第三十話 「 」
長いです。時間のある時に読んで頂ければ嬉しいです。
居るはずの無い女王を目にして、ヘリアンはエールを派手にぶち撒けた。
慌てて手拭いらしきものを取り出すレイファに、『何でもない』とヘリアンは掌を向ける。
実際にはなんでもないどころか大惨事。しかもこれで三度目だ。そろそろ鉄板ネタになりつつある。自分はこの姉妹の前では飲み物を噴き出さざるを得ない呪いにでもかかっているのだろうか。
「げほ、す、すまん……大丈夫だ、ちょっと
「……は、はぁ」
ちょっとどころではないむせ方にレイファは怪訝な顔を向けてきたが、追求されることを嫌がっている空気を察してか、すんなりと引き下がってくれた。
一方、自前のハンカチでカウンターを拭くヘリアンは混乱の極致にあった。
(何故だ……!?)
何故こんな場末の酒場に高貴な女王様が居る。
場違いにも程があるだろう。
しかもそれが隣の席に座るなど、どんな偶然だ。
神様とやらが本当にいるなら呪ってやりたい。
隠蔽のローブによる認識阻害効果があるので自分の正体がバレる可能性は低いが、至近距離に既知の顔があるというのはひどく落ち着かないものだった。
「あのー……」
「な、なんだろうか?」
レイファが遠慮がちに声をかけてきた。
もしや正体を看破されたかと、ヘリアンは身を固くする。
「メニュー表って、そちらにありますか?」
「……いや、その類のものは無いらしい」
「えっ」
「無いんだ、メニュー表。この店には」
「……斬新ですね」
異世界の常識でもメニュー表は存在するらしい。
新たな知識を仕入れつつ、やはりこの店のオーナーは頭おかしいか懐古主義者だろうとアタリをつける。
「やあご新規さん。他の皆さんはどうしたんですかい?」
「まだ二階の部屋で話し合いをしてます。なかなか詳細が纏まらないものでして」
カウンター奥の店主とレイファが、しばし取り留めのない会話を交わす。
その会話内容から察するに、ラテストウッドの使者御一行様は、戦後処理の細部すり合わせの為に前乗りして、この酒場兼宿屋に宿泊しているようだった。
もっと良い宿を選んでくれと泣き言じみた文句を言いたくなったが、建国祝賀祭で人が集まり、容量オーバーの人口を抱えている状態だったことを思い出す。どこの宿も満員だったのだろう。
「しかし揃いも揃ってフードの御一行てのは珍しいねえ。第六軍団の関係者で?」
「第六……? えぇと、多分違うんですが、そこには触れないで頂けるとありがたく……」
「はぁ。まあ構いませんがね」
ああ、そうか。
彼女の姿がアルキマイラの民の目に触れたことはない。
ラテストウッドの女王の姿を知っているのは、軍団長クラスや第六軍団の一部の魔物だけだ。正体を隠すには、フードを被る程度の変装で事足りるということか。
「んで、注文はなんになさいやすかい? 飲み物ならキンキンに冷えたエール。食事ならコカトリスの天ぷらか、ワイルドボアの燻製煮込みがオススメでさあ」
「では、てんぷら? というものを頂けますか。飲み物はアルコールが無いものをお願いしたいです」
「ここは酒場ですぜ?」
「酒場兼宿屋ですよね? そのように売り込まれたのを覚えています」
「むぅ……んじゃ、ホワイトアップルの搾りたてジュースなんてのはいかがですかい? 本当は果実酒用なんですがね」
「お手数をかけます。ではそれで」
店主はしばらくすると、作り終えた注文の品をレイファの前に置き、別のテーブルへと走っていった。客の数に対して店員の数が足りていないらしく、慌ただしく各テーブルを行き来している。
「賑わってますね」
気を利かせたのだろうか。
見慣れぬ料理に悪戦苦闘しながらも、レイファが話を振ってきた。
「立派な王を戴く国の住民は、皆幸せそうに見えます」
話題に選ばれたのは、至る所で名を呼ばれているこの国の王のものだった。見知らぬ者同士の共通の話題として、場に即した選択だとは思う。
――だが、ヘリアンはどうしようもない苛立ちを覚えた。
「本当にご立派な方です。私もあの方には深く感謝して――」
「……どこが?」
「え?」
「アレのどこが、立派な王だと言うんだ」
呟きは自分で思ったよりも低い声になった。
「……皆アイツに騙されているだけだ。名だたる魔物達が揃いも揃ってあんな男に付き従っているのが不思議でならない。ゴブリンさえ倒せない最弱の人間だぞ」
胸の内の淀んだ思いが、口から吐き出された。
