾持ちの腹を殴り飛ばして撃破。

 最後っ屁として銅の槍が突き出され、避け切れず、脇下が僅かに欠ける事となったが、これぐらいならば矢が当たった腕と一緒で、自動修復で直せばいいだけだろう。


≪生物系マテリアル:肉を1個回収しました≫

≪生物系マテリアル:骨を1個回収しました≫

≪生物系マテリアル:皮を1個回収しました≫

「あ、生物系に皮もあるのか。ふうん……」

『ブン。お見事です』

 無事勝利だ。

 俺は回収したマテリアルを確認しつつ、エレベーターを発見。

 第一階層には他に何もなかったようなので、俺はエレベーターに乗った。

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