16:特殊弾
本日四話目です。
「特殊弾とは、簡単にまとめてしまうならば、使い捨てである代わりに強力な弾丸です。詳しくは文章でまとめておきましたので、後で読んでください。トビィ」
「なるほど。ファンタジー系統なら使い捨てのマジックアイテム、FPS系統なら弾数に限りがあるロケランや爆薬みたいなものか」
「ブン。その認識でもおおよそ間違っていないです」
どうやら特殊弾はかなり有用なアイテムであるらしい。
この先の坑道は第一坑道・レンウハクなど比較にならないほどに難易度が上がるだろうし、それに対処するためには強力な武器だけではなく、数に限りがある手段も適宜使っていかなければいけない、という事なのだろう。
「しかし、特殊弾という事は? 銃系統の強化しか出来ない感じか?」
俺はティガが渡してくれた特殊弾についての資料を読み込んでいく。
ああうん、これは実物を確認しながら照らし合わせていかないと、把握するのは難しそうだな。
「ブブ。銃かどうかは関係ありません。特殊弾と言うのは多くの設計図が薬莢状の物体を生成するからであり、特殊弾には様々な種類があります。中にはトビィの好む殴るという行為を強化するのに適した特殊弾もあるでしょう」
「みたいだな。資料にもそう書かれてら」
頭を軽く掻きながら、俺は先ほど入手したばかりである設計図:特殊弾『緊急脱出弾』と設計図:イグジッターのフレーバーテキストを表示してみる。
△△△△△
緊急脱出弾
種別:特殊弾
形式:時空-魔術-境界-脱出
作成者の操るゴーレムに撃ち込むことによって、現在探索中の坑道から脱出、ラボに転移させる特殊弾。
詳細な原理は不明。
本来ならば希少なマテリアルと大量のエネルギーを必要とする行為だが、複数の制限によって作成に必要な物質量の大幅な削減に成功したようだ。
≪作成には同一の鉱石系マテリアルが10個、特定物質:緋炭石が100個必要です≫
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イグジッター
種別:パーツ
部位:武装
対応:時空-魔術-境界-脱出-『緊急脱出弾』
『緊急脱出弾』専用の、小型単発拳銃。
銃としては威力が低く、その割に大きな音が鳴る。
特殊弾である『緊急脱出弾』を装填、発射する以外の用途には向かないだろう。
≪作成には同一のマテリアルが30個必要です≫
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「この形式ってところが一致さえしていればいいんだな」
「ブン。ですが、現在のトビィが持っているパーツで特殊弾に対応しているのは、イグジッターを除けば、パープルハウンドから入手したハウンドヘッドのみです」
「みたいだな。こりゃあ、完全にガチャか」
特殊弾には形式と言うものがある。
これはどうやら、属性、原理、起点、効果の四つを示したものであるらしい。
で、パープル以上の魔物から回収できるパーツの設計図にも対応と言う項目があり、パーツの対応と特殊弾の形式が一致すれば、装填、使用する事が出来るようだ。
実際にどうやって使うかは……パーツと特殊弾次第のようだ。
イグジッターは拳銃なので、シンプルに引き金を引くだけだが、剣なら刃を相手に当たる、盾なら相手の攻撃を防ぐ、脚ならプレイヤーの意思で起動したり踏み込みに合わせてとか、一つ一つ異なるらしい。
「ブーン。ガチャですか……。まあ、否定はできませんね。特殊弾の形式もパーツの対応もランダム性が高いですから」
「だろ? まあ、街の方で幾らかの設計図は購入できるし、プレイヤー同士で融通しあうのもありだしで、酷い事には……高望みをしなければならないか。たぶんだけど」
「ブン。高望みしなければ大丈夫だと思います。高望みすれば、所謂、沼ですし、掘りをする必要がありますし、炭鉱夫? とやらにもなる必要はあるかもしれませんが」
「なんか昔のゲームであったらしいな。理想の装備品のために何千時間費やすとか。それを炭鉱夫と言ったらしい」
なお、特殊弾の形式についてはよく見ておいた方がいいらしい。
属性については今は関わりが少ないからそこまでではない。
だが、原理については生物と言うカテゴリーだと鉱物系マテリアルで作られたゴーレムには効果が薄い、という事があるようだ。
また、起点が外部なら弾が当たった先、内部なら弾そのもの、境界なら弾と接触した場所、と言う具合に差があるようだ。
効果については言わずもがなで……効果の種類については、総数の把握は当分されないだろうと資料には書かれていた。
「とりあえずハウンドヘッドと菫キパの落とした軽量弾についても見ておくか」
「ブン。それがいいでしょう」
では、折角なので、他にも見ておくべきものは見ておこう。
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ハウンドヘッド
種別:パーツ
部位:頭部
対応:物理-生物-外部-ダメージ
犬の頭部を模して造られたゴーレムの頭部。
鋭い牙と大きな口は相手の肉を捕らえて離さない。
≪作成には同一のマテリアルが10個必要です≫
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軽量弾
種別:特殊弾
形式:物理-物理-内部-射撃
相手に与える衝撃とダメージはそのままに軽量化、射程の大幅な延長を実現した特殊弾。
まるで羽毛のように軽い弾頭は、どこまでも真っすぐに飛んでいく。
風などに煽られなければ、だが。
≪作成には鉱石系マテリアルが1個、特定物質:緋炭石が3個必要です≫
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「ハウンドヘッドは作っておくか。初期のよりは絶対にいいはずだ。軽量弾は……対応するパーツが手に入ってからだな」
「ブン。そうなりますね」
なお、一つ重要な事として、ホワイトハウンドから落ちたハウンドヘッドも、パープルハウンドが落としたハウンドヘッドも、特殊弾に対応しているという一点を除けば、性能は同じであるらしい。
どうやらスコ82は強力な装備ではなく、適切な立ち回りと特殊弾の使用によって優位に立つことを推奨しているようだ。
ついでにモロトフラックも見ておくか。
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モロトフラック
種別:パーツ
部位:武装
火炎瓶を内部で自動生成する
火炎瓶は強い衝撃を受けると割れ、割れた場所を中心に火炎属性のダメージと燃焼の状態異常を与える領域を60秒間生成する。
破損するほど強い衝撃を背負子が受けると、背負子の中の瓶は割れてしまう。
≪作成には同一のマテリアルが10個必要です≫
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「……。やっぱりこっちも作っておくか。便利そうだ」
「取り扱いには注意を。トビィ」
うん、便利だこれ。
色々と悪用できそうな気がする。
「さてこれで特殊弾とパーツについては見たし……」
「街坑道・ヒイズルガへ向かいますか?」
「その前に称号。後は取引所だな。たぶんだが、アバターパーツの類とかあるんだろう?」
「ブン。ありますね。では、そちらについての文章を送っておきます」
では、期せずして次の坑道探索の準備が整ったところで、別の事を始めるとしよう。