「ああ、そうだとも。アイツはそんな立派な男じゃない。何処にでもいる、臆病で弱いただの人間だ。それがご大層な演説をしたかと思えば、ラテストウッドの国民を救い出せだと? ハッ、何を偉そうに。自分じゃ出来ないから代わりに救ってください、の間違いだろうが。矮小な人間の分際で、虎の威を借りてよく吠える」
一度口にしてしまえばもう止まらない。
ドロドロとした感情が堰を切ったように溢れ出す。
「戦争後にラテストウッドの国民の治療を施したのだって、あの国の女王に恩を押し付ける為だろう。いや、そもそもアイツは約束を果たせなかった。その後ろめたさを誤魔化す為にやったに決まっている。そんな奴が慈悲深い王? 笑わせる。本当に慈悲深いなら、出会った当初に救いの手を差し伸べて然るべきだろうに」
抑えることなど出来ない。
歯を食いしばり続けるのにも限度がある。
積もりに積もった重圧はヘリアンの――三崎
「統治の件だってそうだ。恩着せがましく自治権を譲り渡した背景にあるのは、本人に統治しきれる自信がないからだ。アイツ自身の政治力なんてスカスカもいいところで、追い詰められれば軍事力にものを言わせた行動しか取れない。そもそも配下を使わなければ街一つ運営することすら出来ないような男だぞ。それで王を名乗るなど片腹痛い」
そうだ。
所詮はプレイヤー同士での交渉など、チャット会話の延長線上でしか無い。
真っ当な政治力なんてものは、ヘリアンは
「立場を笠に着て、他力本願に散々周りを巻き込み、その挙句に他人のあげた手柄をさも自分のもののように喧伝する。あまつさえ自分一人では何も出来ないくせに威勢だけはいいと来た。自らを大きく見せ、そうして出来上がった虚像で国民を騙し、王の仮面を被っているだけの偽善者があの男の正体だ……!」
それは掛け値無しの本音。
胸の内でずっと抱き続け、目をそむけ続けてきた、ヘリアンにとっての真実だった。
「なにが万魔の王だ。なにが超大国の国家元首だ。なにが世界の覇者だ。
口先だけの男がよくも言う――ッ!」
俺はそんな大層なもんじゃない。
至って平凡な、本当に何処にでもいるような、何の取り柄もない、ただの学生でしかないのだ。
それがなんだ。
いつも通りゲームをしていたと思ったら、トラックに撥ねられたわけでもないのに異世界転移させられた。
しかも、国土の殆どを奪われて孤立無援の状況に追い込まれ、精一杯の勇気を振り絞って探索に出向けば、いきなり種族間紛争中の国家の王族と遭遇した。そしてその集落では、出来の悪い三文芝居のような悲劇をまざまざと見せつけられた。
その後の反乱騒ぎにより、臓物飛び散る現場に足を向ければ、死んだ筈の反逆者によって頭蓋を砕かれる羽目になった。復活こそ出来たものの、居城では食事中ですら気が抜けず、休む暇も無かった。
それでも、折れそうになる心を懸命に奮い立たせ、万魔の王を演じて謁見を執り行った。しかしその後、再びラテストウッドの集落を訪れてみれば、滅亡直前のハーフエルフ達に縋りつかれ、結果として多くの人命を背負わされた。
更には、攫われた少女を救い出す為に決死の覚悟で国を纏め上げるのに成功したかと思いきや、ラテストウッドの首都で待っていたのは救いではなく絶望だった。
しかも、まだ三日しか経っていない。
たった三日間でこれだ。
これからは更に多くの騒動が起きるに違いない。
その先頭に立って民を導くのは、何の取り柄も無いハリボテの王だ。
どう考えても上手くいくとは思えない。
これからのことを考えるだけで、恐怖に身体が震える。
だから、もう、俺は、とっくの昔に、限界なんてものを超えていて。
再び歩き出すような力なんて、どこにも残ってなくて。
あろうことか、全ての肉親を失った
――不意に、死にたくなった。
「…………」
目の前の男の醜態に呆れ果てたのか、レイファは黙り込んでいた。
気まずい沈黙が横たわる。ヘリアンの言葉は喧騒に紛れて他の客には届かなかったようだが、レイファの笹耳は全て漏らさず聞き届けたに違いない。
ポツリと、レイファは言葉を零した。
「それでも……万が一仮にそうだったとしても、私があの方への敬意の気持ちを忘れることはありません」
「……何故? どうしてそこまで、あの男を信用するんだ?」
理由が分からずに問えば、レイファは眉尻を下げた微笑を浮かべた。
「あの方は、妹の為に怒ってくれたんです」
――言葉を失った。
それだけ?
たったそれだけの理由で?
