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2:アバター設定

本日二話目になります。

『『Scarlet(スカーレット) Coal(コール)-Meterra(メテラ)082』へようこそ』

 俺はサービス開始時刻になると共に『Scarlet(スカーレット) Coal(コール)-Meterra(メテラ)082』を開始した。

 開始直後の空間は……床も天井も金属製の板を張られた、工場あるいはラボのような空間。

 そこに登録用の一時アバター状態の俺と緋色に光る球体……登録サポートのAIが居る状態だ。


『情報の入力をお願いします』

「本当に国民番号を求めてくるのか。知らずに入って、この時点で拒否しそうな奴はそれなりに居そうだな」

『全ての項目が入力されない限り、ゲームにはログインできません』

 俺の前に情報入力用の画面と各種規約が表示される。

 事前に調べた通りなので俺にとっては問題ないが、ここでバックする奴は……それなりに居そうだ。

 後ろ暗い事がある連中ならなおさらだろう。


『入力を確認しました。虎蜂スバル様で間違いありませんね』

「ああ、間違いない」

 流石は国家運営。

 俺の国民番号から、俺の本名をきちんと引っ張ってきたか。


『ゲーム内で使用するアバターの作成に移ります。なお、このアバターは街でしか使いません』

「だろうな」

 スカーレット……メテラ082のメインは坑道の探索だが、坑道ではゴーレムを操る。

 であるから、今俺の目の前に表示されている、一般的評価として綺麗な見た目をしている女性アバターの活躍機会が限られているのは当然の事だろう。

 さて、弄っていくか。


「名前はトビィ。見た目は……メッシュを入れられるなら、いつも通りでいいか」

 名前はいつも通りに(トラ)(bee)からトビィ。

 そうして名前を決めると、俺の手によって女性アバターの姿が変わる。

 髪の毛は黒から金髪に、ただ、黒のメッシュも幾らか入れて、虎柄のようにする。

 目の色も茶色から赤色にする。

 これで目が目立つようになって、喧嘩の一つでも売られるようになれば面白いところだが……そこはゲーム全体の空気次第か。

 後は……どうでもいいか。

 どうせ、メインで使うものじゃない。


『トビィ様ですね。作成アバターデータに問題なし。登録完了です』

 後、これもどうでもいい話だが、ゲームにおける名前被りの問題はここ数年で完全に解決されていると言っていい。

 と言うのも、元々オンラインゲームで名前被りを禁止していたのは、プレイヤー同士のやり取りにおいて名前が被っていると区別が難しく、それを防ぐためだった。

 特に問題になるのがトラブルがあった時で、無関係の人間を巻き込まないためにも、間違いなくその人物であると特定できる要素が必要だったのだ。

 が、現代では表向きに表示される名前とは別に、少しきちんと調べれば誰でも見える形で個別IDがあるゲームが主流となったし、AIやサーバーの発達で監視も容易になった。

 なので、名前が被っても問題なくなったのである。

 以上、嘘か真かは知らないが、メテラ082を薦めてきた友人からの情報である。


『では続けてサポートAIの名前と外見を決定してください』

「サポートAI?」

 俺の前に新たな画面が出てくる。

 どうやらメテラ082ではサポートAIと言う、ゴーレムの操作中にプレイヤーにだけ見える形で各種サポートをしてくれるパートナーが一人につき一体、用意されるようだ。


「ほーん、色んな姿があるし、ずいぶんと細かく……アバターよりよほど拘れるじゃねぇか」

『プレイスタイルにもよりますが、人によっては街中で扱うアバターよりもよほど長く目にすることになりますので、拘れるようになってます』

「なるほどな」

 選べる姿は正にありとあらゆる姿と言っていい。

 光球、人間、犬、猫、鳥、妖精、幽霊、矢印、円、魚、蠅、ありとあらゆる素体が用意されているし、カラーリングの変更、縮小拡大、声の高低に口調、サポートの頻度や内容、あらゆる調整が可能なようだ。

 人によっては此処で数十時間とかけて、理想の相棒を作り上げる奴も居そうだ。


「ま、細かい部分は後から調整すればいいか。名前はティガ。見た目は……これでいいな」

『承りました』

 とは言え、俺はそんなにこだわる方ではない。

 なので、この手のペット枠とも言えるものではいつも選んでいる奴を選ぶように、サクッと作ってしまう。

 という訳で完成。

 光球の姿が俺の設定した通りの姿へと変貌していく。


「ティガです。よろしくお願いします。トビィ様」

「おう、よろしく頼むな。ティガ」

 出来上がったのは、体長10センチほどの蜂だ。

 体色は黄色と黒の一般的なもので、デフォルメの類は一切なし。

 人によっては嫌悪感を抱く姿だろうが、俺にとっては本名もあって親しみのある姿なので、何も問題はない。

 これで喧嘩を売ってくれるなら、むしろバッチコイと言うものだ。


「これにて設定は完了です。それではトビィ様。『Scarlet(スカーレット) Coal(コール)-Meterra(メテラ)082』をお楽しみください」

「あいよっと」

 俺の意識が作成したアバターに移動する。

 ティガも俺の近くへと、独特の羽音を立てながら飛び寄ってくる。


「ではトビィ様。チュートリアルを始めますか?」

「少し待ってくれ。まずは準備運動からだ」

 プロローグの類はチュートリアルと共にであるらしい。

 では、先に軽く準備運動。

 ゲーム内であっても、スムーズに体を動かせるようにするという意味で、準備運動は大切なものだ。

 まあ、メテラ082ではここから更にもう一回ダイヴをするような感覚のゲームだが、やっておいて損にはならないだろう。

 また、準備運動ついでに自分と周囲を見る。


 自分については、アバターが身に着けている服は質素なジーンズにTシャツと言う、無課金始めたて丸出しなものだ。

 これを変更するには、課金するか、ゲーム内通貨であるSC……ストレインコインとやらで服を購入する必要があるらしい。

 初心者丸出しでは絡んでくるのもつまらない連中ばかりだろうし、後である程度は見た目を整えておこう。


 周囲については、ラボのような場所に居ることは変わりない。

 けれど、いつの間にか緋色に輝く球体を胸に持った、岩で出来た人形が立っている。

 全身が粗削りの岩で出来ていて、支えるものもくっつけるものもなさそうなのに、筋骨隆々あるいは着ぶくれした人間の姿に近い形を保っている。

 どうやらあれがゴーレムであるようだ。


 準備運動が終わり次第、チュートリアルからこなしていくとしよう。

01/26誤字訂正

01/27誤字訂正

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