<< 前へ次へ >>  更新
15/29

15:脱出ポッド

本日三話目です。

『さて、これが脱出ポッドだな。中に入ればいいのか?』

『ブン。中に入れば、脱出シーケンスが始まります』

 俺は菫キパの部屋から脱出ポッドの部屋に移動。

 部屋の中心に置かれている円筒形の物質の中に入る。

 脱出ポッドは四体のゴーレムが入れる程度のサイズであり、俺が入ると同時に30秒のカウントダウンが始まっている。


≪第一坑道・レンウハクからの脱出をします。カウントダウン開始……30……29……≫

『これ、カウントダウン中に降りたり、攻撃を受けたりしたらどうなるんだ?』

『ブーン。長いので文章を送っておきます』

『分かった。読む』

 さて、ティガが送っていた文章曰く。

 脱出ポッドのカウントダウンが始まった後に降りてもカウントダウンは止まらず、乗り損ねると脱出失敗で、異常化した坑道によって押し潰されて死に戻りになるらしい。

 また、魔物に乗り込まれても脱出失敗で死に戻り。

 脱出ポッド自体もカウントダウンが始まってからは破壊可能な物体になるため、脱出ポッドが破壊されたら死に戻り。

 とにかく脱出ポッド周りは脱出に成功するか、失敗して死ぬかの二択になるようだ。


『なるほど。敵を殲滅するか、見つからないように動くか、飛んでくる攻撃を防ぐか、と言うところか。菫キパなら図体と能力の都合上、放置でもいいかもしれないが、次の坑道からは注意を払う必要がありそうだな』

『ブン。トビィの言うとおり、脱出に当たっては細心の注意を払うべきでしょう』

 今回は第一坑道・レンウハクの第三階層の魔物は殲滅済みであるから問題は無いが、今後坑道の難易度が上がって来たら、対策を色々と考える必要がありそうだ。


≪3……2……1……脱出≫

『と言うか、扉が閉じたりしないのか。これだと脱出ポッドじゃ無くて、脱出用転移装置とでも言った方がよさそうだな』

『ブン。否定はしません』

 カウントが0になると同時に、浮遊感と共に体が上昇していくような感覚を俺は覚える。

 脱出ポッドの外では、何かが線のように見えている。

 相当のスピードが出ているようだ。


『着いたか』

『ブン。着きました』

 やがて俺の体は第一坑道・レンウハクに突入する前に居た場所……自分のラボへと現れ、着地した。


≪第一坑道・レンウハクからの脱出に成功しました≫

≪インベントリのアイテムをラボの倉庫に移送します≫


≪第一坑道・レンウハクの踏破を確認≫

≪初回踏破報酬として設計図:特殊弾『緊急脱出弾』が与えられます≫

≪初回踏破報酬として設計図:イグジッターが与えられます≫

≪初回踏破報酬として称号『ルーキー』が与えられます≫


≪第一坑道・レンウハクの番人、ヴァイオレットキーパー・レンウハクの撃破を確認≫

≪称号『ヒヨッコ』が与えられます≫


≪チュートリアルの達成を確認≫

≪街坑道・ヒイズルガへの進入許可が与えられます≫

≪第二坑道・ケンカラシへの進入許可が与えられます≫

≪特殊弾生成機がラボに設置されます≫

≪取引所にアクセスできるようになりました≫

≪掲示板にアクセスできるようになりました≫

≪図鑑にアクセスできるようになりました≫……


『ZZZ...ZZZ...』

『トビィ?』

『んがっ? ああ、悪い。ティガ。なんか急に大量のログとアナウンスが流れたからか、つい眠たくなっちまった』

『……』

 そして眠くなった。

 大量のログだけならよかったのだが、アナウンスのせいで動けず、暇になり、眠くなってしまったのだ。

 まあ、仕方がない。

 これが俺だしな。


『トビィ、ログは出しておきます』

『おう。あー、色々と出ているなぁ……』

 どうやら第一坑道・レンウハクの突破によってチュートリアルを完了したことになり、チュートリアルを完了したことによって各種機能が解放されたようだ。

 ただ、あると思っていた機能が見当たらない辺り、まだ未開放の機能もあるようだ。


『ティガ、この後の推奨行動は?』

『街坑道・ヒイズルガに一度移動することをお勧めします。他のプレイヤーが大きく関わる機能については、街坑道・ヒイズルガに移動することをトリガーとして開放されますので』

『なるほど』

 どうやら未開放の機能……フレンド機能、多人数で一緒に坑道へ潜る、と言ったものは街坑道・ヒイズルガとやらに移動してからであるらしい。

 他プレイヤーと関わった事がない奴には不要な機能という事なのだろう。


『街坑道・ヒイズルガに移動するためには、ゴーレムの体ではなくアバターの体に操作対象を変更する必要があります』

『街では戦闘も掘削もありませんから、という事か?』

『ブン。そういう事ですね』

 俺はベッドに寝ているアバターに近づき、手をかざす。

 するとアバターからゴーレムに移った時と同じような感覚を伴って、俺の意識がアバターに移動する。


「ブン。意識の移行完了です。トビィ」

「みたいだな」

 違和感の類はなし。

 ただ、自由に飛び跳ね、走り回れるというのは、それが出来なかった状態からだと、なかなかに来るものがあるな。


「ではトビィ。街坑道・ヒイズルガに移動しますか? 第一坑道・レンウハクの時と同様にエレベーターに乗れば直ぐです」

「いや、先に解放された機能や、第一坑道・レンウハクで回収したものの確認だな。特に特殊弾とやらについては今すぐ知っておきたい」

「ブン。分かりました。では、トビィの要請に従って、特殊弾について説明します」

 では、体が物理的に軽くなったところで、特殊弾について知るとしよう。

<< 前へ次へ >>目次  更新