「私たちは……とある理由で迫害を受けている種族でして、誰も味方なんていなかったんです」
味方などいない。
信じられるのは自国の数少ない
なら、たったそれだけの優しさすら。
幼い子どもの死に憤る程度の慈愛すら、彼女らが享受することは無かったということか。
身内以外は全て敵。
それが当たり前の境遇で長年生き続けることを強いられた彼女らにとって、突如現れた風変わりな旅人はどう映ったか。
「この土地に来るまでは殆ど奴隷と変わらない扱いをされていて、ようやく安住の地を作れたかと思えば、近くに住んでいた近縁種であるエルフから下等生物として見下されて来ました」
実際にはもっと酷い。
蓋を開けてみれば、神の遺物らしき竜の食料として生かされていただけだった。
奴隷どころか、家畜としか
「しかし、あの方は私達を見下すようなことはしませんでした。それどころか、ノーブルウッドによる長年の迫害から救ってくれました。傷ついた同胞の有様に憤ってくれました。私達はあの方の行いにより救われたのです。これだけは神であろうと覆すことの出来ない事実です」
……たしかに、ノーブルウッドの脅威は消えた。
けれど、間に合わなかった。
間に合わなかったんだ。
本当に救いたかった筈の一人を救い出すことが出来なかったんだ。
なのに、つい先日妹を失ったばかりの少女は、気丈にも微笑みを浮かべて、
「だから、私はあの方に何度でも言うでしょう。
『助けてくれてありがとうございます』と。
『貴方のおかげで救われました』と」
心からの想いであることを示すように。
胸に手を当て、祈るようにして紡がれた感謝の言葉。
不覚にも喉が震え、目の奥が熱くなった。
救われたのは果たしてどちらの方か。
「この国の民でありながら先程のようなことを口にするのですから、貴方にもきっと深い理由があるのでしょう。けれど、あのお方が成し遂げた事については、認めるべきではないでしょうか?」
成果を認めてあげるべきだとレイファは言う。
甘い囁きだ。
自分のような弱い人間にはなおさら効く。
何も考えずその言葉に飛びついてしまいたくなる衝動を、必死に堪えた。
「……他人の力に頼って成し遂げた事ばかりだぞ。
アイツ自身が汗水垂らしたわけじゃない。他力本願もいいとこだ……!」
甘い言葉を享受してはならない。
そんなつまらない反発心から苦し紛れに吐き出されたヘリアンの反論を、
「それの何が問題なのですか? 王とはそういうものでしょう」
ラテストウッドの女王は、事も無げに斬って捨てた。
「有事に際して、より良い選択を行い、相応しい人材を使って問題を適切に解決する。そうすることで民を導き、国を守り、国を育てる。それが王の仕事です。何もかも王自身の力で成果を上げなければいけない、などという道理はありません。
もしもそのように考える王が居たならば、愚王と言わざるを得ないでしょう。それはとどのつまり、自分を支えてくれている臣を、ひいては国民の力を信用していないということなのですから」
高潔な女王は未熟な王に告げ知らせる。
国民が持つ力もまた、王の力の一部だと。
王が悩むべきは力の在り処ではなく、国が持つ力の使い方なのだと。
「もっとも、指導者としての務めを果たしきれなかった私が、偉そうに言えることではないかもしれませんが」
恥ずかしげな苦笑。
あえて砕けた調子ではにかむのは、身を固くするヘリアンを気遣ってのことか。
「それに、貴方は悪し様にあの方のことを語られましたが……本心ではないのでしょう?」
いいや、それは違う。
先程吐き出された汚泥のような言葉の数々は紛れもない本心だ。
こんな男が王をすべきではないと、出来るわけが無いと、心の底からそう思っている。
「だって、貴方、泣いてるじゃないですか」
「……え?」
馬鹿な、と目の下を指で擦った。
当然、指先は乾いたままだ。
湿り気は欠片もない。
涙は流れていない。
泣いてなどいない。
「世の中には涙を流さず泣く人もいるんですよ。私の妹がそう教えてくれました」
彼女の妹。
今はもう何処にも居なくなってしまった少女。
言葉の真意を問える機会はもう無い。
「このような言い方は失礼かもしれませんが、あの方を批判している貴方は、まるで溺れかけの子供のように苦しげでした。
本心から罵声を浴びせる人というのは、その顔を侮蔑か愉悦の表情に歪めているものです。間違っても、あんな苦渋の表情を浮かべるなんてことは有り得ません」
長年虐げられてきた私が言うのですから間違いありませんよ、とレイファは軽口を叩いてみせた。そんな彼女を直視出来なくて、ヘリアンは俯き、カウンターに視線を落とす。
「それと一つだけ誤解を解いておきたいのですが、王として最も重大な仕事を、あの方は全うされていましたよ」
「……最も重要な仕事?」
なんだそれは。
自分のしてきたことを思い返すが、ヘリアンにはまるで心当たりがない。
道を説く修道女を前にした
「――責任を取ることです」
告げられた言葉は天啓に似ていた。
「あの方は、特にその一点に於いて徹底されていました。文書を交わしたわけでもなく、口約束とも言えないような契約を、遵守せんとして……。
そしてソレが叶わぬとあらば、自らの心身を削ることも厭わずに代償を支払う様を、私は目の当たりにしました。あの方がそんなことをする必要など、本来ならばどこにもなかったというのに……」
姉と交わした契約。
此度攫われたラテストウッドの国民を一人も余さず救い尽くす。
妹と交わした約束。
出来る範囲で助けになる。
どちらも約束を守りきれたとは言い難い。
けれど『守れませんでした、ごめんなさい』で済ませて良いものではない。
一度口にした約束には相応の重みがある。
その結果に対し、責任を負うのは当然の事だ。
人として極々当たり前のことであり、特別なことでもなんでもない。
「きっとそれがあの方の王としての在り方なのでしょう。
“約束したことは何としてでも守り抜き、その結果には己が身で責任を取る”
その信念を体現した、王としての一つの理想像を私は目の当たりにしました」
王の理想像?
一体誰のことを話しているのだろうか。
いや、彼女は今、間違いなく、アルキマイラの国王の事を語っている筈だ。
しかし、当のヘリアン自身には、遠い誰かの話をしているようにしか感じられなかった。
「初めて会ったばかりの他人が偉そうな口を利くようで恐縮ですが……きっと、貴方も誤解しているだけなんです。あの方と直接話すことが出来れば、それが分かると思います」
ならば永遠に分かるまい。
彼女の見ているモノは幻影の類としか思えない。
まるで別人の話を聞かされている気分だ。
……だけど。
だけど、それでも。
他ならぬ彼女が言うのなら。
『助けてくれてありがとう』だなんて――そんな泣きたくなるような台詞を口にしてくれた彼女が、そう言ってくれるのなら。
ほんの少しだけ、自分を認めてやってもいいだろうか。
弱い自分に期待することを、許してやってもいいのだろうか。
「そんな辛そうな顔をなさらないで下さい。
きっといつの日か、貴方にも判る日が来ますよ。貴方なら大丈夫です」
そう言ってレイファは笑いかけてくる。
つい最近見たことのある表情だった。
顔立ちもよく似ている。姉妹なのだから当然だ。
その表情を前にして、不覚にも、視界が僅かに滲んでしまって――。
「泣くのを我慢する必要はないと思いますよ?
私も昨晩は子供みたいにわんわん泣いてすっきりしましたし。
あ、これ内緒でお願いしますね。私も指導者の端くれと言いますか、醜態を知られると色々まずいことになる立場でして」
秘密ですよ、とレイファは唇の前で人差し指をピンと立てる。
すっきりしたなんて嘘だ。肉親を
故に、ヘリアンは天井を向いて、溢れそうになるものを
他ならぬ彼女の前で涙することなど許されよう筈もない。
泣いてなるものか。
「俺も立場上、泣くわけにはいかないんだ……。これでも一応、男だからな」
男は泣いてはいけない。
子供でも知っている万国共通の
世界を
「君こそ、これからもその立場で頑張り続けるのか? 辛かったりはしないか?」
「妹の事を想えば、この程度の辛さなどへっちゃらです。私、これでもお姉ちゃんですから」
……ああ、それは卑怯だ。
いくらなんでもそれは卑怯過ぎるだろう。
最後に残った肉親を失って、辛くない筈がない。
なのに、どこかの集落で見たような、精一杯に作った笑顔で。
『何も出来ないから』と寂しそうに呟き、せめて周りを励まそうと笑顔を振りまいていた少女と瓜二つの表情で、そんな台詞を口にされてしまったら。
――『出来ること』が残っているこの俺が。
こんなところで下を向いているわけにはいかないじゃないか――。
「……強いんだな、君は」
目の前の年下の少女は、様々なものを失いながらも前を向き続けている。
ならば彼女よりも年上で、まだ何も失っていない自分が折れていい道理はない。
少なくとも目の前の少女が頑張っている限り、俺もまた頑張り続ける責任があるだろう。
……ああ、分かっている。
ただの意地だ。
青春をゲームにつぎ込んだつまらない男の、安っぽくてくだらない男の意地だ。
だが、だとしてもこの意地は最後まで貫く必要があると思う。
そのように思う。
そう思うことが、出来たんだ。
「……俺さ」
「はい」
「……本当は、もう、ダメかもって思ってたんだ」
「そんなことはありません」
「……俺みたいな奴が足掻いたところで、どうしようもないって」
「いいえ、道は常に残されてます」
「……だけど、こんなクソ情けない俺でも、応援してくれる人とか、慕ってくれる物好きとか、いるらしくて」
「ならきっと大丈夫です。その物好きさんは人を見る目がありますね」
一つずつ想いを吐き出す。
具体性に欠いた言葉を垂れ流す初対面の男のことを、レイファは丁寧に肯定してくれた。
人によっては『何も知らない他人が適当な事を言うな』と憤ったかもしれない。
けれど、今のヘリアンにとっては、何にも代えがたい祝福の言葉だった。
こんな自分でも頑張ろうと思えた。
だから、前を向き続ける為に、弱い自分に戻ってしまわぬように、他ならぬ彼女に告げておくことにした。
「……だから、俺さ」
「はい」
「もうちょっとだけ、頑張ってみるよ」
「はい。お互い頑張りましょう」
これは誓約だ。
目の前の少女が折れない限り、俺もまた前を向き続けよう。
それが、もう居なくなってしまったあの少女への、弔いとなる事を信じて――。
+ + +
天ぷらを完食した後、「そろそろ戻らないと皆に心配されそうなので」と一礼して、レイファは席を立った。最後まで清廉な振る舞いだった。
ここで出会ったのは偶然だったが、話が出来て本当に良かった。
つい先程まで抱え込んでいた鬱屈した感情は余さず吐き出され、後に残ったのは、なんだかぼんやりとした、悟ったかのような気持ちだけだ。
――無論、気のせいである。悟りなど開いていない。
このような心境の揺らぎで至れる程度のものをどうして悟りなどと呼べようか。
これは寝て起きれば忘れるような一時の感情。
思春期の学生に在りがちな、幻想の自分に酔い痴れる錯覚に過ぎない。
だが、決意したことだけは二度と忘れまい。
なにせ、他ならぬ彼女に対して、そう誓約を交わしたのだ。
誓いは一方的なもの。
誓約を刻んだのは俺一人で、制約を負うのもまた俺だけという、手落ちも甚だしい有様。
それでも、約束は約束だ。
そして約束を守るのは、人として当然のこと。
なら、明日からの自分もきっと大丈夫だ。
大丈夫だと信じよう。
……ふと、城のことが気になった。
勝手に抜け出してきたも同然だったので、リーヴェ達はさぞかし心配していることだろう。そろそろ俺も帰らなければいけない。
精算をして席を立とうとしたところで、肩を荒々しく掴まれた。
「おいおい、日も沈まねえ内にご退店とはシケてんじゃねえか坊主! 今日はめでたい戦勝記念日だぜ。俺が奢ってやっからゆっくりしてけや!」
赤ら顔をしたオークが絡んでくる。
吐く息からはむせ返りそうなアルコール臭が漂ってきた。
「何してんだ酔っぱらい。絡み酒なんてダセェぞ」
「そーだそーだ。引っ込め豚野郎ー」
「けどその馬鹿の言う通りだぞー! 戦勝記念日なんだから呑め呑め!」
「おうよ! こんな祝いの日に呑まねえなんざ我らが王への侮辱ってもんだ。あと豚野郎とか抜かした二人目は後でぶっ飛ばすから覚えてろ! んでだ、それはさておきほれほれ、そんな辛気臭えローブなんか羽織ってねえで、オメエさんもこっち来て俺らと呑めや呑め! ガハハ!」
「お、おい、ローブは引っ張るな、やめっ……!」
制止の声も虚しく、ヘリアンは羽織っていた灰色のローブを……認識阻害効果のかかった隠蔽ローブを剥ぎ取られた。
その下から露となるのは、国の紋章が刻まれた黒の外套だ。
「……………………へっ?」
ローブを剥ぎ取った男はマヌケな声を漏らして硬直した。
囃し立てていた男の仲間達もまた、目にしたものが信じられず揃って目を剥く。
唐突に静まり返った男たちの様子に、訝しんだ周りの者もまた彼らの視線を追い、そして呆けたように口を開けた。
視線の先には一人の青年。
身に纏うのは黒の外套。
背には偉大なる国の紋章。
だがそこには、軍団長であることを示す数字が刻まれていなかった。
数字の無いアルキマイラの紋章を背負える者など、この世に一人しかいない。
誰だ。
問う馬鹿はいない。
国の頂点。唯一無二の絶対者。魔物らを統べし万魔の王。
ヘリアン=エッダ=エルシノーク。
「あー……」
やっちまったな、とヘリアンはため息混じりに声を漏らした。
信じがたい事実を正しく認識してしまった客達は、揃って凍りついている。
先程まで弾けたような喧騒に包まれていた酒場は、いまや早朝の礼拝堂のように静まり返っていた。
そして気の毒な下手人であるところのオークは、酒精で赤く染めていた顔を今や真っ青にしていた。後は黄色になれば一人信号機の完成だな、と馬鹿みたいな感想が思い浮かぶ。
どうやら事ここに至っては、何事もなく帰宅というわけにはいかないらしい。
とことんこの世界は自分に厳しいなと思いつつ、さてどうやってこの場を丸く収めるかとヘリアンは頭を働かせる。
「オ、オーナー?」
沈黙が支配する店内に、思わず口にしてしまったような響きの声が落ちる。
渋みのあるしわがれた声の主に目を向ければ、カウンター奥で呆然と立ちすくむ店主の姿があった。初めて直視した店主の種族はゴブリンだった。
道理で随分しわがれた声だと思っていたが、どうしたことか、その顔には不思議と何処かで見たような既視感がある。
「
どうやら自分の事を指しているらしい。
ヘリアン自らが所有する不動産は幾つかあったが、はてこんな古臭い店を持っていただろうかとしばし頭を捻る。
店主の顔を眺めながら考えていると、ふと掘り起こされた記憶があった。
「オマエ……ひょっとして、ゴブ太郎か?」
ゴブリンの顔は見分けがつきにくいが、確かに面影があった。
ゴブ太郎というのは、ヘリアンがゲーム[タクティクス・クロニクル]で初めて倒したモンスターの名前だ。偶然にもテイム判定に成功した事により仲間に引き入れ、序盤の動乱期では戦場を共にした。
しかし、
引退後は、産業面で活躍する住民ユニットのテストケースとして首都の住民に登録し、とある店の経営を任せていた筈だが……。
「なんでオマエが
「え? あ、いえ、なんでと申されやしても……オーナーから直々にこの酒場を任されやしたもので、こうして切り盛りさせて頂いておりやすが……」
「……は?」
まさか、と古臭い造りの店内を見渡す。
「ひょっとして此処は……『始まりの地の酒場』なのか?」
「え、ええ、そうですぜオーナー。店の看板はご覧になられなかったんで?」
酒場のマークは見たが、看板に書かれた店名は見ていなかった。
どうやら自分で思っていたよりも視野狭窄に陥っていたらしい。
だが店の表に掛けられた古ぼけた看板には、何の捻りも無く名付けた店名である『始まりの地の酒場』という文字が、店の意匠と共に刻まれているのだろう。
「…………プッ、ク、ククク」
腹の底からそんな音が込み上げてきた。
勝手ににやけてくる顔を無意識に右手で覆う。
ああ、何故だろう。抑えきれない感情が自然と込み上げてくる。横隔膜が勝手に震えて止まらない。
「ク、クククク……クハ、アハハハハハハハハハハハハハ――ッ!」
込み上げてくる衝動に身を任せれば、それは笑い声となって溢れ出した。
静まり返った店内に、腹を抱えたヘリアンの哄笑が高らかに響く。馬鹿みたいな笑い声を垂れ流しにして思い返すのは、過日の思い出。
『よっし、改装完了! なかなか良い雰囲気だ。んじゃ、【後は任せた】ぞゴブ太郎。しっかりと【この店】を【守ってくれ】な』
『【了解】しやした』
本当に懐かしい記憶だ。
いつしか場所さえ忘れてしまっていたが、始まりの地に建っていた小屋の老朽化が進んだので、ヘリアンは記念碑代わりに酒場に改装したのだった。
つまるとこ、今自分は[タクティクス・クロニクル]の世界に第一歩を刻んだ場所に立っているらしい。
諦めかけていたところから立ち直らせてもらい、再スタートを切ろうと決意したこの場所が、よりにもよって“ヘリアン”の原点である“始まりの地”とは、一体何の冗談だ。これが天の計らいとやらであるならばたいした趣向である。
自分でも、なんでこんなに馬鹿笑いしているのか分からない。
だが、爆笑している人間の思考なんて、多かれ少なかれ皆そんなもんだろう。
ただ
ようやく収まってきた笑いの波を堪えていると、痛いほどの視線が突き刺さっているのを自覚する。いきなり脈絡も無く笑いだしたのだから当然の反応だろう。発狂したと思われても不思議ではない。
だが、もはやヘリアンが魔物達の視線を恐れることはない。
大口開けて散々笑い倒したおかげか、妙にスッキリした気分だった。単純過ぎる自分の精神構造に、いっそ清々しささえ感じつつ余韻に浸る。
ああ、それにしても本当になんて偶然だ。
よりにもよって今日この時にこの場所へ迷い込むことが出来たとは。
そして遠い昔に別れた仲間に巡り会えるとは。
昔の
蘇生限界に達したからといって手放さないで良かったと心底思う。いやはや、こんな形で再会出来ようとは、まさに夢にも思わ
――――おい、待て。
全身の汗腺が開いて汗が吹き出る。
一瞬にして筆舌に難い焦燥に囚われた。
今、何か引っかかった。
とんでもないことに気付いてしまった気がする。
先程までの何か悟ったかのような感傷は一瞬で消し飛んだ。
哄笑の余韻などもはや欠片も残っていない。
だが、一体どうしたというのか。
心、思考、身体。そのいずれもが連動しない。
ただ全身を駆け巡る焦燥感が今も己を急き立てている。
何故だ。
他愛もない回想をしていた筈が、何故衝動にも似た何かが背を焦がすのか。
わけが分からないが『早く気づかなくては手遅れになる』という切羽詰まった思いが激情となって渦巻いている。
思い返せ。
何が引っかかったというのだ。
回想の中で浮かんだ単語。
羅列したその一つ一つを、赤熱した脳が高速で検める。
懐かしい場所。始まりの地。所有者。木造の小屋。仲間。記念碑。酒場。ゴブリン。再会。転生。蘇生限界――
「――――――――蘇生?」
<
24時間以内に死んだ魔物を生き返らせる力。
一体につき最大二回まで魔物を蘇生させることの出来る、
その蘇生対象はアルキマイラの国民、或いはアルキマイラを宗主国とする属国の民として死んだ者に限定される。
まさか、と纏まらない思考のまま半自動的に指が動いた。
アルキマイラが歩んできた歴史。その代表的な出来事が列挙された
そこには、レイファ=リム=ラテストウッド女王が――即ち
そして、その下に赤文字で書かれているのは端的な事実だ。
聖魔歴150年7月12日 13時37分42秒
ラテストウッド属国化に成功
「――――――――いつだ」
いつ死んだ。
あの少女は。
ラテストウッドが
それとも。
ラテストウッドが
そしてもし仮に後者だとするならば。
蘇生可能な猶予時間は、後どれほど残されている――?
「……待て待て待て待て待てよオイッ!!」
震える手で
急げ。
口語命令で
蘇生対象の選び方は選択式ではなく指定式だ。
一人ひとりの名前をフルネームで正確に入力する必要がある。
失った軍事力をアッサリと全回復出来ないようにする為の処置だと運営は言っていた。
当時はなるほどと思ったが、今はその制約が心の底から腹立たしい。
時間が無い。
もどかしさの余り憎悪さえ覚えながら、ヘリアンは眼前に浮かんだ半透明のテキストボックスを凝視して少女の名を告げる。
口語命令による文字入力。
テキストボックス内に『リリファ=リム=ラテストウッド』の名が刻まれた。
キャラクター名の入力が済んだことにより、
――蘇生可能対象に該当者無し――
「…………――――」
手遅れ、という単語を幻視した。
強烈な目眩を覚えて、今にも倒れそうに膝が揺れる。
「あの……突然静かになったようですが、何かあったのでしょうか?」
そこへおずおずと掛けられた声があった。
声が発せられた方へ目を向ければ、二階に通じているのであろう階段から顔を覗かせているレイファが居た。
目が合う。
「えっ……へ、ヘリアン様? 何故此処に――」
「レイファ! 今すぐリリファのフルネームを教えろッ!!」
居るはずの無い万魔の王の姿に、レイファは目を瞬かせていたが、ヘリアンは構うことなく詰め寄った。
悪あがきとは分かっている。
それでも、ただ単に名前を間違えただけという可能性を捨てたくなかった。
「リ、リリファのフルネーム……ですか?」
「そうだ! 早く答えてくれ、時間が無いんだ!!
リリファというのはもしや愛称か!?
あの子の名前は『リリファ=リム=ラテストウッド』じゃないのか!?」
頼む。
違うと言ってくれ。
レイファのフルネームから察するに、リリファのフルネームを間違っている可能性は限りなく低い。それは理屈として承知している。だが、僅かな可能性だとしても、ヘリアンは縋らずにはいられなかった。
「い、いえ……あの子の名前はリリファで合ってます。愛称ではありません」
そして、縋り付いた希望は無残に絶たれた。
僅かな光明が消え失せていく。
いよいよ力の入らなくなった膝が崩折れる瞬間、しかし彼女は言葉を続けて、
「ですが、フルネームは『リリファ=リム=ラテストウッド』ではありません。
ミドルネームの“リム”は女王を指す言葉となりますので、あの子の名前には使われないんです」
ヒュ、と息を呑む音をヘリアンは確かに聞いた。
下手すれば心臓すら一瞬止まっていたかもしれない。
「女王や王の地位ではない王族のミドルネームは“ルム”です。
従いまして、あの子のフルネームは『リリファ=ルム=ラテストウッド』となりますが……それが何か?」
不思議そうに首を傾げるレイファを
「
眼前に決定ボタン。
押下の意思表示を叫ぶと同時に、拳を眼前に突き出した。
口語命令で決定ボタンが押された直後、二度目の確認メッセージが浮かんだ瞬間にヘリアンの拳が決定ボタンに叩きつけられる。
――そして、光が生まれた。
+ + +
とあるゲーマー大学生、三崎
彼が【ヘリアン】として[タクティクス・クロニクル]に降り立った始まりの地。
そこには、記念碑代わりに建てられた古ぼけた酒場がある。
街全体が大勝利の喧騒に湧く中、たった一軒だけ静まり返ったその酒場の店内で、突如として眩い光が膨れ上がった。
神々しいまでの煌めき。
やがて純白の光は一点に収束し、人の形へとその姿を変えていく。
中途半端に尖った耳。背丈の割に幼い顔立ち。どこか庇護欲を刺激する垂れ目。ハーフアップの白い髪。白い肌。白いチュニック。白で統一された娘は整った容姿をしており、呼吸に胸が動いてなければ精巧な魔導人形と言われても不思議ではない。
完全に光が消え去った後、そこに残ったのは一人の少女だ。
「――――」
誰も動けない。
その場に居る誰もが皆、声も無く固まっている。
立ち竦む理由は各々異なったが、目の前の光景が信じられず固まり続けるしかない、という一点だけは誰しも共通していた。
そして同時に、何かを口にすれば目の前の現実が夢か幻のように消えて無くなってしまうのではないかと、恐怖にも似た感覚に囚われていたのだ。
「…………あ、あれぇ?」
痛いほどの静寂を破ったのは、不思議そうに自分の体を見下ろす一人の少女だ。
「私、なんで……食べられたんじゃなかったっけ?
あれ、夢? というか、ここ、どこ? ラテストウッドじゃないよね?」
きょろきょろと周りを見渡す。
寝起きの小動物のような仕草で瞳を彷徨わせていた少女は、やがてある一点で視線を固定した。
「あ、姉様だ。おはよう。ここどこ?」
夢うつつながら、親愛なる姉の姿を認めた少女は、何気なく所在を問うた。
その声を皮切りに、止まっていたレイファの時間が再び時を刻みだす。
「リリファ――……ッ!」
駆け寄った。
数歩の距離ももどかしいと言わんばかりに、全力で飛びつく。
体重の軽い少女は飛びつかれた勢いのまま床に倒れそうになったが、愛する妹に抱きつく姉がそれを許さない。
「暖かい……生きてる……。
……リリファが……リリファが生ぎでるぅ……良がっだあぁぁ……ッ!」
そこから先は言葉にならなかった。
妹の身体を掻き抱いたまま、レイファは端正な顔をくしゃくしゃにして泣き崩れた。そして妹の体温を最も感じ取れるであろう姿勢を探すかのように、何度も腕の位置を変え、二度と離すまいと抱き締める。
そこにラテストウッドの女王の姿は無い。
今此処にいるのは、最愛の妹の生に号泣する一人の姉の姿だった。
「ちょ、ちょっと。姉様、痛いよ。痛いってば」
構われるのを嫌がる猫のように、少女は両手を突っ張って姉を引き剥がそうとするも叶わない。状況も何も解っていない少女は混乱したまま、どこかに救いの手はないかと再び視線を彷徨わせ、ある一点で見知った顔を見つけた。
「あ、ヘリアンさん」
平凡な顔つきの青年。
一度会っただけの、よく分からない変な旅人。
だけど優しくて、どこか頼りがいのありそうな人間の男の人。
「……ヘリアンさん、泣いてるの?」
見たこともない表情を浮かべている青年に、少女は心底不思議そうに尋ねた。
「……いいや。泣いているわけがないだろう。男は涙を流さないのだから」
いつの日か、少女の父親が言ってた台詞によく似ていた。
その時は『男は馬鹿だなあ』と聞き流していたのを少女は思い出す。
けれど、彼も同じ事を言うのだから、きっとそれは本当の事だったのだろう。
女には分からない男の世界というやつなのかもしれない。
だから少女は「そっかー」とだけ呟いて、綺麗な雫が彼の頬を伝って落ちたのを見ていないことにした。
そうこうしている間にも、聞き分けのない姉はぎゅうぎゅうと少女の細い身体を締め付けている。
痛いと言っているのに、聞き取ることの出来ない言葉を零しながら一向に離そうとしてくれない姉はすごく意地悪だと思う。だから、手加減無く抱きしめてくる姉の魔の手から逃れる為、少女は彼を頼ることにした。
けれどその前に、どうしても訊いておかなければいけない疑念が一つあった。
心が導くままに、少女は青年に問いかける。
「ねえヘリアンさん。これ、夢かなあ?」
問われた青年は、一瞬だけ、酷く形容し難い表情に顔を歪めた。
しかし意を決したかのように、青年は頬を濡らしながらも不器用な微笑みを浮かべ、幼い少女に答えを告げる。
「いいや。どうしようもなく泣きたくなるが――――現実だよ」
聖魔歴150年7月13日。
異世界における初戦争の終結宣言が発令。
戦果報告。
当作戦の主目的、ラテストウッド国民の救出を完了。
ラテストウッド首都奪還に成功。
敵勢力部隊全滅による完全勝利を達成。
アルキマイラ勢力群における死者数――ゼロ名。
- 第一章 了 -
・これにて『異世界国家アルキマイラ』の第一章は終わりを迎えました。
全三十話、楽しんで頂けたでしょうか。
・『面白かった』
『続きが気になる』
『主人公、頑張ったな』
上記の内、どれか一つだけでも一致した方のみで構いません。
気が向きましたら、ご感想頂ければ嬉しく思います。